現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > クルマと人間の新たな関係を構築するボルボのコンパクトEV「EX30」

ここから本文です

クルマと人間の新たな関係を構築するボルボのコンパクトEV「EX30」

掲載 4
クルマと人間の新たな関係を構築するボルボのコンパクトEV「EX30」

 ボルボの最新EV「EX30」で京都から東京・青山までの500kmを走った。「EX30」はボルボ最小のEVで、SUV各車とは違って、全高はタワー式駐車場の制限となる1550ミリに抑えられている。京都から走り出す時のバッテリー残量は94%。走行可能距離は430kmと表示されていた。どこかで充電する必要があるが、新しい高出力タイプの充電器で行うつもりだ。

ボタンやレバーなどがほとんど見当たらない運転席

ソニー・ホンダモビリティが造ったEV「AFEELA」プロトタイプを見て感じた物足りなさの正体

 運転席に座って、最初に驚かされるのが徹底したミニマルぶり。ボタンやレバーなどがとても少なく、ほとんどの機能はセンターパネルの中の階層に集約されている。ボタン然として眼に入ってくるのはアームレスト上の左右のウインドオープナーぐらい。

他に、ステアリングホイール根本から左右に生えているレバーそれぞれの端に押して操作するボタンが隠されているくらいだ。ハザードボタンですらセンターパネルの左下に反映されている。あとは、ステアリングホイール上のタッチスイッチぐらいだ。おそろしくスッキリとしていて、クルマに乗っている気がしてこない。

 タッチパネルでの操作には、“パネルをいちいち見なければならない”という批判を伴うことがあるが、筆者は音声操作を積極的に活用することを勧める。そのためだけではないが「EX30」に限らず最近のボルボは、グーグルのOSがインストールされているから、PCやスマートフォン、各種家電製品などと連動させれば、さらに音声で確実に操作できる機能が増えていく。音声操作は使えば使うほど、学習効果によって精度が向上してくるのでボルボユーザーは使わない手はないだろう。

機械として優れているか?★★★★ 4.0(★5つが満点)

 運転に関するさまざまな操作を整理整頓することは、安全にもつながる。運転支援機能を有効にする操作方法も、「EX30」は革新的だ。ステアリングホイール右側のシフトレバーで“D”ポジションを選んで走り始めた後、高速道路や自動車専用道で運転支援機能を使い始めたくなったら、そこから同じようにレバーを下に一回短く押し下げるだけでいい。簡単な上に、機能と操作が表裏一体化されているのでわかりやすく、今まで使用に二の足を踏んでいた人でも、これなら間違いようがない。

 何度も書いていることだけれども、運転支援機能はドライバーの負担を確実に軽減するので、疲労を減少させ、安全にも寄与するから一人でも多くの人が使うようになるといい。「EX30」の運転支援機能の内容は、ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスト)とLCAS(レーンチェンジアシスト)。

 ACCの働きは申し分なかったが、LKASとLCASの働きは穏やかなものだった。LKAS機能も、車線からのハミ出しにおいても毎回必ず感知するわけではなかった。さらに、車線内の中央部分をつねに維持させるのではなく、左右への不安定な動きを採ることもしばしばあった。

 ウィンカーを出すと、クルマが前後左右の他車の存在と速度を確認して、安全であるならばステアリングホイールを切って車線変更するLCASも、働き方が不安定なのと作動したとしても効き方がとても穏やかで、自分でステアリングホイールを回しているのかクルマが回しているのかは別し難いこともあった。

 これらのLKASとLCASの効かせ方と安定性の確保は「EX30」の今後の課題の一つだろう。500kmを走る間では、カーナビにも不安定なところがあった。バグなのか、こちらの誤った設定だったのか、停まるつもりのないサービスエリアが目的地に設定され、無視せずに立ち寄るだけ立ち寄ってみたのにもかかわらず案内を終了することなく、その後もずっと戻るように案内が続けられた。

 次のサービスエリアに充電に立ち寄った際に、最終目的地だけを案内するような設定であることを確認したが、結局、青山の「Volvo Studio Tokyo」に到着するまで消えることがなかった。個体差や設定間違いなのかもしれないが、長距離運転でのカーナビの不具合はダメージが大きいことを痛感させられた。

