クリーンディーゼルが日本に上陸して15年。マツダがSKYACTIV-Dを開発して9年。
煙モクモクーとか振動ガラガラーとか、いまだ完全には世間の偏見がぬぐえないディーゼルエンジンだが、実際は燃費がよくて力持ち。実用性能ならピカイチ!
大胆な挑戦と豪快な失敗こそマツダの魅力 今こそ絶賛したいマツダ車たち
しかしそんなディーゼルエンジン、将来は決して明るくない。というよりほとんどお先真っ暗だ。内燃エンジンそのものが近い将来消える消えると言われているけれど、ガソリンエンジンより先に乗用ディーゼルが消えるのはほぼ間違いない。
そんな訳で今回はディーゼルにハマって10数年の自動車評論家お二人を軸に、ディーゼルの魅力をたっぷりとご紹介。自動車ディーゼルへの愛を聞いてくれ!
※本稿は2021年6月のものです
文/鈴木直也、清水草一 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年7月26日号
【画像ギャラリー】まだ買える! 国産車&輸入車 軽油限定ディーゼル車カタログ
■マツダ フィアット ランチアデルタ BMW… 自動車評論家2人が語る「ディーゼル」遍歴と魅力
鈴木直也と清水草一。ともにディーゼルを日常の足として愛する者である。その2名が、ディーゼルの歴史を踏まえつつ、現代のクリーンディーゼルターボへの愛を炸裂させた!
* * *
清水 直也さん、ディーゼル何台目ですか?
鈴木 3台連続ですよ!
清水 僕も通算3台目です! 一度ディーゼルを知ったら、やめられない!
鈴木 あのグググッとくる感じ、シビレるよね。
清水 あの加速でこの燃費だもん。でも、昔はディーゼルって大っ嫌いだったんです。
鈴木 僕もですよ! 最初に体験したディーゼルって、いすゞフローリアンだし。
清水 乗ったことないけど(笑)、遅かったんでしょうねぇ~。
鈴木 ガラガラ言うだけで遅いのなんの! アクセル踏んでから1秒後にようやくガ~~~~~って言いながらノロノロ加速するんだけど、3000回転でもう頭打ち。
清水 昔のディーゼルって、黒煙も凄かったしね……。
鈴木 僕はね、石原慎太郎さんは偉かったと思ってるんですよ。あの人がススの入ったペットボトルを振ったおかげで、今のクリーンディーゼルがあるんだから。
清水 同感ですよ! あの頃の日本のディーゼルって、黒煙モクモクで最悪でした。あれのせいでオープンカーをオープンにできなかったし、完全に敵でしたよ! 石原さんが東京都でディーゼル規制を始めたことで、国のディーゼル規制が強化されて、ようやくトラックの黒煙が薄まった頃、ヨーロッパからクリーンディーゼルがやってきた。
「グググッとくる感じ、シビレるよね!」鈴木直也
鈴木 2002年にボッシュが日本で、欧州製クリーンディーゼルの大試乗会をやったんですよ。ベンツのSクラスとかBMW7シリーズのディーゼルに乗って、目からウロコだったなぁ。
清水 僕は、2006年に正規導入されたベンツE320CDIで衝撃を受けたクチです。あのトルクでこの燃費! これ以上のロングツアラーはない! って。でも高くてねぇ。その後もずーっと狙ってたんだけど、結局最初に買ったのは2013年。トルクがあるんだから小排気量でいいだろうって、フィアット製1.2Lディーゼルを選んだのは失敗だった。排気量が小さすぎてタービンがなかなか回らず遅い遅い。その後1.6Lディーゼルのデルタに乗り換えて、これには納得でした。
2006年導入の初クリーンディーゼル車、ベンツのE320CDIは日本のクルマ界に衝撃を与えた
鈴木 僕はデミオの1.5ディーゼルが出てすぐ、あのトルクにシビレて契約したんですよ。次のCX-3は純粋にデザインに惚れたからで、エンジンはデミオと同じだった。そして今のBMW118dは2L。これは文句なくイイ! やっぱり適正排気量ってあるんだなって思う。
清水 僕も今のBMW320dには感動しっぱなしですよ。エンジンが大きいほうが加速はいいけど、燃費は1.2や1.6と同じで、どれもリッター18kmくらい。なら2Lがいいよね!
鈴木 マツダの1.5ディーゼルはシングルターボで、下のトルクの薄さをトルコンでカバーしてたけど、2Lに乗り換えて、ようやく本当のディーゼルの魅力にたどり着いた気がするな。
清水 加えて日本では軽油が安い! 軽油でリッター18km走れば、燃料代はガソリンハイブリッドのリッター24kmとイーブンでしょ。ワンタンクで1000km走れるし、どこまでも走って行けそうな気分ですよ!
鈴木 実は僕も、ディーゼルにしてからロングドライブが楽しくなった。やっぱりトルクがあるのって、ラクで気持ちいいんだよね!
