2代目が登場 やっぱり斬新!
トヨタが、2代目となる「C-HR」を初公開した。日本でも人気を得たコンパクトSUVが、初めてのフルモデルチェンジを受けた形だ。
【画像】「EV版」もあった! 初代トヨタC-HRの変遷を振り返る【新型の外観/内装も】 全98枚
今回の発表はトヨタ欧州法人が行ったもので、「新型は、欧州のお客様を念頭において欧州で企画され、バッテリーユニットの組み立てを含めて、欧州のみで生産されます」としているから、日本ではなくヨーロッパで公開されることになった。
外観は、初代の斬新さとクーペSUVのフォルムを引き継ぎながらも、エアロダイナミクスを追求し、これまでより洗練された印象を受ける。
新型では、100以上の部品に再生プラスチックが採用され、従来型に比べてその使用率が2倍に。また、シート表皮には再生ペットボトルから生成された新しいファブリック素材を用いたというから、サステナビリティの面でも1歩進んだモデルと言えるだろう。
そして、新型には下記の3種類のパワートレインが用意され、すべてが電動モデルとなる。
・1.8Lハイブリッド
・2Lハイブリッド
・2Lプラグインハイブリッド(PHEV)
このうち、2Lハイブリッド車には、インテリジェント全輪駆動もオプション設定されている。
なお、プラグインハイブリッドは、「競争力のあるEV航続可能距離を実現し、“ワンペダル走行”を体験できる3段階の回生ブースト機能により、市街地での渋滞も快適に過ごすことができます」と紹介されている。
新型の開発は、最高のダイナミクス性能とバランスを実現するために、トヨタの欧州テストセンター内のサーキットや、欧州各地のあらゆる路面・天候下で走行するなど、トヨタのマスタードライバーチームによる徹底的な検証が行われたという。
環境性能と斬新な見た目、そしてサーキット走行もこなせる独特なSUV。そんなC-HRについて、ここでは日本でも人気を得た初代の歩みを振り返ろう。
2016年 初代は世界戦略車
初代C-HRのルーツは、2014年のパリ・モーターショーで世界初公開された「C-HRコンセプト」だ。
新世代コンパクト・クロスオーバーのデザインスタディとして登場し、コンパクトなキャビンと多面体のようなボディ下部の組み合わせによる斬新なスタイリングは大いに注目を集めた。
市販モデルの初代C-HRは、2016年のジュネーブ・ショーでワールドプレミアされた。そのスタイルは、2年前に発表された「C-HRコンセプト」をほぼ踏襲したもの。
ちなみに、C-HRという車名は「コンパクト・ハッチ・ライダー」「クーペ・ハイ・ライダー」「クロス・ハッチ・ランナバウト」などの頭文字をかけ合わせた造語と言われている。
C-HRはトヨタの次世代世界戦略車として、世界100以上の国・地域で販売されることになる。そのため、発売前には世界中の公道やサーキットなどで運動性能のテストが行われ、2016年5月に開催されたニュルブルクリンク24時間レースにはプロトタイプのC-HRで参戦しているほどだった。
日本でもSUV販売ナンバー1に
C-HRの日本仕様は、2016年末に発売。
4代目プリウスに次いでTNGAプラットフォームを採用し、パワートレインは2WD(FF)車には1.8L+モーターのハイブリッド、4WD車には1.2Lターボを搭載した。
SUVとしては斬新なスタイリングは賛否両論だったが、コンサバな日本市場でも予想以上に人気を集めている。
とりわけ2017年4月には、SUVとして初めて、自販連の車名別月間販売台数で第1位となり、2017年の通年(1月~12月)でも11.7万台を登録して第1位を獲得した。
初代C-HRはヨーロッパをはじめ世界各国でも2017年から発売され、世界的にも人気を集めることになる。
とくにヨーロッパでは、2021年でもヤリスやカローラに次ぐ人気を誇るロングセラーとなっている。
2019年 GRスポーツの登場
2019年10月、C-HRは初のマイナーチェンジを受ける。
フロントの灯火類やエアインテークなどがアップデートされ、ボディカラーや内装色の変更など、小規模な内容にとどまっている。
だが、このマイナーチェンジでもっとも注目されたのは、トヨタGAZOOレーシングが手がける「GRスポーツ」が設定されたことだ。
外観はフロントのバンパースポイラーやアンダーグリル、アンダーガードなどを専用デザインとし、タイヤサイズは19インチにアップ。アルミホイールも専用デザインとして迫力を高めた。インテリアもブラック基調のみで専用の本革巻きステアリングホイールや専用スポーツシート、アルミペダルなどを装備。そして「GR」のエンブレムが内外装のあちこちに誇らしげに付けられている。
パワートレインこそノーマルのC-HRと変わらないものの、サスペンションのスプリングやダンパー、電動パワーステのセッティングなどは専用のチューニングが施され、フロア下部にはセンターブレースも追加しボディ剛性をアップ。
このGRスポーツの登場で、C-HRはほかのコンパクト・クロスオーバーとは違う、スポーツドライビングも楽しめるモデルとして、その独自のポジションを固めていった。
2020年 EV版が中国市場に
また、2019年にはC-HRのピュアEV(電気自動車)バージョンも発表されている。
これは、翌2020年に中国で発売されたモデルで、トヨタブランドとして中国市場に初投入されるEVとなった。
フロントフェイスは輪郭を強調した意匠が与えられ、ノーズのトヨタマークの傍らには「EV」のバッジを配し、Aピラー付け根のELECTRICのエンブレムがアクセントとなっている。
システム的には「レクサスUX300e」とほぼ同じ、150kW/300Nmを発生する電気モーターを搭載し、航続可能距離は約400km。
だが、残念ながら日本では販売されることはなかった。
小型SUV人気 ライバルは身内?
初代C-HRが発売されて以来、早くも7年近い月日が流れた。その間に、国産車・輸入車とも、多くのコンパクトSUVが日本市場に投入されている。
C-HRのメーカーであるトヨタにおいても、2019年には「ライズ」、2020年には「ヤリス・クロス」、そして2021年には「カローラ・クロス」と、近いクラスのSUVが次々と登場し、トヨタ内でのカニバリズムが起きてきたことも否めない。
C-HRの最大のセールスポイントは、その“斬新なスタイリング”とGRスポーツに代表されるような“走りの良さ”であった。
しかし、それがウイークポイントにもなっていったとも言える。その独特のスタイルゆえ、ライバルに比べるとリアシートはヘッド&フットスペースとも不足しており、ラゲッジスペースもRVとして考えれば広くはない。また、クロスオーバーを求めるユーザーは、必ずしもスポーティな走りには期待していない。
それゆえ、RV本来の使い方を求めるユーザーは正統派のクロスオーバーSUVへと移っていき、C-HRの人気も下火へと向かっていく。つまり、トヨタにおけるヤリス・クロスの人気は、C-HRの不人気の裏返しでもあるのだ。
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