「EX30」の走行可能距離のカタログ値は560km(WLTCモード)。途中の浜松SAで28分間で満充電の80%まで充電し、青山到着時のバッテリー残量は17%、走行可能距離は74kmだった。待たずに充電でき、その速度も速かったのでストレスはなかった。

商品として魅力的か?★★★★★ 5.0(★5つが満点)

「EX30」の内装には、リサイクル素材や再生可能素材がたくさん使われている。シートに張られている革のような生地も、ペットボトルや松のオイルなどをリサイクルした「ノルディコ」という素材が用いられている。アルミに見えるドアハンドルも再生されたアルミから造られ、ドアパネルやダッシュボードなども他の用途に用いられていた樹脂などをリサイクルされたものが使われている。

 少し前のヨーロッパのクルマでもリサイクル素材が使われていたが、それらの多くはダッシュボードの裏側やボディ内部など、顧客が直接に眼にするところには使われていなかった。品質が向上し、見た眼だけではリサクス素材と判別できなくなったこともあって、最近は常にドライバーの視界に入るところや直接手にするところなどにも使われるようになった。

 そして、リサイクル素材だからといって、必ずしもコストが安いというわけでもないという声も聞く。それでも、最近のヨーロッパメーカーは積極的にリサイクル素材や再生可能素材を採用し、それを必ずアピールしてくる。5月にバルセロナで乗った新型「MINI COOPER」でも同じことが起きていた。そのバルセロナとミュンヘンで泊まったそれぞれ別のホテルのバスルームに備え付けられていた歯ブラシとカミソリの柄が、ひとつは木製でもうひとつは再生プラスチック製だった。

 たまたまのことだけれども、クルマだけではなく、歯ブラシとカミソリという日用品でもリサイクルが行われている実例に触れた。ヨーロッパでは資源を有効に活用することが広い範囲で行われ、その勢いが強いことを実感させられた。これはもう、ポーズや宣伝のためではない。大きな潮流に触れた思いがした。

「EX30」では、そうした世の中の新しい傾向が具体化されている。運転支援機能に関しても、ミニマルなドライバーインターフェイスと組み合わせることで、運転体験を更新しようとしている。ボルボ自身だけでなく、他の自動車メーカーでは今まで行われなかった画期的なことだ。

「EX30」は、デジタルネイティブや新しモノ好きたちの好奇心を大いに刺激している。表層のデザインだけでなく、運転中の人間とクルマの関係性をも刷新する新しさを備えているところに、ぜひ注目してみてほしい。

■関連情報
https://www.volvocars.com/jp/cars/ex30-electric/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

