若者はマンガ、おじさんは旧車?
レトロモビルは1974年、パリのバスティーユ駅舎跡で催された部品交換会が始まりである。76年からは、パリ・モーターショーの舞台でもあるポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場で行われるようになった。近年は3パビリオンを占有。出展台数は千台超えを誇る。2024年は550の出展社・団体が参加した。今回も連日朝、開場時刻の10時を待つ多くのファンがみられた。ちなみに2018年までは「Paris Manga」と題する日本ポップカルチャー・ショーと開催時期が重なっていた。そのためメッセ内で、コスプレした若者たちはそちらへ、おじさんたちはレトロモビルへと、あたかも分水嶺のごとく人の流れができていたものだった。
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アニヴァーサリー続々
さて、第48回を迎えた今回は、シトロエン/プジョーを含むステランティス系がブランドとしての参加を見送った。対照的に元気だったのはルノーで、先駆の精神を誇示すべく、歴代のレコードブレーカー(スピード記録車)4台を展示。さらに1933年に同社が航空機メーカーを買収して誕生した企業による「コードロン-ルノー・ラファールC.460」単発機の複製を中央に置いた。かつて飛行機産業に携わった自動車メーカーは数々あるが、“ルノーの飛行機”はあまり知られていないだけに、それなりの注目度を獲得していた。加えて、「ルノー5エトクトリック・プロトタイプ」の原寸大樹脂製モデルを、同月末のジュネーブ・モーターショーでの実車公開に先駆けて披露した。
外国ブランドでは、フォルクスワーゲン(VW)系3ブランドが積極的なブースを展開していた。VWブランドは、が初代「ゴルフ」から数えて50周年を、ポルシェは74年パリ・モーターショーで展示した911ターボから数えて同じく半世紀を祝った。
もうひとつ、外国勢で大きなブースを占めていたのは、2007年以来中国・上海汽車集団(SAIC)の1ブランドである「MG」で、その100年をアピールした。現地法人のSAICフランスは2024年末に欧州投入予定の「サイバースター」を歴代車種、とくにオープンモデルやスポーツモデルと並べることで、歴史的系譜を強調していた。
モータースポーツ系では、ダカール・ラリーの歴代参加車が特集された。初日の会場にはWRCで前人未到の9連覇を達成したラリー・ドライバー、セバスティアン・ローブがフランス自動車競技連盟のスタンドに登場。続く2日目には、伝説のドライバー、ジャッキー・イクスが車両展示ブースにやってきてトークを繰り広げた。
「シトロエンらしくないシトロエン」のオーナー
前述のおじさんたちについて再び触れれば、メッセ周辺でも興奮覚めやらないのか、愛好する自動車ブランドや、レーシングチームのロゴ入りワッペンを貼ったブルゾンでうろうろしている。パリではディズニーランド・パリでの感動が忘れられない人たちが、ミッキーマウスのカチューシャをしたまま地下鉄に乗っているが、その親父版だ。
それはともかく、今回メーカーの支援が得られず自主参加した「クラブ・シトロエン・フランス」を訪れたときだ。1台のモデルに筆者の目は釘付けになった。1981年「LNA“エレン”」である。このクルマ、本来はプジョーとして開発され、1972年に「プジョー104」として発売された。74年、そのプジョーの傘下にシトロエンが収まる。そして同ブランドから76年に発売されたのがシトロエンLN、のちのLNAであった。両ブランドにとって、初の姉妹車であった。LN/LNAのベースとなったプジョー104はデザインこそピニンファリーナのパオロ・マルティンによるものだった。だが、基本的機構は、プジョー譲りの保守的なものだった。そのため、たとえシトロエン「2CV」のエンジンを搭載した仕様があっても、アヴァンギャルドな歴代車種に惹かれてきたシトロエン愛好家にとっては失望以外の何者でもなかった。プジョーの軍門に下った屈辱の象徴だったのだ。
ゆえに、従来レトロモビルでも積極的に取り上げられることは稀だった。そうしたなか、今回なぜLNAが? オーナーを探すと、ひとりの男性が現れた。ウッディー・シェットカットさんは、愛車よりも10年近く若い1992年生まれ。2024年で32歳だ。LNAは約15年車庫に眠っていた個体で、1年半前に発見したという。「旧オーナーと最初に交渉したときは、価格で折りあいませんでした」と振り返る。しかし最終的に、彼の情熱が伝わり、譲ってもらえたという。
プジョーとは違うのだよ
「人々からあまり評価されなかったモデルだからこそ、好きになってしまうんです」と自己分析するウッディーさん。「コンパクトなので運転が簡単。かつカート風の操縦感覚もいいんです」とLNAの美点を語る。筆者が思うに、いずれも今日の自動車では、なかなか得られないポイントだ。加えて、LNAは、86年まで10年にわたって生産された。シトロエン史のなかで、旧態化した2CVやディアーヌを立派に補完したのである。室内を覗けば、ステアリングは当時のシトロエンにおいて定番だった1本スポークである。シートには、カフェで見かけるような藤張り椅子を模した柄がプリントされている。「プジョー104にはない意匠です」とウッディーさんは解説する。たとえ吸収されてもシトロエンはパリ生まれ。東部発祥のプジョーとは違うのだ、という往年のデザイナーの心意気が感じられる。
不人気車でも、古いクルマには、たびたび発見がある。彼のような人物によって、約半世紀続くこのイベントが、まだまだ盛り上がってくれることを望む。
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