SNSなどでトヨタの2.8Lディーゼルエンジン「1GD」の生産が終了してしまう、という情報が飛び交っている。ランクルを愛するベストカーWebとしては非常に大きなトピックだけに、この真相を少し探ってみた。ぶっちゃけた話、しばらくは安泰だと思われる。
文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、編集部
「ランクル」国内むけディーゼル廃止はない? 「騒音規制」「排ガス規制」が噂の”決定打”にならないワケ
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そもそもディーゼル廃止に排ガス規制が関係ある?
2015年登場の1GDエンジン。ユーロ6対応のディーゼルエンジンだ
SNSなどで「ランクルシリーズに搭載される1GDエンジンの国内向けの廃止が決まった」という情報が出回っている。
まず最初から結論を言うとベストカーWebが掴んでいる情報では、この1GDエンジン(2.8Lディーゼル)の廃止という情報は入っていない。ましてやランクル250やランクル70のディーゼルモデル廃止や受注再開がないという話もつかんでいない。
そもそも1GDエンジンを国内仕様からフェードアウトさせる理由はどこにあるのだろうか? 1GDエンジン自体はユーロ6のエミッションをクリアしており、アドブルー仕様であれば日本はもちろん、欧州でも排ガス規制単体の影響は受けない。
もちろんオーストラリアがアドブルー仕様のランクル70へスイッチするタイミングもやってくるはずで、そのための生産調整などがあったとしてもトヨタが日本市場から1GDを排除するメリットは感じられない。
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騒音規制という噂も出たけれど……
シャフトなどが露呈しているフレーム車。国連規定で1dBのオーバーは認められている
排ガスに問題がないとなると、次に噂になっているのが車両騒音規制。これについてはランクル70は2023年12月に発売開始だから、いわゆる70dBを上限とする「平成28年騒音規定”フェーズ2″(M1A2C)」が適用される。
しかしカタログスペックでは「71dB」でフェーズ2の上限である70dBには到達していない。もちろんこれには理由があり、国連規定「UN_R51-03」において下記の例外があるのだ。
“6.2.2.2. For vehicle types designed for off-road use, the limit values shall be increased by 2 dB(A) for M3 and N3 vehicles category and 1 dB(A) for any other vehicle category.
For vehicle types of category M1 the increased limit values for off-road vehicles are only valid if the technically permissible maximum laden mass > 2 tons”
ざっくり要約すればM1カテゴリー(ランクル70が該当)のオフロード車両については、技術的最大許容質量が2トンを超える車両のみ1dBの規制値引き上げを認めるというもの。つまり規定値より1dB大きな71dBがランクル70の場合の騒音規制値なのだ。
国土交通省への取材によれば「M1A2C」という認可基準の「C」はオフロード車を示すとのことで、この例外措置を適用したのは間違いない。ちなみにランクル250についてもディーゼル、ガソリンともに「M1A2C」だ。
つまり2024年10月の「フェーズ3」施行開始よりも前に型式認定されている再再販ランクル70(とランクル250)については、当分の間は問題なく「フェーズ2」の車両騒音規制で対応できるってこと。そうなると「騒音規制が原因」という噂も1GDエンジン搭載車やランクル70を排除する理由ではなくなる。
そもそも「元が取れていない」 のに廃止するか?
ランクル250も含めて1GDエンジンの費用対効果は大きい。これをいますぐなくすとは考えにくいのだが……
当然ながらランクル70にしても250にしても300にしても、外的要因で純粋な内燃機関モデルの終焉から逃げきれなくなる日はくる。中東ではランクル300ハイブリッドが、そして欧州ではランクル250の1GDエンジン搭載車にマイルドハイブリッド仕様が登場しているのが、そのXデーへの備えとも見てとれるだろう。
またランクル大国のオーストラリアでもそれは例外ではなく、ハイラックスやランクル70の電動モデルのテストが進んでいる。当然過酷な自然環境下でテストを行うという意味は、今後の実用化が大前提のはずで、欧州の1GD+48Vハイブリッドはまさにオーストラリアでの知見が生きたパワートレインだ。
しかしながら「ランクル70も250もディーゼルモデルは廃止へ」という記事を書く日は今ではないし、トヨタとしてもこのまま1GD搭載車両を国内向けに廃止したら採算を取ることはできていないはずだ。
ハイラックスEVの実験はオーストラリアでも始まっている。この知見は今後の市販車にもフィードバックされるはず
グローバルモデルだから日本向け車両は「チャチャっと」手を入れて簡単に安価で出せると思う人もいるかもしれないが、皆さんが思っている以上に日本でクルマを新型車として登録するコストは高い。認証を取得するだけでも「億単位」の金額がかかることだってある。
ランクルを取り巻く環境が販売などを含めて非常に困難を帯びてきており、販売終了という情報がSNSなどで頻繁に出回ることが多くなった。しかしその情報だって真実かどうかは計り知れない。それであればデータが示す内容をきっちり精査してみたくなり、この記事をまとめてみた次第。
また廃止ばかり議論されているが、新たな1GDエンジン搭載モデルの可能性にだって、今後は注視していく必要があると思う。ベストカーWeb調べではランクルFJはガソリンエンジンのみになりそうだが……。
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みんなのコメント
新開発するなら話は別だが、現状ではほかに使える商用車向けディーゼルエンジンはトヨタに存在しないはず。