数年前に工場を出たように綺麗
text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
【画像】トライアンフTR8 TR4にスピットファイア ライバルMGミジェットも 全84枚
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
今回ご登場願ったトライアンフTR8は、信じられないほど状態が良い。クラシックカーを扱うロバート・ヒューズが、アメリカ・イリノイ州から英国に戻した1台。また走行距離は6400km足らずだという。
通常ならシートの表皮が傷み、クロス類は色褪せし、ペダルはすり減るものだ。しかし、そんな時間経過を感じさせる部分は1つもない。数年前に工場を出たクルマと思わせるほど、綺麗なまま。
タイムカプセルで2021年まで眠っていたかのように、オリジナルのTR8の姿を観察できる。劣化した部品や、アフターマーケットの部品でアップデートされた部分もない。本来のドライビング体験を味わえる。
トライアンフTR8を間近で観察するが、基本的には兄弟モデルの初期のTR7と変わらない。大きなエV8ンジンを搭載する前提で、ボンネットにはパワーバルジが付いている。
ドアを占めると、ボディから大きな音が立つ。初期のクルマにはなかった、剛性の高さを感じさせる。
4気筒エンジンを載せたTR7のほとんどは、英国東部、マージーサイド州のスピーク工場で製造された。常に会社側と労働者との対立に悩まされ、最終的に工場は閉鎖。後に中部のコベントリー・キャンリーへ移された。
当然ながら、解雇通告を受け取っていない労働者が組み立てたクルマの方が、品質は高い。TR8でも同様だ。この状態の良いトライアンフも、それを示している。たくましいV8エンジンが目を覚ますと、さらに良さが際立つ。
先代よりハンドリングでは優れていた
一般道を走り始めると、139psを発生するローバー製の3.5L V8エンジンがTR8に丁度いい。4気筒エンジンよりトルクもパワーも勝り、0-97km/h加速は1秒以上も鋭い。
サスペンションは少々時代遅れながら、TR7は先代のTR6よりハンドリングでは優れていた。同じことが、大排気量のTR8にも当てはまる。
基本的には4気筒のTR7と変わらないものの、スプリングやダンパーなどはV8エンジンのたくましさに合わせて調整を受けている。エンジンルームにあったバッテリーは、バランスを取るためトランクへ移してある。
それでもフロント側が重いことは隠せないようで、強く減速させるとノーズが沈む。コーナーで少し攻め立てると、フロントタイヤがリアタイヤに押されるように、プッシング・アンダーが果てしなく続く。
しかし、ドライビング体験を大きく損なうほどではない。積極的にTR8を操れば、素直で信頼できるクルマだとわかる。ラリーで成功を収めたこともうなずける。
アクセルペダルを踏み続ければ、3.08:1とロングなアスクルレシオのおかげで、217km/hまで快適に加速を続ける。でも限界まで飛ばさず、カーブの続く郊外の道をV8エンジンのサウンドと一緒に楽しむ方が、より充足感は高い。
少なくない長所を備えるTR8だが、1980年代が始まる頃には敗北が見えていた。V8エンジンを載せたTR8が北米に登場したのは、1981年に入ってから。TR7の投入自体も、早いとはいえなかった。
ブランドに大きな打撃を与えたTR7
英国スピーク工場の閉鎖と、労働者との闘争でトライアンフは1年間を失った。その間、注文は保留されたままだった。1980年にロード&トラック誌が新しいTR8を鮮烈に紹介したものの、その2年後にはモデルの終了が報じられた。
トライアンフTR8が消えると聞いて、慌てた人もいたようだ。余分に資金を用意しても、購入する機会は得られなかった。
トライアンフというブランドは、TR7の不評で大きな打撃を受けていた。品質管理がずさんで信頼性は低く、1979年に登場したTR7コンバーチブルも、すぐに姿を消した。
当時のある調査によれば、43%のオーナーが交換部品待ちでクルマを寝かしていると答えたらしい。別のクルマを買おうと考えている人は、42%にも達した。「クルマは好きですが、信頼性のないクルマは好きではない」。とコメントした人もいたという。
10本それぞれの足を1つに束ねていた、巨大なブリティッシュ・レイランド。何曜日に何を決めるかすら合意できず、独自にそれぞれが動き、全体を損ねた。規模での有利性と合理化を求めたが、希望に終わった。
当時のトライアンフを取り巻く環境を考えると、TR8を量産にこぎ着けられたことは注目に値する。クルマ自体にも問題があったことは確かだが、最も悪い影響を与えたのは、ブランドの足を引っ張る外部的な要因だったといえる。
最終章を飾ったたくましいスポーツカー
1979年に保守政党が英国の政権を握ると、1980年代半ばまでに1ポンド1.8ドルから2.4ドルへ上昇。アメリカ市場での利益は縮み、MGは1979年に販売されたクルマの利益を、1台あたり900ポンドも失ったという。
もっともトライアンフが一足先に行動へ移し、数年前にTR8とコンバーチブルを投入していても、為替レートの影響は避けられなかっただろう。
トライアンフTR8ほど、ドライバーを弱点で悩ませるスポーツカーは多くない。しかし時間が過ぎ、当時の記憶が遠くなるほど、パワフルなV8エンジンを搭載したモデルを評価したい気持ちが高まってくる。
トライアンフの最終章を飾った、たくましいオープンスポーツ。TR8はすごく酷くて、すごく良いクルマだ。
トライアンフTR8(1978~1981年/欧州仕様)のスペック
価格:1万2995万ポンド(新車時)/2万ポンド(308万円/現在)以下
生産台数:2715台
全長:4200mm
全幅:1684mm
全高:1267mm
最高速度:222km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:6.0-9.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:1203kg
パワートレイン:V型8気筒3528cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:139ps/5000rpm-150ps/5000rpm
最大トルク:23.1kg-m/3200rpm-24.8kg-m/3200rpm
ギアボックス:5速マニュアル
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