今や希少な懐かしのファストバッククーペを、小川フミオが振り返る!
1980年代、日本には魅力的なファストバッククーペがいろいろと登場した。コンセプトも多様で、いまでも欲しくなるようなモデルがいくつもある。
2桁ナンバー物語 Vol.8 品川35のランチア・テーマ・ステーションワゴン (後編)
クーペを商品化できるのは、メーカーのデザイン力が上がると同時に、受け入れる市場が成熟していることの証であるとすると、このころから日本車と、それを取り巻く環境が大きく変化したことを示している。
クーペとは、ひとことでいうと、比較的コンパクトなサイズ(おもに短めのホイールベース)の2ドア車で、ルーフが後に向かって下がっていくボディを与えられたクルマを指す。この記事では、なかでもファストバックといって、独立したトランクをもたないスタイルのモデルを取り上げる。
昨今では4ドア・クーペというスタイルが生まれた。キャビンを小さくし、前席を際立たせ、リアシートの存在感をやや小さく見せるのが特徴だ。大型セダンにもこのスタイルがあるのは、通常のセダンにパーソナルカーとして乗っていても、運転手に見られてしまうため、いっそ後席を狭く見せてしまおうという意図ゆえである。
ことほどさように、クーペのよさとは、前席を中心にクルマが作られているところにある。ということは、つまるところ、運転の楽しさを追求したモデルが多い。それゆえ、クーペを愛するひとはいつの世でも多い。
(1)トヨタ「スープラ」(3代目)A70型
セリカXX(ダブルエックス)の後継車といえるのが、1986年に販売開始されたスープラだ。この名前はXXの輸出名。ソアラと基本シャシーを共用するため、セリカより上級イメージが必要というマーケティング的な判断から、スープラの名が新たに選ばれたのだろう。
どことなく、シボレー「カマロ」などを連想させるウェッジシェイプのボディは、格納式ヘッドランプと、ガラスのハッチゲートを特徴とした。メーカーの位置づけは“ハイパフォーマンス・スペシャルティカー”で、スポーツカーではなくGTだった。
ソアラと並行して開発されながら、こちらは当時ポルシェやフェラーリが競合とされただけあって、ホイールベースはよりコンパクトに、75mm縮められた(2595mm)。XXよりも20mm短くなっていたのだ。
エンジンは、インタークーラー付きターボチャージャーを組み合わせた230馬力の3.0リッター直列6気筒DOHCが頂点。ソアラとおなじユニットだ。くわえて2.0リッター直列4気筒DOHCツインターボと、おなじ2リッター直4DOHCながらターボなしの自然吸気式、そして2.0リッター直4SOHCと、ラインナップは多岐にわたっていた。
3.0リッターはトルクのたっぷりあるのが印象的だったいっぽう、ポルシェやフェラーリが競合というわりには、ソアラを思わせる豪華なシートや、快適志向の乗り味など、“格納式ヘッドランプを備えたソアラ”といいたいところがあったのも事実だ。
1990年には、3.0リッター直列6気筒は、ヤマハが開発を担当した、2.5リッター6気筒(1JZ-GTE)に置き換えられる。出力は280psと3.0リッターよりパワフルであるいっぽう、サイズがよりコンパクトでよりすぐれた操縦性に寄与した。
さらにビルシュタイン製のダンパーが組み込まれるなど、最後の3年間は、スープラはスポーティさを高めていった。
(2)日産「180SX」(初代)
大ヒットしたS13型シルビアとプラットフォームを共用するスポーティクーペが、180SXだ。シルビアが発表された翌年の1989年に日本で販売開始された。
北米市場では「240SX」として、2.4リッターエンジンを搭載し、先行販売されており、日本では車名のとおりシルビアと同じ1.8リッター直列4気筒(前期)だった。それに後輪駆動の組み合わせ。変速機は4段ATと5段MTから選べた。
シルビアがノッチバックのクーペだったのに対して、RS13型の180SXはガラスハッチを備えたファストバック。4540mmの比較的コンパクトな2プラス2の車体に、マルチリンク式リアサスペンションと、ビスカス式LSD(リミテッドスリップデフ)という構成は両車とも共通だ。
ガラス面積が少ないせいもあり、シルビアのほうがやや軽量(180SXの1210kgに対してシルビアは1130kg)であり、スタイルも(やや主観的だけれど)よかった。
でもシルビアが1993年にモデルチェンジするのに対して、180SXはこの代が1998年まで継続生産された。軽量コンパクトなボディに、後輪駆動システム、それに175psとパワフルなインタークーラー付きターボエンジンの組み合わせは貴重で、ロングセラーになった。
シルビアがターボを「K's」、自然吸気を「Q's」と「J's」としたのはややわかりにくかった。それに対し、180SXではエンジンは1種類。競技車のベースとなる「タイプI」と、一般むけ「タイプII」とシンプルだった。
操縦してのシルビアとの大きなちがいは感じられない。さきに触れたように、公道用と、もうひとつのバージョンが競技車ベースというのは、“スポーティカー”というより“スポーツカー”にかぎりなく近いかんじでイメージもよかった。
