この記事をまとめると
■ポルシェが911によって自動車高高度最高記録の世界記録を更新した
水の上でもポルシェはポルシェ! マカンEVのシステムを搭載したボートはそこらの金満ボートとはひと味違う
■911はこの挑戦のためにオフロード用のカスタムが施されたスペシャルモデル
■ポルシェが記録更新をする前に世界記録を保持していたのは同じくスペシャルなスズキ・ジムニーだった
自走でもっとも標高の高いところに行けるクルマはポルシェ911
自動車高高度最高記録、平たくいえばどんだけ高い場所までクルマで登ったか、という記録を2023年12月にポルシェが塗り替えました。新記録が生まれたのは、同記録への挑戦で舞台に選ばれがちな南米チリのオホス・デル・サラード火山、標高6734m地点のこと。
ポルシェは2022年にも同様の挑戦をして6000mをクリアしていたのですが、驚くなかれポルシェ以前に世界記録を樹立していたのはスズキのジムニーです! しかも2007年に6688mという記録を樹立したのは1986年モデル(SJ413型)だったと聞けば、ジムニーの偉大さに驚くほかありません。
まずは、ポルシェの偉業からご紹介すると、挑戦したのはカレラ4Sをベースにした山登り専用とでもいえそうなカスタムマシン、「ドリス(Doris)」と「エディス(Edith)」というニックネームが与えられた2台です。450馬力を発揮する3リッター水平対向6気筒ツインターボというパワーユニットに、7速MT、いうまでもなくフルタイム4WDというスペック。
ボディはご覧のとおり大幅にモディファイされたカーボンボディが載せられ、最低地上高を上げた車高、オーバーサイズのタイヤにフィットするフェンダーがオフロード感マシマシ。
この車高は、いわゆるポータルアクスルを用いたもので、およそ350mmのアップとなっています。これは、二軸あるハブを用いてデフやドライブシャフトを高い位置に置きながら、タイヤだけ下げたポジションが作れるシステムで、ロックレース車両など、格段の悪路走破を目指すクルマのデフォルト装備といわれます。
また、このプロジェクトに参加した機械工業メーカー「シェフラーグループ」が開発したステア・バイ・ワイヤ・システム「スペースドライブ」もチリの山では大活躍した模様。詳しい性能は詳らかにされていませんが、悪路というか岩場や氷の上でも過大なキックバックを制限し、より正確なハンドリングをもたらすハイテクかと。
ポルシェ911がクロカンでも世界を席巻
さらに、2台のポルシェは合成燃料「eFuel」を使ったことも大きなトピックとされています。こちらは「再生可能エネルギーを使用して水と二酸化炭素から作られており、eFuelの製造プロセス中に回収されたCO2は、自動車の使用中に排出されるCO2とほぼ同じであるため、内燃機関の正味のCO2ニュートラルな使用が可能」だと、環境面に敏い同社らしい取り組みにほかなりません。
さて、記録を樹立したエディスをドライブしたレーサーのロマン・デュマは「この経験は決して忘れません。これまでクルマが行ったことのない場所を運転するのは、並外れた感覚でした」と、火山を降りたあとで語っています。彼はポルシェを駆ってル・マンを3度も戦っている強者ですが、やっぱりマイナス20度にもなる荒地を走り続けるのは相当タフだったようです。
一方、ポルシェに46mの差で抜かれたジムニーですが、上述のとおり21年落ちの中古車の足まわりを強化、大径タイヤの装着、そして大気の薄くなる高地対策としてスーパーチャージャーを装備していたとのこと。
スズキのワークスとか、どこかの探検チームではなく、Gonzalo BravoとEduardo Canalesという地元チリの若者ふたり組による挑戦でした。ジムニーはチリの軍用車に採用されていたらしく、ふたりは中古車を払い下げでもしてもらったのかもしれません。
で、最初の挑戦は猛烈な吹雪によってリタイヤ、二度目はオイルタンクが過熱、エンジンが出火してしまうトラブルで断念。ようやく、三度目の挑戦で、それまでJEEPがもっていた6646mという記録を抜き去り、世界記録を樹立というド根性ストーリー。
「もっとも難しいセクションは6400m地点で1.6kmほど続く氷河を横断するところでした。氷河には巨大なクレバスがいくつもあり、数日前に降った雪のせいでクレバスは埋まってしまい、雪の下がどうなっているのか判断できなかったことでした」と、Gonzalo氏。こうなると、クロカン王者とかどっかのワークスチームとか関係なく、よくぞご無事でと胸をなでおろさずにはいられません。
ポルシェやJEEPの(ふんだんな予算やスタッフを注ぎ込んだ)挑戦も賞賛に値するものには違いありませんが、チリの若者たちのド根性に胸を熱くする方も決して少なくないでしょう。
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