3月に入り、2024年のモータースポーツシーズンも本格的に開幕を迎えている中、スーパーGTは岡山国際サーキットと富士スピードウェイでの2度の公式テストを控えている。しかし参戦チームの中で唯一、そのどちらにもエントリーしていないチームがある。それが今季からZで参戦予定のGAINERだ。
近年は日産GT-R NISMO GT3で参戦してきたGAINERだが、過去には自社製作のフェラーリF430で参戦するなど、モノづくりのチームでもある。そんな彼らは2024年から、GTA-GT300規定のZを新たに自製して参戦することとなった。現在はチームのシニア・テクニカルディレクターである福田洋介エンジニアを中心に製作を行なっているが、公式テストにはエントリーせず……車両の完成が遅れているようだ。
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先日は鈴鹿サーキットでスーパーフォーミュラ開幕戦が行なわれたが、同カテゴリーではTEAM MUGENに所属する、GAINERの藤井一三監督に話を聞いた。
「ゲイナーは過去にもフェラーリを作ったりと、チーム自体がモノづくりのチームですが、既存のものではなく、ゼロから作った方が良いんじゃないかと。日産から特別何かを言われたとか、そういう類ではありません」
車両製作の経緯について、そう語った藤井監督。しかし前述の通り、テストを欠席するなどZの製作は遅れている。取材当時は岡山テストの翌週にある富士テストのエントリーリストは発表されていなかったが、「開幕に間に合ったらいいな、というレベルじゃないかと思います」と厳しい実情を語っていた。
藤井監督によると、実は自社製Zの構想自体は3年前からあったという。にもかかわらず製作が遅れているのには、あらゆる計画が当初の目論見通りにいかなかったということがあるようだ。
「パイプフレームの設計も(早い段階で)全部終わっていました」と語る藤井監督。自由設計の利点を活かし、現在所有しているGT-Rの部品も流用しながらZの名の付いたマシンを作り、車両価格が高騰しているスーパーGTに低コストで新たな車両を登場させる……というのがGAINERの目論見だった。
しかしながら規則によりそのフレームは使えなくなってしまい、諸々の設計はやり直しに。GT-Rの部品も移植が難しくなってしまい、「サスペンションのアーム1本から全部自分たちで」作ることになったという。
さらに搭載するエンジンにも悩まされた。結局GT-Rで使用しているV6ツインターボのVR38DETTエンジンを搭載することでGTアソシエイションの許可を得たが、そのままの状態ではZの車体には合致しなかった。
「GT-Rのエンジンを使っても良いという許可をGTAからもらったんだけども、スペース的に乗らない、入らない。だからエンジンの補機類を変えないといけませんでした。それを作ったりとか、やっては設計変更、やっては設計変更の繰り返しで……だから遅れています」
そう語る藤井監督。時間だけでなく、かかるコストも想定外になってしまっているという。
「GT3車両もGT300車両も、車両価格はすごく高いんです。高いのが当たり前だと言われたらアレですが、チームの負担はとんでもないし、『それでいいの?』という考えもあり、自分たちが持っているGT-Rの部品を使って安く車を作ろうというのが始まりでした。ただコストも、当初の目論見よりは全然(かかっている)……」
また、GT-Rのエンジンを搭載するといえど、レイアウトを変更したこともあってGT-Rと同じパワーが出ないというデータもベンチテストから出ており、その辺りもネックだという。「まずは走ってみないとですが、まだ出来てないですから」と藤井監督は苦笑する。1ヵ月後の開幕戦岡山で、GT300のZは日の目を見るのか?
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