清水 そうそう、ディーゼル最高(笑)!
「あの加速でこの燃費、やめられませんよ!」清水草一
●鈴木直也のディーゼル遍歴
10年近く初代インサイトに乗った後、出会ったのはマツダのディーゼル。それがぼくのクルマ人生を変えましたね。
・デミオ 1.5XD…2014年6月に試乗して、その場で予約。生まれて初めてのAT車だったけど、マッチング最高だった
マツダ デミオ 1.5XD
・CX-3 1.5XD…デザインに惚れてデミオから乗り換え。15Lとは思えないトルクと平均18km/Lの燃費に満足
マツダ CX-3 1.5XD
・BMW 118d(先代)…2Lのこれに乗ると今までの1.5ディーゼルが「まあまあ程度」に感じてしまう。とにかく最高!
BMW 118d(先代)
●清水草一のディーゼル遍歴
2006年以来、ディーゼルに恋い焦がれるも、最初の購入はその7年後。そして4年前、ようやく真打に出会いました。
・フィアットクーボ1.2ディーゼル…並行輸入された中古車を購入するも出足の遅さとセミATのマッチングに辟易し、半年で手放す。
フィアットクーボ1.2ディーゼル
・ランチアデルタ1.6ディーゼル…2015年、再び並行輸入ディーゼルを購入。1.6L+セミATには満足するも、直進安定性悪く手放す。
ランチアデルタ1.6ディーゼル
・BMW 320d(先代)…ようやくたどり着いた輸入ディーゼルの超王道・BMW。3年落ちを235万円で購入し大満足!
BMW 320d(先代)
■鈴木氏・清水氏スイセン 現行ディーゼル名機ベスト3
●鈴木直也スイセン
1位はベンツの直6ディーゼル(OM654)ですね。あのトルクと静粛性、そして滑らかな回転フィールにはとろけます。それを搭載する車種から、最もお似合いと思えるG400dを選びました。1251万円は決して安くないけど(笑)、その価値はあるでしょう。
2位 マツダのディーゼルは、本当は2.2Lがいいんだけど、庶民の味方という意味では、CX-30の1.8XD。スタイリッシュだし、2WDなら300万円ちょいという価格が魅力です。
3位 BMWは自分も乗ってるので、やっぱしお薦め。贅沢は言いません。FFになった118d(2.0L)でけっこうです。385万円からなのでお値段も手頃。
鈴木直也のスイセン1位:メルセデスベンツG400d…3L、直6は回転フィールも絶品。Sクラスはじめ多くのメルセデス大型モデルに搭載されるが、真打はコレ!
鈴木直也のスイセン2位:マツダCX-30…1.8LのSKYACTIV-Dを搭載。デザインよし、エンジンもマイチェンでアップデートされた。価格も手頃!
鈴木直也のスイセン3位:BMW118d…FFになってもBMW2Lディーゼルのよさは変わらない。音や振動はさらに低減され、快適でトルクフル!
●清水草一スイセン
私の1位はシトロエン・ベルランゴ。さすがおフランスとしか言いようのない、猛烈にオシャレなファミリーカーで、1.5Lディーゼルが超ドンピシャ! ふんわりした乗り味をトルクたっぷりのディーゼルで走らせるのは超カイカン! 317万円という価格は超お買い得!
2位はマツダのCX-5。やっぱり1.5や1.8と比べると、2.2Lのトルクはステージが違う。デザインもステキだし、値段だって299万円からだし。
3位、私の愛車の後継モデル、BMWの現行320dですね。先代型より音が静かになって、もはやガソリン車との区別が真剣に難しくなった。ADASも進化してるし、真剣に欲しいです。
清水草一スイセン1位:シトロエンベルランゴ…グループPSAの1.5ディーゼルは2Lに遜色ない実用トルクを発揮。オシャレなボディを引っ張るのに最適!
清水草一スイセン2位:マツダCX-5…日本人だもの、マツダのSKYACTIV-Dは外せません。やっぱり2.2Lがイイ! デザインも秀逸!
清水草一スイセン3位:BMW320d…150ps版でも充分だけど、190psあればなおうれしいBMWの2Lディーゼル。見栄えもキマる!
■ディーゼルの「明日はどっちだ?」
●鈴木直也の意見
ディーゼルほど世間様からいじめ抜かれた内燃機関はない!