ハンドリングに秀でて、かつスタイルとの両立が出来ていたのに感心したものだ。当時の日産のクルマづくりの最良の部分が結晶化したモデルといってもいいだろう。
じっさい、このころの日産のラインナップをみると、2ドアのクーペが多い。2代目「パルサー」(1982年)、「エクサ」(1986年)、「サニーRZ-1」(1986年)、そして「スカイライン」、「フェアレディ」、「レパード」もだ。クルマって楽しいと思わせてくれた時代である。
(3)ホンダ「バラードスポーツCR-X」(初代)
いまでもカッコいいと思うのが、バラードスポーツCR-Xだ。このクルマのモデルチェンジはアウディ「TT」とおなじように、ひとつのコンセプトを煮詰めていくものだ。でも1983年の初代がもっともピュアでよい、と、思う。
「シビック」のフルモデルチェンジに合わせて、同じ年に4ドアセダンのバラードと、この全長3675mmとコンパクトな2ドアクーペのCR-Xが発売された。乗車定員は4人となっているが、後席空間に乗るのはほぼ不可能である。
アルファロメオのクーペを連想させるコードトロンカ(すぱっと垂直に切ったようなテール)のボディは見るからに軽快。加えて、ルーフにはレバーで開閉できる車内換気用の格納式ベンチレーションを持つ仕様もあった。
ルーフに換気口っていうアイディアもきっと、一部のアバルトのスポーツカーが採用していた空気取り入れ用のペリスコープ(潜望鏡)のホンダ的解釈だったんだろう。などと考えるのも楽しかった。
車重が800kg程度と軽く、1488ccエンジンでもそれなりにいい走りを味わえた。もっとも得意なのは、クルクルと連続したコーナーをまわっていくことであると思えた。でもサスペンションのストロークが不足ぎみで、快適性はいまひとつだった記憶がある。
ときとして、むかしのクルマのなかには、おなじコンセプトのまま、もういちどいまの技術で作ってほしいと思わせるモデルがある。バラードスポーツCR-Xもその1台だ。
(4)三菱「コルディア」
コルディアはファストバッククーペで、4ドアセダンの姉妹車「トレディア」と同時に、1983年に販売開始された。コンポーネンツは「ミラージュII」(1978年~1983年)を流用。トレディアはスタイリングでも、ミラージュIIの4ドアサルーンと共通のモチーフを採用していた。
ただし、トレディアは、セールス的には大失敗で、さんたんたる結果を残した。いっぽうクーペのコルディアは、直線基調ながらスタイリング的にキャラクターがたっていて、グリルレスのフロント・エンド(初期型)をはじめ、個性的な要素もうまくまとめられていた。
このシリーズでは初めて1.6リッター直列4気筒ガソリンターボ・エンジンが用意されたり、電子制御のオートマチック変速機が搭載されたりと、メーカーでは当初、セールスに大いなる期待をかけていたようだ。
コルディアは2445mmのホイールベースに、全長4275mmの車体。当時は標準的なサイズともいえるが、昨今の水準からすると、かなりコンパクトだ。きれいなスタイリングなので、写真ではいまもおおいに魅力的であるものの、スペシャルティカーとしては路上での押し出しに欠けるかもしれない。
ドライブトレインにも特徴があり、当時の三菱自動車が得意とした「スーパーシフト4×2」(トランスファーを1段から2段に増やす)をマニュアル変速機と組み合わせていた。
でもとくにコルディアのシャレた雰囲気と、いかにも”ヨンク”といったかんじの2本のシフターはイメージ的に合わなかった。いや、それは実際に日常的に使っていない者の見方かもしれない。使うと「便利である」と、評判だったから。
機能的なダッシュボードや、独自のデザインのフロントシートなど、インテリアデザインにも気合いが入っていた。乗るとちょっとペラペラなかんじがしてやや頼りなかった。いま乗ると、どうだろう。車重は950kgに抑えられているので、意外に気持よく走らせられるのではないだろうか。
(5)マツダ「RX-7」(2代目)
1985年登場の2代目RX-7、通称“FC型”は、ファンにとっては純粋なスポーツカーだ。ファストバッククーペというスタイリング上の分類だけでは、13Bを乗せ、しっかりしたハンドリングを楽しめるこのクルマの真価を言い表せないだろう。
1978年の初代は、軽量かつコンパクトで好ましかったものの、スタイリングはいまひとつ立体的でない不満があった。2代目は、全体の面のつながりもよく、理知的で、スポーティかつエレガントだ。
“ポルシェ924スクール”なるデザイン用語がある。ポルシェが924(1975年)で打ち立てたフロントエンジンかつ後輪駆動のスポーツカーの定石ともいえるプロポーションのことだ。FC型はまさにそのスクールの優秀生徒というかんじである。
よくまわってフィールのいいパワフルなロータリーエンジンをはじめ、クイックなステアリングや、しっかりしたロードホールディングを見せる足まわりの設定など、全方位的によく出来ていた。
インテリアも同様。造型感覚は国際市場で通用するものだったし、品質感も高く、マツダはこのRX-7でいっきにグローバルメーカーになったなぁと、感慨をおぼえたものだ。
文・小川フミオ
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