消費者がクルマに求めるものは時代とともに変わりゆくが、最近はもっぱら経済性と安全性が大きな要素だろう。古くより安全性に力を入れているボルボが、最量販SUVであるXC60の新型を日本にも展開させた。デザインもかつてのボクシ—なボルボのイメージを継承しつつも非常にスタイリッシュになっている。安全性、そして乗り味はいったいどうだったのか? レーシングドライバー松田秀士氏のインプレッションをお届けしよう。そしてベストカーWeb限定で国産車の対抗馬についてもお届けしよう。
文:松田秀士/写真:奥隅圭之、藤井元輔
小さくても刺激はビッグに!! 国内コンパクトホットハッチ頂上決戦
■XC60は走りも安全性も進化した!!
クルマの骨格となるのがプラットフォーム。新型XC60は上位機種の90シリーズと同じプラットフォームを基にしている。SPAと呼ばれるこのプラットフォームは、Aピラー付け根から前輪車軸中央の長さだけがフィックスされていて、それ以外は自由にサイズ変更することができるスケーラブルなものだ。それゆえ、若干小柄なXC60にも適合することが容易なのだ。
また、90シリーズと同じマルチリンクのリアサスペンションには、樹脂製のリーフスプリング(板バネ)が採用される今どきユニークな構造。これによって軽量化と高剛性化を達成していて、コイルスプリング式に対して4.5kg軽減している。フロントシートも90シリーズからキャリーオーバーされていて、座り心地も質感もリッチなもの。インテリアも90シリーズのイメージを踏襲しており、スウェーデンらしくクール。ダッシュパネルに、フェンダー製ギターのボディにも採用されるアッシュウッド材を採用したモデルもラインアップされていて、北欧調のデザインが満載。いわゆる欧州車っぽさがなく自慢できる。
インパネのスイッチ・ボタンの数はポルシェ・マカンの53個に対してXC60はわずか8個。これはタッチ式ディスプレイ(手袋をした状態でも操作可能)の多彩な機能によるところが大きいのだが、直感的に操作ができ、この手のモノとしては使いやすい。今回の試乗会に用意されたモデルは2LターボのT5。今後、ターボ+スーパーチャージャーのT6、PHVのT8、ディーゼルターボのD4がリリース予定だ。
走ってみたフィーリングは、静粛性が高くなったことと、コーナリングでのサスペンションのしっかり感が出たこと。試乗会場となった蓼科高原のワインディングを気持ちよく走れる。好印象だったのはエアサスを採用しない廉価な脚のモデルで、動きが素直だった。ただし、荷物の出し入れには車高調整が可能なエアサスの利便性は大きい。
個人的に興味津々だったのが、前車追従機能のACCと車線内中央維持機能のレーン・キーピング・エイド(LKA)のオートパイロット。一般道でも車線の読み込みが早く、高速道では安定して追従できた。ただし、ブレーキを踏んだ瞬間にACCだけでなくLKAもキャンセルされる点はちょっともの足りない。衝突回避支援機能と対向車線衝突回避支援機能が新たに追加され、ボルボ社の安全に対する方向性は大いに評価できる。
XC60の走りも安全性能も魅力大。ちなみに日本カーオブザイヤーの10ベストに残っている1台だ
■XC60に対抗できる国産車はこれだ!!
ここからはベストカーWebの独自企画。XC60が安全性にも富み、走りも上質だということはおわかりいただけただろう。しかし価格はT5モメンタムで599万円、最上級のT8になると884万円となり、いわば高級車である。そこでもう少しお買い得で、安全性も、走りも負けていない国産車を探してみた。
編集担当のベスとアンサーがスバルのレヴォーグSTIだ。安全性についてはご存じのとおり、安全装備のアイサイト(最新のアイサイト・ツーリングアシスト)がつくのだ。このアイサイト・ツーリングアシストは発進から120km/h時まで前車に追従し、アクセルとブレーキのみならず、ステアリング操作もしっかりとアシストしてくれる代物だ。当然ながら従来のアイサイトのように歩行者検知機能などもあり、国産車でもトップクラスをいく安全装備なのだ。この点ではボルボにも匹敵するであろう。
さらに走りに関してはスバルのワークスであるSTIが調律しており、ビルシュタイン製のダンプマチック2ダンパーなどを装備。闇雲にガチガチに固めた脚ではなく、その走りの上質さはかなりポイント高し。エンジンは1.6Lと2Lが用意されるが、2Lモデルを選べば300psのパワーを味わうことも可能だ。XC60 T5インスクリプションが254psだということを考えれば、レヴォーグの走りの痛快さを推し量ることができるだろう。
価格面でいえばレヴォーグSTIの2Lモデルは405万円。ボルボXC60のベースグレードよりは200万円ほどお安い。AWD性能にも定評のあるスバルだけに、これからのスノーシーズンはXC60に対しても好敵手となりそうだ。
レヴォーグSTIはパフォーマンスの向上のみならず上質さも身につけている
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