かつてはもっと激しかった!? 新型フィットVSヤリスで熾烈な競争が“再び”激化!! これまで多くの車種で繰り広げられたホンダ対トヨタの戦いが自動車界にもたらした意義とは?
1990年代~2000年代前半のトヨタは、国内で自社商品よりも好調に売れるライバル車を許さなかった。自社商品の商品力を増強させ、ライバル車を必ず打ち負かした。
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他メーカーから好調に売れる新型車が登場すると、それを上まわる新型車を大急ぎで開発して追撃することもあった。
先ごろ新型のヤリスとフィットがほぼ同時期に発売され、ホンダVSトヨタの争いが再び激しくなるかもしれない。その足跡を振り返りたい。
文:渡辺陽一郎
写真:HONDA、TOYOTA
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初代フィット VS 初代ヴィッツ軍団
初代フィット(2001年発売)/その圧倒的なパッケージングとコストパフォーマンスで大ヒット。トヨタも対抗したが、それでも圧倒的な人気を誇った
まず挙げられるのは、2001年に発売された初代フィットとトヨタヴィッツ軍団だ。
初代フィットは、新型と同じく燃料タンクを前席の下に搭載して、車内がライバル車に比べて大幅に広かった。1.3Lエンジンは実用回転域の駆動力が高く、価格は売れ筋グレードの「A」が114万5000円と割安だ。
絶好調に売れて2002年には軽自動車も含めた国内販売の総合1位になった。発売時点から、ヒット商品になることは明確だった。
そこでトヨタは急遽初代ヴィッツに改良を加え、1.3Lで買い得な「U・Dパッケージ」をフィット「A」と同じ114万5000円に設定した。デュエットも改良して買い得感を強め、「1.3V」を114万3000円に設定した。2002年には少し上級のイストを発売して、売れ筋となる1.3Fは125万円だ。
初代ヴィッツ(1999年発売)/今のヤリスに続くモデル。写真はフィットの登場で送りこまれた「U・Dパッケージ」
つまりフィットに対してヴィッツが真っ向勝負を挑み、この2車では物足りないユーザーには上級のイスト、少し安い価格帯には商品力が少し弱いもののデュエットを設定した。フィットを取り囲んで打ち負かすヴィッツ軍団を組織している。
それでもフィットは好調に売れ、2002年は1か月平均の登録台数が2万台を超えて、当時最強だったカローラシリーズも上まわり国内1位になった。
2003年にはカローラシリーズに抜き返されたが、1か月平均1万5000台以上を売り、ヴィッツの約6000台に差を付けている。
ヴィッツ軍団が束になってもフィットに勝てず、2代目デミオ、カスタマーフリーチョイスを採用したコルトも含め、当時のコンパクトカーの価格体系はすべてフィット「A」の114万5000円を意識した。
初代フィットは国産コンパクトカーの商品力と買い得感を大幅に強める役割を果たした。
【勝者:初代フィット】
2代目インサイト VS 3代目プリウス
3代目プリウス(2009年発売)/2代目インサイト発売の約3か月後となる5月に発売。圧倒的な商品力でインサイトを打ち負かし、歴代最大のヒットモデルに
初代プリウスは1997年に発売されて注目を集め、初代インサイトは2年後の1999年に発売されている。ただし、この時は販売面では勝負にならなかった。
初代インサイトは燃費スペシャル的な2人乗りの3ドアクーペで、10・15モード燃費が35km/Lに達することに特化して開発されたからだ。
インサイトが販売面で注目されたのは、2009年2月に発売された2代目だ。2代目プリウスに似た5ドアボディで、1.3Lエンジンをベースにしたハイブリッド「IMA」を搭載する。
JC08モード燃費は24~26km/L、10・15モード燃費は28~30km/Lで、「G」の価格は189万円と安かった。
2代目インサイト(2009年発売)/初代とは打って変わって当初はヒットを飛ばしたが、プリウスのモデルチェンジで天下は長続きせず
この時期に3代目プリウスは開発の最終段階を迎えており、格安で発売されたインサイトに刺激されて価格を見直した。最廉価の「L」は205万円、売れ筋の「S」は220万円としている。
それでもインサイトよりは高価だが、プリウスのボディは3ナンバーサイズだから、5ナンバー車の2代目インサイトよりも大柄で後席と荷室も広い。
1.8Lのハイブリッドはインサイトよりもパワフルで、なおかつJC08モード燃費は30.4~32.6km/L、10・15モード燃費は35.5~38km/Lだ。インサイトに比べて、動力性能と燃費の両方で上まわった。
そして3代目プリウスの買い得度は、2代目と比べて大幅に強く、多くのユーザーが3代目への乗り替えを考えた。
3代目プリウス発売直後のカタログには、マイルドハイブリッドと称してインサイトの「IMA」も掲載されていた。そこにはモーターのみの走行はほとんどできない、パワー不足、燃費が悪いなど、欠点が並べられている。この3代目プリウスのカタログは『トヨタ自動車75年史』のホームページでも閲覧できる。
しかも、3代目プリウスは2009年5月18日の発売に先立ち、4月1日から受注を開始した。そのため発売後1か月の受注台数が18万台に達した。その結果、最長で10か月の納車待ちに陥っている。
この受注時期の前倒しも3代目プリウスから始まり、今の新型車は各メーカーともに、展示車すら見られない状態で予約受注を開始している。
2010年にプリウスは月平均で2万6000台を登録して、インサイトの3200台に比べると8倍以上の売れ行きとなった。
【勝者:3代目プリウス】
初代ストリーム VS 初代ウィッシュ
初代ストリーム(2000年発売)/5ナンバーのワゴン型ミニバンとして優れたバランスでヒット車に。その人気がトヨタのやる気に火をつけた!
