11月19日、ホンダは、新型「N-ONE」を発表した。変わってないようで大きく変わった最新軽自動車とは? 先代N-ONEを保有する今尾直樹がレポートする。
大胆なキープコンセプトはホンダの変化か
「変わってないようで、すごく変わりました。」2020年1月の東京オートサロンでプロトタイプが初公開されて注目を浴びた新型ホンダN-ONEが本日(11月19日)発表、明日発売となる。
8年ぶりの新型は、あえて外見は初代そのまま。でも、中身は2017年登場の現行「N-BOX」用プラットフォームをベースに、一新している。それを端的に示しているのが、冒頭に記した広告のコピーなのである。
それにしても、ホンダが全面改良で先代とここまでそっくりに仕立てるなんてことが過去にあっただろうか。「シビック」と「オデッセイ」、それぞれの第2世代、あとは「アコード」の2代目を入れられるか、という程度しか筆者には思い当たらない。もっとも、日本のメーカーのモデルチェンジでデザインを先代から継承すること自体、珍しいともいえるけれど、ホンダの場合、コンセプトまでガラリと変えるのがホンダ流であり、ホンダの伝統だった。それがホンダのダイナミズムを生んでいた。
ところが、新型N-ONEでは「時代と世代を超えて愛される、タイムレスデザイン。」を、掲げ、ポルシェ「911」とか「ミニ」、あるいはメルセデス・ベンツ「Gクラス」のように、変わらないことで差別化をはかる戦略を採用した。ここに、ホンダの変化を筆者は見る。
初代N-ONEはデザインの源流を「N360」に求めていた。1967年発売のホンダの大ヒット作、N360はイギリスのミニをお手本にしていたとはいえ、半世紀を経たこんにちなお、ひとびとの記憶に残る傑作だ。そういう傑作、アイコンを自社の歴史のなかに持っているほどに、そして、そのアイコンを新たな製品に活用するほどに、日本のメーカーもユーザーも文化的成熟を遂げている。日産「フェアレディZプロトタイプ」や「ホンダe」同様、新型ホンダN-ONEでも、そのように解釈することができるのではあるまいか。
Sho TamuraSho TamuraSho Tamuraデザインを継承した理由
スタイルを変えなかった第1の理由は、オウナー調査の結果、初代N-ONEのデザインの満足度が高かったからだという。軽自動車市場は現在、N-BOXに代表される「軽スーパーハイトワゴン」が主流を占めている。スズキ「ワゴンR」を始祖とする「ハイトワゴン」は縮小傾向にある。そんななかで、初代N-ONEは20代の女性から40~50代の男性まで、幅広い層のひとたちが、「自分らしさを表現したい」と考えて、「自分のために選んでいる」。
Sho Tamura新型N-ONEの開発責任者の宮本渉氏も初代のオウナーで、ご家族は「わが家のN-ONE」に愛称をつけて楽しんでおられる。じつは筆者のウチにもN-ONEが5年ほど住んでおりまして、オウナーであるウチの奥さんは黄色いボディに黒い屋根の2トーンのそれを「プリン号」と命名したのですけれど、そう呼ぶひとはウチにはほかにおらず、もしも年若い娘がいてくれたりしたら話は別でしょうけれど……。
ともかくN-ONEはそのN360にも似た、たぬきのような愛らしいマスクとプロポーションによってオウナーから愛される存在、LOVEの対象になっている。そこがおなじホンダの軽ハイトワゴンでも、「N-WGN」との違いになっており、棲み分けのためにも、N-ONEがN-ONEの居場所を守り続けるためにも、初代デザインは継承されねばならなかった。
「N360とはなんぞや」にまでさかのぼり、N360を徹底的に研究しようと、ホンダのコレクションホールから借りてきたり、開発者にインタビューしたりした。そして、N360で打ち出されたMM(マン・マキシマム/メカ・ミニマル)思想、東名高速開通を控えての高速時代にふさわしい寛ぎと安心、さらに運転の楽しさ、キビキビ感の3つの価値を「タイムレス価値」として、進化させることにしたという。あくまで新型N-ONE開発時のコンセプトということでありましょう。
目玉は6MTの設定か
機構的には、前述したように現行N-BOXをベースにしている。N360を始祖として、2011年発売のN-BOXを振り出しにスタートしたホンダの軽である「Nシリーズ」は、2017年登場の現行N-BOXから第2世代に移行している。
