2018年は、日本市場で新型車を1車種も発売しなかった日産。近年、新型車やモデルチェンジの減少で古くなった主力車種も増えてきた。なかでも「もったいない」のがコンパクトカーのマーチだ。かつては日本だけで月1万台以上売れた人気車だったものの、現行モデルになってから人気は急落してしまった。
しかし、実は“欧州のマーチ”は別の進化を遂げている。もともと欧州ではマーチを「マイクラ」という車名で販売していたが、2017年に新型マイクラが登場。これを機に日本のマーチとは“別物”となった。
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しかも、このマイクラがなかなか格好良く、「これこそ日本のマーチにすべき」といえる本格派コンパクトカーに仕上がっているのだ。
文:渡辺陽一郎
写真:NISSAN
“日本のマーチ”が9年経っても新型にならない理由は?
日産車の品ぞろえを見ると、発売から長期間を経過した車種が多い。GT-Rの発売は2007年、フェアレディZとキューブは2008年、フーガは2009年、ジューク/マーチ/エルグランドは2010年という具合だ。日本で売られる大半の日産車が2010年までに発売され、それ以降は大幅に減った。
このきっかけが、2008年に発生したリーマンショックだ。車の売れ行きが日本を含めて世界的に下がり、新型車の開発も凍結された。ジュークや現行マーチは、この時点で開発が進んでいたから発売されたが、それ以降は激減している。
日産の方針が海外指向を強めたことも影響を与えた。2000年(暦年)の時点では、日産の世界生産台数に占める国内の販売比率は28%だった。これが2005年には25%、2010年には16%、2015年には11%と減っていく。日本を軽視するために国内で発売される新型車が減り、その結果、売れ行きがさらに下がる悪循環に陥った。
2018年の日本国内における登録車の販売No.1は日産 ノートであった。日産もこの成果を活発に宣伝しているが、メーカー別販売ランキングでは、日産の順位はトヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに続く4位だ。ノートが車種別で1位になるのとは対称的だ。
こうなった背景には、日産の新型車不足もある。キューブやマーチは設計が古く、緊急自動ブレーキも装着されない。かつて人気の高かったコンパクトカーのティーダとセダン版のラティオ、コンパクトワゴンのウイングロード、SUVのデュアリスなどは生産を終えて久しい。
その結果、これらの車種を所有する膨大なユーザーは、乗り替える車がなくなった。困っている時にノート e-POWERが発売されたから、一気に乗り替えが進んだわけだ。「普通のノートでは物足りないが、e-POWERなら許せる」という選択もあっただろう。
日産はノートとセレナのe-POWERが成功したと考えており、確かに間違いではないが、手放しで喜べる状況ではない。2018年におけるノート/セレナ/デイズ&デイズルークスの販売台数を合計すると、日産車全体の61%を占める。日産車の売れ行きが下がり、なおかつ少数の車種で国内販売を支える危うい状態になっている。
そこを改善するには、新型車が必要だ。日産のセールスマンに尋ねると「海外向けの3ナンバー車でも良いから、とにかく新型車を供給して欲しい」という。
新型車を発売すると、それを目当てに来店した顧客が、従来から用意されていた別の車種を買うこともある。新型車を見た顧客が「後席が狭い」「価格が高い」と不満を漏らした時、「それならば、こちらの車種はいかがですか」と提案するのは当然だ。
つまり、新型車を発売すると、さまざまな相乗効果が生まれる。何もしないのが一番ダメなのだ。
“欧州のマーチ”ことマイクラは本格派コンパクトカー!
仮に日本向けの新型車を開発できないなら、海外で売られる日産車を国内に導入すれば良い。
例えばマイクラだ。かつてはマーチの欧州仕様だったが、現行型は別の車種に発展。タイで生産される現行マーチは、丸みのある外観で冴えないが、欧州で売られるマイクラは鋭角的で格好良い。
マイクラのボディサイズは全長が3995mm、全幅は1743mm、全高は1455mm。全幅は少しワイドで3ナンバー車になるが、全長は4100mmのノートよりも短く、ホンダ フィットと同程度だ。
エンジンは直列3気筒1Lターボを用意しており、シリンダーの壁面にGT-Rと同様のコーティングを施す。ピストンの動きが滑らかになって抵抗が減り、動力性能と燃費を向上させられる。
このようにマイクラは意欲的な小型車だから、日本に導入しても堅調に売れそうだ。マイクラはスポーティ指向、ノートは実用指向で、商品の性格もあまり重複しない。欧州のマイクラには「N-SPORT」という仕様もあり、クルマ好きに受けそうだ。
今はなきパルサーなど海外には魅力的な日産車ズラリ
また、ひとまわり大きな車種としてパルサーもある。パルサーは1978年から2000年頃まで日本でも売られていたので、覚えている方も多いだろう。
現行型パルサーはドイツやフランスで販売され、ゴルフのライバル車のようになっている。マイクラがスポーティとすれば、パルサーは以前のティーダのような上級指向に位置付けられ、日本でも成立する商品だ。
販売店からは「スカイラインには今でもファンが多い。スカイラインクーペを発売すれば、必ず買うと待っているお客様もおられる。それなのに発売されない……」という意見もある。スカイラインクーペはインフィニティQ60として北米などで売られているから、日産がその気になれば導入は可能だ。
このほかインフィニティには、コンパクトSUVのQX30もあり、これも国内市場と相性が良さそうだ。レクサスUXのライバル車になり得る。
国産メーカーに問われる「日本をどのように考えるか」
以上のように、海外市場には魅力的な日産車が数多く投入されている。それなのに日本には新型車が入らない。その結果、古い車ばかり並んでいる。
こうなった理由は、国内市場の規模が小さく、なおかつ将来性が乏しいと見られているからだ。日産の言い分は「海外市場と同じように日本の市場を捉えれば、今の投資対効果が妥当だ。日産が日本の会社だからといって、国内を贔屓(ひいき)することはない」というものだ。
“日本の”ではなく、世界の日産が考える市場戦略としては理解できるが、国内を軽く扱っていると商品の無国籍化が進む。どこの国の車だか分からなくなる。
ある商品企画担当者は「今はインターネットが普及したから、日本でどのような車種を販売しているかが分かる。この時に日本で売られていない日本車は、クルマ好きのユーザーから敬遠される傾向が見られる」と言う。この気持ちは「ドイツで売られていないメルセデスベンツやBMWを買うか?」と考えれば何となく分かる。
1970年代に入って対米輸出が活発化したが、それでも主力市場は国内だった。1990年頃になって国内と海外の販売比率が半々になり、2000年頃から海外偏重を強めていったのだ。日本メーカーが海外で好調に稼げるようになったのは、この20~25年程度に過ぎない。
それを顧みずに、国内市場を規模が小さく将来性もないと判断して冷遇するのは、法人のあり方としてどうなのか。このままでは、自動車産業は国内で魅力を失っていく。国内でも自動車は基幹産業だから、経済的にもマイナスだ。
そして自動車産業が魅力を失うと、自動車メーカーの人材にも影響を与える。海外で売られる車種も、開発するのは日本のエンジニアだから、国内市場は活性化させなばならない。
自動車産業は100年に一度の変革期といわれるが、それは技術だけではない。「日本をどのように考えるか」という根本的な課題にまで及んでいる。
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