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ディーラーマンは自社扱い車しか乗れない? 補助も制約も大きい日本の販売店事情

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ディーラーマンは自社扱い車しか乗れない? 補助も制約も大きい日本の販売店事情

 自動車保険(任意)の一部負担などが行われることも

 かつては新車ディーラーへ入社しようと、“就活”していた学生のほとんどはクルマ好きであった。そしてどこへ入社するかという選択肢で大きな部分は、「自分が乗りたいクルマを売っている会社」というものであった。そのため、たまに同じ販売会社へ就活している学生が集められると、決まって話題となるのがお互い「どのクルマに乗りたいか」であった。

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 採用側も面接時に自分の会社について説明するときに割と時間を割くのが、“社員購入割引制度”である。モデル末期やライバルとの激しい販売競争下にある車種では、一般のお客として購入したほうが割安なことが多いが、デビューしたての新車などでは、社員購入割引制度では、たとえば車両価格のうち100万円までから何%、100万円を超えた分に対して何%といった感じで社員購入割引率が適用になるので、社員購入割引制度を使ったほうが安く買えることが多いとのことである。

 さらに通勤や仕事でも使うので、自動車保険(任意)の一部負担などが行われるのも一般的と聞いている。

 ベテランのディーラー関係者が“遠い昔のお話”として、バブル経済のころに入社したときの思い出を語ってくれた。

「当時は勤務先が契約しているガソリンスタンドの給油カードを渡されて、あとは入れ放題でした。そのため休日の前の晩に満タンにして、休み明けの朝に空の燃料タンクにガソリンを満タンにして出社していました。月末に辻褄合わせをしておけば黙認されていました。自腹でガソリンを給油したことはなかったですね」とのことであった。

 いろいろ特典の多い社員購入割引制度だが、著しく燃費の悪い大排気量車や、大型のスポーツクーペなどは乗ってはいけないなど制約を決めているディーラーもあるようだ。

 現役のセールスマンは、「基本的には自分たちの好みというよりは、売れ筋モデルを選んでマイカーにしますね。日常的に使っているからこそ気がつく良い部分のご紹介などもできますので、商談中のお客様に『自分も乗っていますよ』というのは、セールストークとしてお客様も安心感を持っていただけるようなので、かなりの”殺し文句”になります。逆に『営業さんは何に乗っているの?』とお客様から探られることもあります」とのことであった。

 ただし、購入時の費用や維持費の一部負担を手厚くする半面、改造は当然NGだし、車内にぬいぐるみなどプライベートなものの持ち込みを禁止しているディーラーもあるようだ。そして原則初回車検のタイミングまでで代替えするように決まっているディーラーもあると聞く。

 店頭には試乗車も用意されているが、それに加えてセールスマンのマイカーそれぞれも”デモカー”として使うことを前提として、社員購入割引制度が手厚くなっているとも聞いたことがある。

 購入や維持の面でのメリットはあるが、やはり“制約”的な部分も目立ってしまうので、扱い車のなかから軽自動車やコンパクトカーなど、費用負担の少ない扱いクルマを仕事用に持ちながら、他メーカー車や輸入車を完全なプライベートカーとして複数保有するセールスマンも当然存在する。

 業界事情通氏は「単純に扱い車というだけでもNGとなるようです。扱い車であっても別資本の販売会社で購入した家族の車両などを使っていたら、早く自社で新車を購入するようにプレッシャーをかけられたという話を聞いたことがあります」とのことである。

 日本では勤務先の製品を進んで購入して使用することは当たり前のように思われているが、“所変われば…”ではないが、海外ではまた認識が大きく変わるようだ。

 以前南カリフォルニアにある日系プレミアムブランドディーラーを取材で訪れたことがある。そこの責任者であるゼネラルマネージャーにディーラー施設の案内をしてもらったとき、駐車スペースにピカピカのBMW7シリーズが置いてあったのだが、それを指さして「最近買ったんだよね、いいクルマだろ」と自慢げに紹介してくれた。

 ほかに話を聞いたセールスマンもほぼ自分たちの扱い車以外のクルマで通勤していた。「なぜ扱い車に乗らないのか?」と聞いたら、「なぜ乗らなければならない?」と逆に質問されてしまった。そして「仕事とプライベートは別なのは当たり前だろう」というようなことを話してくれた。

 そこで「日本では社員購入特典があるが……」と聞くと、「弊社でもありますよ、弊社とメーカーによる購入支援がありますので、一定クラス以下のクルマならば、事実上月々の支払い(ローンやリースが当たり前)負担はゼロになります。そのため受け付けなどで入社してきた若い女性などは喜んで社員購入制度を利用して新車を乗り回していますよ」と答えてくれた。あくまでパーソナリティを重んじるところはじつにアメリカらしいと感じた。

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