現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.36「ようやく日本へ~PCR検査は痛いのなんの……!」

ここから本文です

世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.36「ようやく日本へ~PCR検査は痛いのなんの……!」

掲載 更新
世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.36「ようやく日本へ~PCR検査は痛いのなんの……!」

クアルタラロ選手の2年目のジンクスはいかに?

1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第36回は、半年ぶりの日本で遭遇した出来事と、今年のモトGPについて。

連載:世界GP王者・原田哲也のバイクトーク【独占Webコラム】

油断できない新型コロナウイルスですが、MotoGPはいよいよ開幕へと動きが!

どうしても外せない仕事をこなすために、モナコから日本にやってきました。この時期、ヨーロッパから日本にやってくることにはリスクがありますので、最大限の注意を払いながらの移動となりました。

モナコを出発したのは6月27日。まずはフランス・ニースからドイツ・フランクフルトへのフライトです。意外にもヨーロッパの国内線は満席で、みんなマスク着用! 当たり前ですよね。ただ、列に並ぶ時に僕はソーシャルディスタンシングを意識して間を空けるのですが、そこにガンガン割り込まれるのには閉口しました。さすが、割り込み文化……(笑)。

フランクフルト到着が50分遅れ、羽田へのフライトに間に合わないかと焦りましたが、きれいなお姉さんが迎えに来てくれたし、手荷物検査もなく、比較的あっさりと日本への便に乗り継ぐことができました。国際線とは思えないほど機内はガラガラで、快適でしたよ。

大変だったのは、羽田に到着してからです。PCR検査が痛い……! 10~15cmほどもある長い綿棒を鼻の穴から突っ込まれ、5回もグリグリされるんです。あまりに痛くて涙は出るわ、くしゃみをガマンしなくちゃならないわ……。その他なんだかんだで、パスポートコントロールを通過できたのは羽田に到着してから2時間ほど経ってからと、なかなかの経験でした。

今年1月以来の日本で、こんなに離れていたのも最近では珍しく、10年ぶりぐらいかな。ようやく……という感じですが、2週間は自宅隔離で、人に会うことももちろんできません。生きていくために最低限必要な買い物に出かけることは許されていますが、行動はすべてメモに残しておく必要があります。

ルールを守らなかった場合は偽証罪相当の罪に問われるそうで、逮捕、罰金というものものしい言葉も聞きました。でも、そんな決まりがなくても、自分が罹るのもイヤだし、何よりも人に迷惑を掛けるわけには行きませんからね。2週間はひたすら自宅の掃除に励むつもりです。昨日はトイレ掃除をしたから、今日はキッチンまわりかな(笑)。

……といった感じで、まだまだ油断できない新型コロナウイルスですが、MotoGPはいよいよ開幕に向けて動き出しましたね……と言おうとした矢先に、アンドレア・ドヴィツィオーゾがモトクロスのレース中にジャンプの着地で転倒し、鎖骨を骨折した、というニュースが飛び込んできました。

これはもう、しょうがないかな……。僕の現役時代はマシン開発のためのテスト走行が許されていたので、もうほとんど毎週のようにGPマシンを走らせていました。だから常にバイクに乗る体ができていたんです。その代わり、スキーやバイクライディングなどリスクのあるスポーツは契約上禁じられていました。

でも今は、開発コストを抑えるためにテスト走行も最小限。いくらGPライダーと言えどもバイクに乗らないことには体も感覚も衰えてしまいますから、モトクロスもやむを得ないと思います。実際、ドヴィツィオーゾのモトクロスレース参戦もチームとの契約で許されていたようですしね。オフロードは非常にいいトレーニングになるのも確かです。ただ、個人的にはジャンプはしない方がいいかな、と思いますが……。

MotoGP開幕前なのに、なぜか来シーズンの話題が賑やかで……

一方、まだ1レースもしていないのに、なぜか来季の契約に関する動きも激しくなってきました。ダニロ・ペトルッチがドゥカティからKTM(テック3)に移籍し、兄弟同チームで注目されたアレックス・マルケスはレプソルホンダからLCRホンダヘ。LCRから押し出されるかたちになったカル・クラッチローは、スーパーバイク世界選手権へのスイッチが噂されています。そして空いたレプソルホンダには、現KTMのポル・エスパルガロが収まることが確実視……。

あまり先のことが決まってしまっていると、観ている側としては消化シーズンのような印象になってしまいますよね。今季の活躍次第で来季のシートが決まるようだと、もっとワクワクしながら応援できると思うのですが……。

ただ、どんなシーズンであっても、ライダーは「勝ちたい!」という強い思いを持って目の前のレースに臨む生き物です。7月19日のスペインGPからMotoGPは開幕しますが、熱いレースになることは間違いありません。僕も今から本当に楽しみです。

