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「布シート」が高級で「本革シート」は格下!? いまと昔で変化したクルマの価値観とは

掲載 更新 16
「布シート」が高級で「本革シート」は格下!? いまと昔で変化したクルマの価値観とは

■前席が本革、後席が布シートというクルマも存在していた

 本革シートといえば、クルマの高級な装備の代名詞的な存在だ。布シートに対する一段上の装備品としてオプションとして用意されることが多く、標準装備とする車種は、おおむね高級車と呼ばれるようなステイタス性の高いクルマばかりとなっている。

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 しかし、自動車の歴史を振り返ると、常に本革シートが布シートの上にあったわけではない。実のところ自動車が普及し始めた黎明期は、本革シートよりも布シートの方が高級という時代も存在していたのだ。

 クルマが発明され、世に普及していったのは1900年代初頭のこと。

 当時のクルマのシートは、そのほとんどが本革張りであった。これは、馬車をルーツに、その御者のシートを流用した結果といえるだろう。

 なぜ馬車のシートが本革だったのかといえば、理由は簡単、丈夫だったからだ。

 乗員の乗り降りで、さんざんに擦られる。直射日光にもさらされるし、雨で濡れてしまうこともある。そんな過酷な馬車の御者のシートを布で作ってしまえば、すぐに傷んでしまう。そのため馬車の御者のシートは基本的に本革シートとなっていた。

 そして黎明期のクルマは、そんな馬車の延長という存在。自動車が登場したばかりのころは、そのほとんどがルーフのないオープントップモデルで、屋根があっても簡易的な幌だったため、シートも当然のように本革が採用されていたのだ。

 しかし、1910年代から20年代の車両には、ベロアなどの生地が使われはじめた。それはおもに高級車であった。このころからルーフを持つ箱型ボディのモデルが登場してきていて、そうしたクルマはシートが雨に濡れることを気にする必要がなくなったためだ。

 また、前席は本革シートでありながらも、後席に布シートを備えるクルマもあった。これは、後席に座る偉い人用の席は布シートということを意味する。つまり本革シートよりも、布シートの方が高級と考えられていたのだ。

 不思議なようだが、ちょっと冷静になって考えれば当然のことといえるだろう。本革シートは丈夫だが、表面が硬いし、夏はベタベタし、冬は冷たくなる。ただ座るだけであれば、ソフトで手ざわりもなめらかな布シートのほうが快適であることは間違いない。

 つまり、耐久性よりも快適性を優先するのであれば、布シートのほうが良いという時代であったのだ。

■いつごろから「布シートより本革のほうが高級」になったのか

 実際に、その伝統はいまも一部で引き継がれている。たとえばトヨタの「センチュリー」だ。

 最新センチュリーのシートは、ウールファブリック仕様となっている。

 センチュリー・クラスの場合は、費用をケチって布シートにするわけがない。狙って布シートを採用しているのだ。

 ちなみに、1960年代の天皇陛下の御料車「プリンスロイヤル」も、後席はウール織物の布シートだった。前席は本革シートなのに、後席はわざわざ布シートにしていたのだ。これは本革シートよりも布シートのほうが、格が上にあるということを証明する一例といえるだろう。

 では、いつ頃から、本革シート=高級品となったのだろうか。それはクルマのシートの歴史を振り返れば、おのずと答えが見えてくるだろう。

 クルマが発明され普及へと至る1900年代前半は、ほとんどのクルマがシートに本革シートを採用していた。そして、一部の高級車では、耐久性よりもソフトな布シートが採用されていた。

 この時代は、当然、本革シートよりも布シートのほうが格上となっていた。

 そして第二次世界大戦後の1950年代以降、日本でも自動車生産が始まる。ここで日本車はどうしたかといえば、人工皮革の塩化ビニールを使ったのだ。これが、当時の日本としてはもっとも安価で現実的な選択だったのだろう。

 一方で布シートもあり、こちらはウールを利用。当然、塩化ビニールよりも布シートのほうがコストは高い。しかし、塩化ビニール&ウールの時代は短かった。

 その後、化学繊維の時代が到来する。化学繊維とは、ナイロンやポリエステルなどを使った繊維のことで、第二次世界大戦後に普及した技術だ。これが1960年代ごろに自動車シートの繊維として利用されることになる。

 この技術が、自動車のシートを決定的に変えることになった。

 化学繊維の登場により、布シートの耐久性は飛躍的に向上。それまでのウールに比べて化学繊維だとコストもかからない。こうして布シートの可能性を各段に高めたのだ。

 その結果、1970年代から80年代にかけて、布シートは大いに普及。さらに、ベロア、ジャージー、ツイードなど、さまざまなバリエーションを生み出してゆく。一方で本革シートは、耐久性という実用面ではなく、ステイタス性という側面が強調されることになったのだ。

 ちなみに、日本で乗用車が庶民の手に渡るようになったのは、化学繊維のシートが登場した後。つまり、ほとんどの日本人は、本革シートが耐久性で布シートを勝るところを見る機会がなかったといえる。

 そして、輸入される欧米の高級車の多くには、トラディショナルな本革シートが装備されていた。これを見ていれば、誰もが本革シートは布シートよりも高級品であるという認識が定着して当然だろう。

 そんな歴史的な流れが、現在の我々に、本革シート=高級品という見方を定着させたのだ。

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みんなのコメント

16件
  • レザーシートもピンキリ。質のいいレザーはやっぱりいいと思う。シートベンチレーションのお陰で夏でも快適になったしね。
  • 鼻炎持ちの為布製シートよりホコリが立ちにくいとされる革シートを選んでいる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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