ストリームの初代モデルは、2000年に5ナンバーサイズのワゴン風ミニバンとして発売。3列目は窮屈だが、短距離なら7名で乗車できる。4名乗車は快適で運転感覚も軽快だ。2001年には月平均で約1万台を登録し、約1万2000台のヴィッツに迫る売れ行きとなった。
そこでトヨタは、ストリームに向けた刺客としてウィッシュを大急ぎで開発し、2003年に発売。全長/全幅/全高はストリームと同じ数値だから、必然的に外観は似る。そのうえでウィッシュは、インパネと1/2列目シートの座り心地などを上質に仕上げた。
初代ウィッシュ(2003年発売)/ストリームキラーとして同車を強烈に意識して開発。そのやり方には賛否両論集まったが、結果的にライバルを凌ぐヒットを飛ばした
価格はストリームに1.7Lエンジンを積んだLが169万8000円、ウィッシュは1.8LのXが168万8000円だ。ウィッシュはストリームを完璧にマークして、発売された2003年に月平均で1万3000台を登録。
ストリームは2001年登場のフィットに自社内の販売力を奪われたこともあり、月平均で3000台に下がり、ウィッシュは登録台数でストリームを追撃できた。
【勝者:初代ウィッシュ】
2代目オデッセイ VS 2代目イプサム
2代目オデッセイ(1999年発売)/ヒットした初代を正常進化。トヨタもイプサムを送り込んだが、歯が立たず当時のオデッセイ人気は盤石だった
好調に売れるホンダ車に向けて、トヨタが対抗車種を開発すると、ほとんどの場合は成功する。
ところが2代目オデッセイを意識して、2001年に行われた2代目イプサムのフルモデルチェンジは失敗した。
初代イプサムは1996年に5ナンバーサイズのミニバンとして発売され、柔和な外観と相まって、ファミリーユーザーに高い人気を得た。これを2代目では、オデッセイに似たスポーティで上質な3ナンバー車に発展させたから、ユーザーの支持を下げている。
2代目イプサム(2001年発売)/初代からサイズアップして3ナンバーに。オデッセイ対抗としてトヨタ渾身の開発をおこなったが、イプサムはこのモデルを最後に絶版に
初代イプサムのユーザーは、サイズアップを敬遠して乗り替えない。3ナンバーサイズの立派なミニバンが欲しいユーザーにしてみれば、イプサムは柔和なファミリーカーのイメージだ。そのためにオデッセイを選ぶ。
初代イプサムは、発売1年後の1997年に月平均で8000台を登録したが、2代目イプサムは発売翌年の2002年で4000台であった。
この時点で2代目オデッセイは発売から2年以上を経過していたが、登録台数は2代目イプサムよりも少し多い。2代目イプサムは、オデッセイを意識したために失敗して、これをベースにした2代目ガイアの開発も凍結された。
【勝者:2代目オデッセイ】
◆ ◆ ◆
当時はトヨタのホンダに対する激しいライバル意識が醜悪に思えたが、今になって振り返ると貴重な競争だった。
日本メーカーの商品開発に刺激を与え、特にホンダの低床プラットフォームは、トヨタの激しい追い上げの中で生み出された。
ところが2008年のリーマンショック以降、トヨタはクルマ作りが大幅に変わった。質感がフィットを大幅に下まわる先代ヴィッツなど、平気で開発するようになった。
競争関係の下火に伴って他メーカーも緊張が緩み、海外中心になり、国内で売られる車種の数が減って商品力も下がった。
今後は新型ヤリスの販売と成長の中で、再びあの時代のトヨタの凄さ、怖さを見せつけて欲しい!
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みんなのコメント
確固たる購買層 αの市場を明確化させたエルグランドを
思いっきり踏み台にして我が物顔なアルファード。
ろくすっぽ反撃できていない日産側にも問題があるけどな。
ヤリスはどうだろう。
自分ならフィットやスイフト買うかな。もしくはコンパクトカーにこだわりなければライズ。