―― 来季のレプソルホンダ入りが確実視されるポル・エスパルガロ選手は、KTMのファクトリーマシン開発に大きな力を発揮してきた。

レースが行われないなんていう想定外の時を過ごして改めて思いますが、やっぱりレースは面白いですよね!「不要不急か」と問いただされてしまえば、開催の中止や延期もやむを得ないのかな、と思いますが、楽しみもないと生活に張りが出ません。ないと寂しいものですし、「スポーツ観戦って、ストレス発散にもなっているんだなあ」とも思います。

何が起こるか分からないレースの緊張感と興奮は、他では味わえません。だって、予選までぶっちぎっていたマルク・マルケスだって、必ず勝てるとは限らないんですよ!? まさに筋書きのないドラマ。レースは本当に面白い!

それに、自分にはできない限界のライディングでモンスターマシンを操る姿には、感動してしまいますよね。レースって、日常とはまったく違うエキサイティングな時間なんだな……と改めて気付きました。

僕はゴルフも好きなんですが、先日も女子プロゴルフのアース・モンダミンカップをYouTubeで観戦し、素晴らしいショットの数々に「スゴイな~!」と純粋に感動しました。今回は無観客試合でしたが、通常なら多くのお客さんに観られている中での試合です。みんなの視線を感じながら最高のショットを決めるメンタルの強さって、どんなにスゴイんだろう!

え? レーシングライダーのメンタルもスゴイって? いやあ、ライダーはヘルメットを被って直接は顔を見られないから、全然マシですよ! やっぱり顔を見られるか、見られないかって、集中力を高めるにあたって大きな差だと思います。

まぁ、このあたりはかなり個人差がある話だと思いますが、僕は顔を見られていてはちっとも集中できません。だからサーキットでも、ヘルメットのシールドを上げている間は全然集中していませんでした。ちょっと余談になりますが、500ccの時はスターティンググリッドにいる間はヘルメットを脱いでいることが義務付けられていました。選手紹介でテレビに映るからです。だからグリッドにいる間は、意外とリラックスしているんです。

いよいよスタート直前、サイティングラップに出て行くためにシールドを下ろした瞬間に、パチンとスイッチが入ります。そこから40~50分間はもちろん集中しっぱなしですが、時間的にはまぁそんなものですよね。プロゴルファーは4~5時間ものプレー中は集中し続けているわけですから、うーん、やっぱりスゴイ!

注目されていないがゆえに伸び伸びと走れる面も

MotoGP開幕戦で個人的に注目したいのは、ファビオ・クアルタラロですね。去年はルーキーとして伸び伸びと暴れ回ってくれましたが、さて2年目の今年はどうでしょう? レースでは2年目のジンクスというものがあって、注目去れ始めるととたんにプレッシャーを感じ。スランプに陥るケースがよく見られます。

僕も1993年の世界GP参戦初年度にいきなりチャンピオンを獲りましたが、ルーキーということでさほど注目されていなかったことも大きかったように思います。自分自身、「ランキング10位ぐらいになれればいいや」と思ってましたから。ラッキーも重なってチャンピオンになりましたが、今振り返ればやっぱり「2年目のジンクス」はありましたね。

事前テストでエンジンが壊れて、思うようにセッティングが煮詰めきれないまま臨んだ開幕戦。「タイムが出ていない」と焦っていました。しかもストレートが伸びないから、どうにかコーナーで頑張らないといけない。そして、ハイサイドで大ケガ……。シーズン全体に響き、ゼッケン1を付けていながらランキング7位に終わってしまいました。前年のチャンピオンとしていい走りを見せないといけない、というプレッシャーを、知らず知らずのうちに感じてたんです。

初年度が目論見通りランキング10位前後で迎えた2年目なら、多少エンジントラブルがあったりセッティングが煮詰まっていなくても、伸び伸びと戦えたような気がします。まぁ、だからってチャンピオンを獲れるかどうかはまた別の話ですが(笑)。

さて、一気に注目が集まり、ライバルの包囲網も狭まる2年目のクアルタラロはどうでしょうか。マルケスを倒せそうな最有力候補だけに、若者らしい伸びやかな戦いっぷりを見せてもらいたいものです。

―― テストでも速さを見せていたファビオ・クアルタラロ選手に注目!

TEXT:Go TAKAHASHI PHOTO:YOUNG MACHINE Archives, KTM ※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

※本記事はニュースメディア配信用に一部抜粋・再編集されたものであり、全文詳細はオリジナルサイトに掲載されています。The post 世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.36「ようやく日本へ~PCR検査は痛いのなんの……!」 first appeared on WEBヤングマシン|最新バイク情報.

