BEV(バッテリー電気自動車)を購入するにあたり、不安な点と言えば充電環境に加えて、まだまだ不充分とされる航続距離だ。
カタログには一充電走行距離の値を明示してある。しかしEVが実際に使われる現場は、そうした値が記録される平坦で一定なテストコースではなく、勾配もカーブもある。
80km/h巡航なら900km走行できるかも!EQE 350+ 電費計測
そこでTHE EV TIMESでは、試乗や撮影で広報車を借り出す機会に乗じて、公道の高速道路で「生きた」電費を計り、読者の皆さんの参考になる電費を導き出したいと考えた。
計測方法
高速道路をACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使用し、80km/h、100km/h、120km/hの各速度で巡航した電費を計測する。ACCを使用することで、誰でも一定速走行を実現できるので、読者の皆さんの再現性も高いものとなる。
なお、同じ区間の往路と復路を同じ速度で走行することにより、勾配(標高差)を平準化しており、その平均値を区間電費としている。
計測区間に入ったらすぐにACCを巡航速度に合わせ、電費をリセットし計測区間終了直前の電費を記録する。
なお、車両のメーター速度表示と実際の速度には差があるため、GPSで実速度を確認しACC設定速度を調整、正確に各巡航速度で走行できるようにする。こうすることでメーター80km/h巡航においてA車は実速度78km/h、B車は実速度が75km/hで、実はB車の方が有利だったという不公平をなくす。
そして計測は、交通量が少なく渋滞が発生する可能性の低い深夜に実施する。
計測区間
120km/hの電費を計測するため、現状では国内で最も制限速度120km/h区間の長い新東名高速道路(以下、新東名)を利用するため、東名高速道路(以下、東名)と新東名を使用することにした。
実際の制限速度を踏まえ、かつ各速度で往復の走行距離を約100kmに合わせるため、下記の5区間を設定した。
80km/h巡航区間距離:片道48.7km、往復97.4km 100km/h巡航区間距離:片道50.7km、往復101.4km 120km/h巡航区間距離:片道47.8km、往復95.6km
標高差の多寡による電費の差を確認するため、80km/h区間はあえてB区間(標高差85m)とC区間(標高差347m)に分けている。
100km/h巡航もA区間は標高差25mとほぼ平坦だが、D区間は316mもあり、この2区間の差にも注目だ。
120km/h巡航は確実に電費が悪くなることが考えられるが、各自動車メーカーはBEV化にあたり、ドアハンドルをグリップ式からフラップ式や格納式にしたり、メルセデスはEQシリーズにワンボウ・デザインを採用するなど空力性能を突き詰めており、EQSセダンに至っては量産車世界初のCd値0.20を達成している。
さらに欧州では120km/h以上の速度域での移動の場面も実際に考えられるので、欧州車、中でも特にアウトバーンのあるドイツ車が120km/h電費の「落ち度」が少ないかどうかなど、何か見えてくるものがあるかもしれないと思い、120km/hの電費計測にも臨む。
計測前の準備と計測時の条件
計測前にタイヤ空気圧をメーカー指定値に合わせる。タイヤの製造週年も記録しておく。
多くの人の実際の使用状況と合わせ、再現性の高い電費計測とするため、季節、気温にかかわらずエアコンは温度を23℃に、風量はオートとする。後席用のエアコンもある場合は同じ設定とする。ドライブモードはノーマルとする。
乗車人数による重量差を無くすため一人乗車を原則とする。雨天時は空気密度が上がり空力面で不利な状況となること、水たまりによるタイヤの転がり抵抗も増えてしまうため、計測は行わない。
充電の記録
電費計測の約300kmの行程中に充電した場合はその記録も記載する。充電器も車両側も、より短時間で、より大容量の充電を達成しようと充電能力を向上させているので、本当にそれらの数値どおりの充電が可能だったのか、また充電時にバッテリー冷却装置が作動した時の車内外の音量についても報告したい。
エアコン使用による航続距離の変化
エアコンのオンとオフによって、表示される航続距離にどれほどの差が生じるかも確認する。エアコンオフ時の電池残量(SOC)による航続距離をベースに、設定温度を最も下げて風量最大の状態と設定温度を最も上げて風量最大の状態で、それぞれどれほど表示される航続距離が変化するかも記録する。これにより走行前にエアコン使用による航続距離の変化を事前に考慮したプランをたてる一助としたい。
ACCの使用方法
電気自動車を遠乗りするとき、加速性能の優劣にかかわらずできるだけ電力消費を少なくするために、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を使うユーザーは多いのではないだろうか。
現在は多くのクルマがステアリングのスイッチでACCを設定できるようになっている。モデルによって異なる、ACCの使用方法も記載する。速度設定についてもボタンの1クリックで1km/hごとに変えられたり、10km/h刻みしか設定できない車種もある。
10km/h刻みの車種はどうすれば1km/hごとの設定にできるのかについてもお伝えしたい。
その他、レーン・キープ・アシスト(LKA)やレーン・デパーチャー・ウォーニング(LDW)などの機能についても特異なものがあれば、記載していきたい。
この電費計測によって、BEVの購入を検討している人には電費と航続距離の目安を、すでにBEVを所有している人には長距離ドライブの時の航続距離や充電タイミング、買い替え時の検討材料にして頂けると幸いである。
※以上の計測方法により極力公平かつ厳正な結果となるように尽力するが、季節、気温、天候による差はどうしてもカバーしきれないこと、また電費は実際の乗車人数や荷物の積載量によっても変わってくるため、あくまでも参考値となること、ご了承いただきたい。 基本的には速度規制や車線規制がない状況で走行するものの、避けられない場合は適切な速度で走行し、その区間の電費については数値の補正を実施する。
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