スバルのAWD車史上最高の燃費性能が加わった「クロストレック ストロングハイブリッドモデル」に死角はあるか?
スバルのAWD車史上最高の燃費性能が加わった「クロストレック ストロングハイブリッドモデル」に死角はあるか?
@DIME
スズキが発売したスタイリッシュなクーペスタイルSUV「フロンクス」の正体
スズキが発売したスタイリッシュなクーペスタイルSUV「フロンクス」の正体
@DIME
ハイテクなぶん普通の旧車より難しい! NISMOが頑張る「第二世代GT-R」でさえ乗り続けることが難しい時代がきていた
ハイテクなぶん普通の旧車より難しい! NISMOが頑張る「第二世代GT-R」でさえ乗り続けることが難しい時代がきていた
WEB CARTOP
【詳細データテスト】メルセデス・ベンツGクラス オンロードもソツない 燃費と加速には空力の壁あり
【詳細データテスト】メルセデス・ベンツGクラス オンロードもソツない 燃費と加速には空力の壁あり
AUTOCAR JAPAN
【比較試乗】【比較市場】ともに3列シートを擁するラージSUV。コワモテですが、走ると優しいんです♡「キャデラック・エスカレード vs BMW X7」
【比較試乗】【比較市場】ともに3列シートを擁するラージSUV。コワモテですが、走ると優しいんです♡「キャデラック・エスカレード vs BMW X7」
LE VOLANT CARSMEET WEB
スズキがクーペスタイルの新型コンパクトSUV「フロンクス」を発売
スズキがクーペスタイルの新型コンパクトSUV「フロンクス」を発売
@DIME
スバル新型「フォレスター」国内モデルの発表時期が明らかに! 初の本格ハイブリッド搭載で燃費向上も! どんなモデルで登場する?
スバル新型「フォレスター」国内モデルの発表時期が明らかに! 初の本格ハイブリッド搭載で燃費向上も! どんなモデルで登場する?
くるまのニュース
真面目さと耐久性が売り! 新型 スバル・フォレスターへ英国試乗 タッチモニター獲得 強みは不変
真面目さと耐久性が売り! 新型 スバル・フォレスターへ英国試乗 タッチモニター獲得 強みは不変
AUTOCAR JAPAN
もうクルマから降りたくない! 1990年代にオーナーを陶酔させた「唯一無二」のインテリアの国産車7台
もうクルマから降りたくない! 1990年代にオーナーを陶酔させた「唯一無二」のインテリアの国産車7台
WEB CARTOP
【最新モデルNEWS】三菱アウトランダーPHEVが、より上質・快適に大幅リファイン。約20%パワフルになり100km超のEV走行距離を実現。ヤマハと共同開発したオーディオを標準装備する!
【最新モデルNEWS】三菱アウトランダーPHEVが、より上質・快適に大幅リファイン。約20%パワフルになり100km超のEV走行距離を実現。ヤマハと共同開発したオーディオを標準装備する!
カー・アンド・ドライバー
【クルマの通知表】ダイナミックな造形と走り。輸入車イーター、トヨタ・クラウン・スポーツPHEVの光る先進ポイント
【クルマの通知表】ダイナミックな造形と走り。輸入車イーター、トヨタ・クラウン・スポーツPHEVの光る先進ポイント
カー・アンド・ドライバー
2024年版 サーキットを思い切り楽しめる軽量スポーツカー 公道走れるのが「不思議」な高性能車 10選
2024年版 サーキットを思い切り楽しめる軽量スポーツカー 公道走れるのが「不思議」な高性能車 10選
AUTOCAR JAPAN
日本車屈指の色香! マツダRX-7で1500km(1) ロータリーターボでバイオ燃料を燃やす
日本車屈指の色香! マツダRX-7で1500km(1) ロータリーターボでバイオ燃料を燃やす
AUTOCAR JAPAN
7座も選べる人気者! シトロエン・ベルランゴへ試乗 どの席でも広々 優れた操縦性と快適性
7座も選べる人気者! シトロエン・ベルランゴへ試乗 どの席でも広々 優れた操縦性と快適性
AUTOCAR JAPAN
【GT3とツーリングパッケージ同時発表】ポルシェ新型GT3 自然吸気4Lフラット6を継続 多彩なパッケージも
【GT3とツーリングパッケージ同時発表】ポルシェ新型GT3 自然吸気4Lフラット6を継続 多彩なパッケージも
AUTOCAR JAPAN
【電動化フラッグシップ】 新型V12『レヴエルト』にランボルギーニのプライドを見た!
【電動化フラッグシップ】 新型V12『レヴエルト』にランボルギーニのプライドを見た!
AUTOCAR JAPAN
身近な移動がもっと自由に楽しめる! スズキの折り畳み電動モペット『e-PO(イーポ)』に試乗するよ~高梨はづきのきおくきろく。~
身近な移動がもっと自由に楽しめる! スズキの折り畳み電動モペット『e-PO(イーポ)』に試乗するよ~高梨はづきのきおくきろく。~
バイクのニュース
約100万円のトヨタ最新「軽トラック」が凄い! 斬新モデル「エクストラ」は“豪華装備”満載で自家用にも最適!? 歴史ある「超タフ商用車」に反響あり!
約100万円のトヨタ最新「軽トラック」が凄い! 斬新モデル「エクストラ」は“豪華装備”満載で自家用にも最適!? 歴史ある「超タフ商用車」に反響あり!
くるまのニュース

みんなのコメント

4件
  • zoo********
    先日、半日試乗で乗りました。
    乗り味は想像以上に上質で、自宅に充電設備があれば普段使いに最高ですね。
    ただ、流行りを追いすぎて操作がタブレットにしすぎた為に、運転中のブラインドタッチができないのが・・・
    安全が代名詞のボルボらしくないですね。
  • えちごんごん
    ディーラーで点検のついでに試乗しました。とにかく操作系がわかりにくいの一言。メーターも見にくいし普通に乗れるクルマにしてほしいです。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

559.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
EX30の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

559.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村