現在、水平対向エンジンを搭載する量販車を販売しているのはポルシェとスバルのみになってしまった。なぜ、ほかのメーカーは採用しないのか? 世良耕太が解説する。
水平対向エンジンとは?
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今、水平対向エンジンを量産している自動車メーカーは、ポルシェとスバルだ。ポルシェは「911シリーズ」に6気筒を搭載し、「718シリーズ」に4気筒を載せている。スバルは4気筒のみで(6気筒はやめてしまった)、FA、FB、CBの3つのシリーズをそろえている。最新版は「レヴォーグ」が搭載する1.8L直噴ターボのCB18だ。
水平対向エンジンはその名称が示すとおり、シリンダーが直立しておらず、90度倒れて水平に配置されているのが特徴だ。そして、ピストンは対向して動く。直列6気筒エンジンの1番、3番、5番気筒を外側に傾け、2番、4番、6番を反対側に傾けるとV型エンジンになる。そのまま広げて180度にすると、水平にはなる。が、この場合は水平対向エンジンではなく、分類上、180度V型だ。
V型エンジンは左右バンクのコンロッドがクランクピンを共有するが、水平対向エンジンは気筒ごとに独立したクランクピンを持つ。左右の気筒で手を携えてハンドル(クランクピン)をまわすのがV型、左右の気筒が独立したハンドルでクランクシャフトをまわすのが水平対向エンジンだ。180度Vは、丸太の両側に立った職人がノコギリの端を互いに持って押し引きしながら木を切るようにピストンが動く。一方、水平対向エンジンは向かい合ったピストンが互いに反対方向に動く。その様子が、ボクサーがパンチをぶつけ合う様子に見えることから、ボクサーエンジンとも呼ばれる。
1973年に発表されたフェラーリ「365GT/4 BB」は、片側6個の気筒が水平に並んだ12気筒エンジンを搭載していた。クランクピンを共有するノコギリ押し引き型で、180度V型12気筒だった。既存の60度V型12気筒の基本設計を利用し、エンジンの背を低くしてその下にトランスアクスル(トランスミッションとデフを一体化した機構)を収めるためだった。
水平対向エンジンのメリット
水平対向はエンジンの背を低くできるのが最大の特徴だ。ペットボトルを横に倒してみれば、効果のほどが実感できるだろう。全長も短くできる。4気筒なら2気筒+α、6気筒なら3気筒+αの長さで済む。
直列やV型に対する水平対向エンジンの最大のメリットは、振動だ。左右のピストンがクランクシャフトを中心に対称の動きをするため、慣性力が打ち消され、回転バランスに優れる。スバルは4WDのレイアウトと合わせて「シンメトリカル(左右対称)」の表現を使い水平対向エンジンのメリットを表現しているが、左右輪の軸重を均等化するのに貢献する。
ちなみにトヨタが新型「ヤリス」で3気筒エンジン(横置きレイアウト)を選択したのは、4気筒に比べて短いエンジンを中央に寄せて搭載することで、左右輪の軸重を均等化できるのを選んだからだ。水平対向エンジンは、はじめからその特性を備えている。
直列やV型に比べエンジンの背が低くなるので、“低重心”といいたいが、実際は微妙かもしれない。水平対向の場合、エンジン下に排気管をレイアウトせざるを得ず、直列やV型に比べ、重心に大きな影響を与えるクランクセンターが高くなってしまうからだ。排気管の設計次第では、多少低く出来るかもしれないが、そうなると、排気系のレイアウトが理想から遠ざかってしまい、性能面で妥協せざるを得なくなる。悩ましいところだ。
希少性に価値を認めるかどうか
エンジンの効率を高めていこうとすると、損失低減の観点からボアを小さくし、ストロークは長くしたい。かつてスバルの主力だったEJ20型、2.0リッター水平対向4気筒のボア×ストロークは92.0×75.0mmだった。現行の「BRZ」が搭載するFA20型のボア×ストロークは86.0×86.0mmで、「インプレッサ」や「フォレスター」が搭載するFB20型は84.0×90.0mmだ。ストロークは長くなっている。EJ20型エンジンを搭載した初代スバル「レガシィ」。
車体のフロントセクションには「サイドメンバー」と呼ぶ骨格部材が通っている。エンジンの横幅はこの部材に制約され、ストロークを伸ばすのが難しい。スバルの場合、シリンダーヘッドの構造やコンロッドの形状など、細部を含めて見直すことでエンジン全長を維持しつつロングストローク化を図っている。ことロングストローク化に関しては、スバルのようなフロント搭載より、ポルシェのようなミッドあるいはリアに搭載するレイアウトが寛容である。ただし“程度の問題”であり、厳しいのには代わりはい。ちなみに、ポルシェ718シリーズが搭載する2.0リッター水平対向エンジンのボア×ストロークは91.0×76.4mmのショートストロークだ。
かつてスバルの水平対向エンジンは、「ボクサーサウンド」と呼ばれる“ボロボロボロ”といった脈動感ある独特のサウンドを奏でていた。これはパッケージ上の都合から、エキゾーストマニフォールド(排気管)を不等長にせざるを得ず、それによって排気干渉が起きて結果的に特徴あるサウンドが生まれていたからだ。
しかし、エンジンの性能面ではよろしくない。そこで、2002年にマイナーチェンジした「インプレッサ」のSTi系で等長エキゾーストマニフォールドを採用。2003年に4代目に移行したレガシィも等長にして排気干渉をなくし、ボクサーサウンドに別れを告げた。サウンドよりも性能を優先したわけだ。
一方、2016年に登場したポルシェの新世代水平対向4気筒は「典型的なボクサーサウンドを提供するため」に、あえて不等長エキゾーストマニフォールドを採用した。水平対向エンジンは構成する部品や製造時のコストは直列やV型に比べて高くなってしまう。車両搭載性も厳しく、合理性の尺度をあてはめて評価すると、水平対向エンジンでなければならない理由は見つけづらくなる傾向だ。
「水平対向エンジンである」という希少性に価値を認めるかどうかが、存続を左右することになるだろう。
文・世良耕太
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みんなのコメント
今の時代あかんレベルだよ