やれ、ガラガラ音がウルサイとか、馬力がないとか、黒煙モクモクとか、NOX出しまくりとか、生まれてこのかた文句言われっぱなし。
対談でも語られてるけど、日本では石原都知事がペットボトルに入ったススをぶちまけて規制強化を主張したことで、存続を危ぶまれる瀬戸際すらあった。
しかし、それでもディーゼルは生き残ってきた。
ターボや高圧コモンレール直噴で馬力とドライバビリティを改善し、パティキュレートフィルターや尿素SCRで排ガスをクリーン化。現代のクリーンディーゼルは、トヨタハイブリッド並みの燃費効率と優れたドライバビリティを両立させている。
これほどまでの手間暇をかけてディーゼルを改良してきたのは、そのエネルギー効率の高さに魅力があるから。
また、原油を100L精製すればガソリンが約25L、軽油が約20L、勝手に出てきてしまうわけで、この軽油を活用するにはディーゼルが不可欠だからなのだ。
だから、今度のカーボンニュートラルを理由とした「イジメ」も、ディーゼルはなんとか乗り切ってくれると信じている。
原油の精製の際必ず生み出される軽油。その用途としてのディーゼルに望みを託す直也氏
●清水草一の意見
現在の乗用クリーンディーゼルは、ガソリンエンジンよりも先に、この世から消えるだろう。理由はディーゼルの本場たるヨーロッパでの需要の急減にある。
需要が減っていくものに、大きな開発コストはかけられない。となれば、いずれ見捨てられ、消えていくことになるでしょう。
現在はまだ欧州で3割のシェアがあるけれど、排ガス規制の強化によって、ドライバビリティは徐々に悪化の方向にある。
体感性能としては、不正ソフトを積んでいたVWのディーゼルが頂点だった。イタリアでレンタカーで乗ったのですが、あれは本当にメチャメチャよかった。
2年前、ついに日本にもVWのディーゼルが正規導入されたけど、ドライバビリティの悪化にビックリ。不正ソフトってものすごい力があったんだね……。
つまり、5年前から現在あたりまでのディーゼルが、史上最高のディーゼルエンジンと言えるのではないか。クルマ好きなら、今こそそれを手に入れるべきだ! ディーゼルエンジンは丈夫だから、10年、20年乗れるはず! 地の果てまで走り尽くして燃え尽きれば悔いはない!
20年後、「昔のディーゼルってスゲエ!」と感嘆されるかもしれないし。ビバ! ディーゼル。
ガソリンエンジンよりも先にこの世から消えるだろうと予測する清水氏。未来への2氏の展望は割れた
【番外コラム01】「コスパ優先!」いま買えるディーゼルモデル 中古車部門
鈴木直也氏曰く、「ディーゼルは新しいほどイイ」。
確かにそれは真実だが、価格と見比べれば、一世代前のディーゼル こそコスパ最高! というのもまた真実ではなかろうか。なにしろ新車価格の3分の1くらいで買えるんだから!
で、1位はアクセラスポーツの2.2XDだ。このサイズに2.2Lというゼイタクが、100万円以下から手に入るのはコスパ最高!2016年のマイチェン以降のGベクタリング付きも、150万円で充分イケる。
2位は、愛車でもあるBMWの先代320dだ。大満足の4年間を過ごさせていただきました。4年前、3年落ちを235万円で買ったけど、今なら5万km程度のタマが120万円! メッチャ安くてエリート感満点!
そして3位は、憧れのベンツS300h。あの堂々たるSクラスを、リッター20km走らせてみたい! 300万円台からイケますぜ。
(TEXT/清水草一)
アクセラスポーツ2.2XD…コンパクトなボディに2.2Lディーゼルを積めば、それはもう間違いなくトルク爆弾! それが100万円は安い!
BMW320d(先代)…誰もが一目置くBMW3シリーズ、燃費抜群の2Lディーゼルが100万円ちょいから買える! 超お買い得だぜ!
メルセデスベンツS300h(先代)…究極の燃費兵器・ディーゼルハイブリッドのS300hが300万円台! 史上最も節約できるSクラス
【番外コラム02】「かつて萌えた!」昔の名機部門
過去のディーゼル名機と言えば、まずは初代ゴルフGTDでしょう。はじめて「これなら乗ってもいいかも?」と思えた乗用ディーゼルでした。
2代目シャレードの1Lディーゼル、通称「ロックンディーゼル」も個性的だった。ゴーゴーいって走らなかったけど、面白かったような記憶があります。
5代目カペラに搭載されたPWS(プレッシャーウェーブスーパーチャージャー)ディーゼル。何だかよくわからないメカ、過給なのかNAなのかわからないドライバビリティ。不思議な乗り味でした。
(TEXT/清水草一)
初代ゴルフGTD…モデル末期の1983年、少数が正規輸入され、エンスー系自動車誌で絶賛された。1.6Lディーゼルターボ搭載
5代目カペラ…それまでのディーゼルの遅さをスーパーチャージャーで補った革新的ディーゼルながら、黒煙モクモクは相変わらずだった
シャレードディーゼルターボ…3気筒1Lディーゼルを搭載。振動の強さを逆手に取り「すごいビートだぜ! ロックンディーゼル」と謳った
【画像ギャラリー】まだ買える! 国産車&輸入車 軽油限定ディーゼル車カタログ
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大型トラックが電動化やガソリンに変わるのは当面先の話かな。