【10年ひと昔の新車】ホンダ CR-Zはビッグマイナーチェンジで大幅に進化した

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ホンダ CR-Zだ。

ホンダ CR-Z（2012年：ビッグマイナーチェンジ）
ハイブリッドでも走りを諦めずスポーツできるという、これまでにないコンセプトで登場したホンダCR-Zは、およそ2年半前（編集部註：2012年当時）の登場時にはかなり注目の1台だった。3ナンバーボディのグラマラスなテールデザインに、走れば切り詰めたホイールベースが生み出すキビキビとした身のこなし。ハイブリッドの根幹ともいえるバッテリーの搭載でFF車にも関わらずリアがドッシリとしていた。

だが、走り出すと肩透かしを食らったかのようなパワー感であることに落胆したことも事実。燃費が良いのだから仕方ないところだが、見た目と中身の落差は大きかった。そんな初期型オーナーの気持ちを察してか、ホンダはマイナーチェンジでエンジンは1バルブ休止VTEでレブリミット6500rpmのものから、ロー／ハイ切り替えVTECのレブリミット7000rpmのものへと変更。高強度のクランク材採用や、摩擦を減らすためにピストンスカート部の二硫化モリブデンコーティングも奢っている。

さらにはハイブリッド用のバッテリーをニッケル水素からリチウムイオン（ホンダ車初）に変更。従来と同じ体積ながらより高電圧を生み出すことが可能なリチウムイオンバッテリーは、これまでの100Vから144Vへとパワーアップしている。ちなみにモーターはこれまでと同様だが、電圧がアップしたことによりこれまでの1.5倍の出力となる20psを発生する。

リチウムイオンバッテリーは発熱しにくく、充放電を素早く行えるため、発熱によるパワーセーブに入りにくく、エネルギー回収をしやすい環境が整えられた。これまで元気よく走るとモーターアシストがキャンセルされたり、バッテリーがアッという間に空になってアシストされないことがあった。これが常にフルパワーに近いモーターアシストと、電欠の心配からの解放が期待できる。

そして、プラススポーツ ボタンが備わった。これを押すと瞬時にモーターアシストがフルパワー状態になると同時に、スロットルが全開放される。ハイブリッド車でしか享受できないこのシステムは大いに歓迎したい。このほか、ボディの一部を強化するとともにダンパーの再調整や17インチ ホイールも与えられ、スポーツ性をより高めている。

7000rpmまで回せてストレスない走りに進化
そんなマイチェン後のCR-Zで走り出すと、エンジンの滑らかさが高まったことにまず気付く。ガサツさはなく上質になったことは普段乗りでも感じられるところだろう。フットワーク系についても前後の無駄なピッチングが収められ、フラットに走るようになった。また17インチのタイヤを装着しながら快適な乗り心地を満たしていることも納得の仕上がりだ。

やはり一番感心したのはパワーユニット全体がパワフルに生まれ変わったことだ。低回転から力強いモーターアシストが得られ、その後7000rpmまで引っ張れるこのユニットは、ようやくスポーツを語れる土俵に乗ってきたなと思える感覚。ストレスなく走り、回し切れば爽快感の得られるその仕上がりは、スポーツカーと呼ぶにふさわしい。

ハイブリッドシステムもマイチェン前より効率良くエネルギー回生を行っているようで、バッテリーの減りをさほど気にしなく良くなった。プラススポーツ ボタンも舵角を与えている状態では機能しないが、ほぼ直進状態では瞬時にV6の3Lエンジン並みの加速が得られる。合流加速などでは威力を発揮するだろう。

ただ、ギア比が相変わらずエコ仕様だったことは残念なポイントだ。これにはマイチェン前モデルの燃費と同等にしたいという課題があったかららしいが、MTの場合2速でレブリミットまで引っ張ると100km／hを超えてしまう。これではせっかくの高回転ユニットも活かしきれない。いまの仕様ならMTモードのステップ比が細かいCVT車の方が旨味を得られるかもしれない。

とはいえ、今回のビッグマイナーチェンジの内容に関しては、ほぼ納得できた。初期型ユーザーが買い替えたとしても、十分に満足できるに違いない。

ホンダ CR-Z αマスターレーベル　主要諸元


●全長×全幅×全高：4075×1740×1395mm
●ホイールベース：2435mm
●車両重量：1140kg＜1170＞
●パワーユニット：直4 SOHC+モーター
●総排気量：1496cc
●最高出力：88kW（120ps）／6600rpm＜87（118）／6600＞
●最大トルク：145Nm（14.8kgm）／4800rpm＜144（14.7）／4800＞
●モーター最高出力：15kW（20ps）／2000rpm
●モーター最大トルク：78Nm（8.0kgm）／1000rpm
●トランスミッション：6速MT＜7速CVT＞
●駆動方式：横置きFF
●燃料・タンク容量：レギュラー・40L
●JC08モード燃費：19.4km／L＜21.6＞
●タイヤサイズ：205／45R17
●当時の車両価格（税込）：263万円

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Comments

[Morizo]

初期型のZF-1を通勤用で乗っています．
マイナーチェンジ前のモデルですが、通勤はエコモードで渋滞ありでも16km/Lの低燃費で、合流や登坂ではスポーツモードでストレスなく走ってくれます．かったるい、遅いなどの意見はきっと一分のスポーツ走行される方からのもので、普通にドライブ楽しみたいくらいの一般の方には必要十分のスペックだと思います．ただ後部座席は狭いので二人乗りと割り切る必要あります。