近年、ナンバープレートの分類番号(地名のとなりに記載)は3桁が主流になり、2桁は少なくなっている。2桁のクルマは、多くが20年以上所有され続けている場合が多い。20年以上もおなじクルマに乗り続ける理由とは? 第6回は“横浜33”のフェラーリ「テスタロッサ」を所有するオーナーをたずねたお話の後編。
ツーリングとの出会いフェラーリ「テスタロッサ」を約32年間所有する池田耕三さん。購入後、約18年間はほとんど愛車に乗らなかった。そのかんの総走行距離は約8000kmだったという。
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【前編はこちら! テスタロッサ購入のエピソードなど】
が、とあるきっかけで、頻繁に乗るようになった。結果、その後の14年間で約3万7000kmも走破したというから、すごい。
「14~15年前、友人から『SuperCar Club Japan』主催のツーリングに誘われたのがきっかけです。オーナーズクラブの類には一切加入していなかったので、人生初のツーリングでした。たしか目的地は千葉の美術館だったと思います。このツーリングが、想像以上に面白くて、すっかりツーリングの虜になってしまったのです」
SuperCar Club Japanとは、(一社)日本スーパーカー協会の協力クラブ。スーパーカー界では有名な須山泰宏さんが代表を務めている。
【2桁ナンバー物語 Vol.1 春日部33のブガッティ EB110 前編/後編】
「YASUさん(須山代表の愛称)と知り合ったことで、世界が大きく変わりましたね。以降、さまざまなツーリングにテスタロッサで参加しました。結果、この14~15年で走行距離は大幅に伸びました。距離が伸びるとともに、友人も増えていきましたね」
友人が増えていくなか、池田さんはほかのスーパーカーにも興味を持ち始めたという。結果、長年購入していなかったスーパーカーを増車することに。
ランボルギーニを購入池田さんは2005年、ランボルギーニ「ガヤルド SE」を購入した。ツートンのボディカラーが特徴の限定250台のうちの1台である。
「ランボルギーニは、迫力あるサウンドに驚きましたね。テスタロッサが静かに感じほどです」
ちなみに池田さんは、愛車をほとんどカスタマイズせず、ノーマルで楽しむ。テスタロッサも、ほぼノーマル。後付けした装備はカーナビゲーションやETCユニットぐらい。足まわりや排気システムは純正のままである。
筆者が、テスタロッサを生で見たのは初めてだった。いったいどんなフェラーリ・サウンドを奏でるのか? と、興味津々だった。エクステリアの印象から、「さぞかし盛大な重低音が鳴り響くのだろう」と思いきや、意外なほどおとなしいサウンドに驚いた。
池田さんも「テスタロッサに比べたら、今のフェラーリ・サウンドは相当派手ですよ」と言う。
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ガヤルドSEに数年乗ったあと、それを下取りに出してフェラーリ「599GTBフィオラノ」を購入。さらに数年後、「599GTBフィオラノ」と、普段乗っていた(当時)レクサス「LS600h」を下取りに出し、ランボルギーニ「アヴェンタドール」を購入する。現在は、テスタロッサ、アヴェンタドール、そしてベントレー「フライングスパー」を所有する。
「ガヤルドも599GTBフィオラノも『これが人生最後のクルマになるのかな……』と、思い、購入しました。が、結局買い換えましたから“最後”にはなりませんでしたね(笑)アヴェンタドールも最後のつもりで購入しましたが、はたしてどうなるか……。今、欲しいクルマですか? とくにありませんね」
現在池田さんは、自ら「土曜日走りましょう会」というツーリングを主催する。会員は約250名。ふだんのツーリングとは別に、毎年5月(神奈川県・宮ヶ瀬湖畔園地)と10~11月(静岡県・富士山 樹空の森)にチャリティイベントもおこなっている。
「地元警察を含む官公庁の理解・協力を得て、スーパーカーの同乗体験会などをおこなっています。収益はすべて、ボクサーの坂本博之さんが設立した『こころの青空基金』に寄付しています。私が、坂本さんのジムに通っていたのが縁で、チャリティイベントを始めました」
池田さんは続けて「さまざまなツーリングに参加していくなかで、“スーパーカーによって社会貢献はなにかできないものか?”と、考え、始めました。『こころの青空基金』は、全国の養護施設にいる子どもたちを支援するため、2000年7月1日に発足した基金です。坂本さん自身が児童養護施設経験者で、その経験を踏まえ、支援されていることに共鳴し、寄付を続けています」と、述べる。
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亡き妻への思いを乗せたテスタロッサガヤルドや599GTBフィオラノを乗り継ぐなか、テスタロッサだけは長年所有し続けた。その理由とは?
「はじめて購入したフェラーリだったから、でしょうか。今まで深い理由はとくにありませんでした。もちろん、気に入っている点はいくつもあります。見た目とは裏腹に乗り心地がよく、そして走行安定性が高く、かつ故障が少ないのは美点です。不満はとくにないですが、強いて言えば、ノンパワーのステアリング ホイールが重い点でしょうか」
池田さんの奥様は、昨年12月2日にお亡くなりになられた。訊くと、奥様は結婚当初、クルマが好きではなかったとのこと。が、テスタロッサの購入後、クルマに興味を持ったという。亡くなる直前は、アルファロメオ「ジュリエッタ」に乗っていたそうだ。
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「妻とよく一緒に乗ったテスタロッサは、思い出がたくさん詰まっていますからね……。手放したくないという気持ちは、より一層強くなりました」
池田さんにとって、テスタロッサはあらゆる思い出が詰まった大切な1台。はじめてのスーパーカー、はじめてのフェラーリ、そしてツーリングの醍醐味を教えてくれたのもテスタロッサ。亡くなられた奥様との思い出もたくさん詰まっている。
「77歳になりますが、いつまでもテスタロッサを運転し続けたいですね。クルマとは別に船も保有しているのですが、ときどき操縦をお願いする大型船の元船長は、88歳にもかかわらず元気なうえ操縦もうまい。『見習わなくては』と、思いますね」
池田さんのテスタロッサに対する熱き思いを、おなじフェラーリ乗りとして「見習わなくては」と、強く思うのであった。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
【2桁ナンバー物語 過去記事】
Vol.1 春日部33のブガッティ EB110 前編/後編
Vol.2 品川35のアルピナB8 4.6 リムジン 前編/後編
Vol.3 練馬34の日産 ステージア 前編/後編
Vol.4八王子33のディーノ246GT 前編/後編
Vol.5三重33のBMWアルピナ 3.0CSL B2S 前編/後編
Vol.6横浜33のフェラーリ テスタロッサ 前編
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