プラットフォームは軽量化と高剛性化がはかられ、7%の減量に成功している。658ccの直列3気筒エンジンはボア×ストロークが64.0×68.2mmから60.0×77.6mmに変更されている。ロング・ストローク化は実用域のトルクと燃費の向上を狙ってものだろう。自然吸気とターボ過給の2種類があり、前者は最高出力58ps /7300rpmと最大トルク65Nm/4800rpmを、後者は64ps/6000rpmと104Nm/2600rpmを発揮する。
トランスミッションの主力であるCVTはN-ONE用のセッティングが施されている。アクセル開度にリニアに反応し、ブレーキの際には自動的にエンジン・ブレーキを併用した減速ができるという。
ちなみに、ウチのプリン号はNAでありまして、ガバチョとアクセルを踏みつけると、最初にガオーッとエンジンが唸り、そのあとで加速が始まる。このCVT特有の違和感の解消をはかっているわけだ。スポーティ・モデルのRSのCVT制御は専用で、レスポンスを向上させているという。
Sho TamuraSho TamuraSho Tamura目玉は、初代同様、ターボ・エンジンのみの設定の「RS」に、かねてより要望が多かった6速マニュアル・トランスミッションを新たに用意したことだ。
ギア・レシオはS660とファイナルを含めて同じ。ただし、S660用がそのまま流用できたかというと、さにあらず。N-ONEはFF、S660はミドシップの後輪駆動という違いがあるため、FF用への改良が必要だった。
FFならNシリーズのN-VANに自然吸気エンジンと6MTの組み合わせがあるけれど、スポーツ・ツアラーに仕立てたいN-ONEには適当ではない。ということで、結局、N-VANのMTの利用はリバース・ギアのみにとどまり、シャフトは新作している。
シフト・フィールにとって重要なのはシフト・ノブの重量で、いろいろ試した結果、理想的なのは「S2000」用だった。そこでS2000用をベースにしたデザインのノブを採用。シフトのブラケットはCR-Vの海外向けの6MT用を流用している。ブラケットのガッチリとした剛性感は、その賜物だ。
このシフトのブラケットがドライバー側に飛び出ていることもあって、運転席まわりはわりとタイトでスポーティ。というのがRSの6MTの運転席に座ってみた筆者の印象だ。ともあれ、爽快な走り、爽快なシフト・フィールとクラッチ・フィールを実現するために、既にある部品を流用しつつ安く抑えた。と開発担当者は胸を張っておられたけれど、軽以外の部品を使っているのだから、いまどき贅沢な話だともいえる。
後席は、初代同様、ホンダ特許の、前席の下に燃料タンクを配置するセンター・タンク方式を採用しているのと、全高が1545mmもある恩恵で、たいへん広々としている。リッターカー・クラスからダウン・サイジングで選んだひとからも驚かれる空間を備えている。
サスペンションでは全モデルに前後スタビライザーを採用し、ダイナミック性能の底上げをはかっている。ウチのプリン号はスタビライザーがないため、高速走行時のスタビリティがあまりよろしくないけれど、これが改善されているのだとしたら大いに好ましい。
Sho TamuraSho TamuraRSといえども、足まわりはガチガチに硬めたものではなく、ロング・ドライブでも快適かつスポーティというところを狙っているという。“スポーツ”を期待しすぎてはいけない。
グレードは、自然吸気エンジン車に「オリジナル」と「プレミアム」、ターボ・エンジン車に「プレミアム・ツアラー」と「RS」の設定がある。「RS」以外は4WDも選べる。
価格は、ベーシックの「オリジナル」の159万9400円から、「プレミアム・ツアラー」の4WDの202万2900円まで。スポーティ仕様の「RS」は、CVTも6速MTも同一価格の199万9800円。エンスーごころを揺さぶる、小さくてスポーティな軽初のFFのターボ+6速MTが200万円以下で手に入るのである。全自動運転レベル3の時代を迎えるいまだからこそ、身体の復権を訴えるものとなるかもしれない。
Sho TamuraSho TamuraSho TamuraSho Tamura文・今尾直樹 写真・田村翔
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みんなのコメント
彼のこだわりではなくGQ JAPANのルールなんですね