こんな記事も読まれています

新車価格は衝撃の63万円!!! 気分は[日本一速い男] 日産チェリーの正体とは?
新車価格は衝撃の63万円!!! 気分は[日本一速い男] 日産チェリーの正体とは?
ベストカーWeb
イタリアのSAはコーヒーが美味しい! ただしガソリンは日本以上に高いのでセルフサービスを活用しましょう【みどり独乙通信】
イタリアのSAはコーヒーが美味しい! ただしガソリンは日本以上に高いのでセルフサービスを活用しましょう【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
新型トラックや多彩な架装など約150台が集結!ジャパントラックショー2024
新型トラックや多彩な架装など約150台が集結!ジャパントラックショー2024
グーネット
MotoGP:2027年に1000ccから850ccへマシン規則変更。空力パーツは50mm削減、車高調整デバイスは禁止
MotoGP:2027年に1000ccから850ccへマシン規則変更。空力パーツは50mm削減、車高調整デバイスは禁止
AUTOSPORT web
世界に1台!フェラーリ「812GTS」ベースのフルカーボン仕様車を披露 ノビテック
世界に1台!フェラーリ「812GTS」ベースのフルカーボン仕様車を披露 ノビテック
グーネット
時速6キロのお台場めぐり!トヨタの3輪BEV使った観光サービス「おさんぽ」スタート
時速6キロのお台場めぐり!トヨタの3輪BEV使った観光サービス「おさんぽ」スタート
グーネット
アウディの美点を「ギュッと凝縮」 更新版S3へ試乗 333馬力にトルクスプリッター 少し真面目すぎ?
アウディの美点を「ギュッと凝縮」 更新版S3へ試乗 333馬力にトルクスプリッター 少し真面目すぎ?
AUTOCAR JAPAN
日産「マーチ」ベースの「フェアレディ」!? 大人が驚く学生ならではの感性で仕上げたカスタムポイントとは
日産「マーチ」ベースの「フェアレディ」!? 大人が驚く学生ならではの感性で仕上げたカスタムポイントとは
Auto Messe Web
ルノーの名物イベント、今年は10月27日に決定! 「ルノー カングー ジャンボリー2024」開催概要を発表
ルノーの名物イベント、今年は10月27日に決定! 「ルノー カングー ジャンボリー2024」開催概要を発表
月刊自家用車WEB
宮田莉朋、無念のトラブルで勝利逃すも「全然ネガティブには思っていません」。原因はギヤボックス/ELMS第2戦
宮田莉朋、無念のトラブルで勝利逃すも「全然ネガティブには思っていません」。原因はギヤボックス/ELMS第2戦
AUTOSPORT web
ルクレール3位「マクラーレンの強さは予想以上。僕たちにはアップグレードが必要」フェラーリ/F1第6戦
ルクレール3位「マクラーレンの強さは予想以上。僕たちにはアップグレードが必要」フェラーリ/F1第6戦
AUTOSPORT web
800馬力のランボルギーニ「ウルスSE」は10種のドライビングモードで楽しめる! EVだけでも60km以上走れるクラス最速SUVです
800馬力のランボルギーニ「ウルスSE」は10種のドライビングモードで楽しめる! EVだけでも60km以上走れるクラス最速SUVです
Auto Messe Web
レッドブル&HRC密着:敗因はフロアのダメージとハードタイヤでの苦戦。勝つことの難しさを痛感したフェルスタッペン
レッドブル&HRC密着:敗因はフロアのダメージとハードタイヤでの苦戦。勝つことの難しさを痛感したフェルスタッペン
AUTOSPORT web
高速道路を走りながら「EV充電」現実に! 本線で「走行中給電」実証やります NEXCO東日本
高速道路を走りながら「EV充電」現実に! 本線で「走行中給電」実証やります NEXCO東日本
乗りものニュース
合法カスタムでも「デコトラ」では仕事ができない現代! デコトラ野郎たちは「マイトラック」で楽しんでいる
合法カスタムでも「デコトラ」では仕事ができない現代! デコトラ野郎たちは「マイトラック」で楽しんでいる
WEB CARTOP
盗難車犯罪の温床「違法ヤード」 解体された自動車が海外輸出される残酷現実、規制強化で本当に防げるのか
盗難車犯罪の温床「違法ヤード」 解体された自動車が海外輸出される残酷現実、規制強化で本当に防げるのか
Merkmal
知的なアスリート──新型マセラティ グラントゥーリズモ試乗記
知的なアスリート──新型マセラティ グラントゥーリズモ試乗記
GQ JAPAN
2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
2年目は女子クラスも新設! 大学自動車部が大手メーカーのサポートで闘う「フォーミュラジムカーナ2024」が開幕!!
WEB CARTOP

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村