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ラリースポーツを名乗るマッスルカー フォード・タウヌス 20M RS 英・独・南アの合作 前編

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ラリースポーツを名乗るマッスルカー フォード・タウヌス 20M RS 英・独・南アの合作 前編

フォード初のラリースポーツ・モデル

トヨタ・プリウスが発表される以前から、自動車業界では「ハイブリッド」という単語が一般的だった。主要部品が複数の国やメーカーから取り寄せられ、生産されたクルマという意味で。

【画像】南ア生まれのマッスルカー タウヌス 20M RS MST Mk1と1969年の240Z、ルーチェも 全94枚

シャシーやボディ、エンジンが別の大陸から工場へ運ばれてくる、という例も欧米では珍しくなかった。スーパーカーのデ・トマソ・パンテーラや、オープン2シーターのACコブラなどは最たる例といえるだろう。

今回ご紹介するクラシック・フォードは、さらに上をゆくハイブリッドだ。3か国による合作という、より複雑なプロセスを経て生み出されている。

アメリカの巨大自動車メーカー、フォードが欧州大陸へ本腰を入れて進出したのは1967年。欧州フォードが設立され、英国とドイツでモデル・ラインナップの共通化が進み、1971年には英国でもドイツ生産のタウヌスが販売されるようになった。

英国人の多くは、フォードのRS(ラリースポーツ)といえば、ラリーで活躍したエスコート RS 1600がその起源だと考えているはず。ロンドンの東部、アヴレイに拠点を置いていた、アドバンスド・ヴィークル・オペレーションズ(AVO)による活動として。

しかし、それより先に存在していたのが1967年のP6型タウヌス 15M RSだ。タウヌスはドイツ生産の上級モデルで、フォードとして初めてラリースポーツを名乗ったモデルだった。

大きなラリーイベントで活躍したタウヌス

販売で上回っていたオペルに対し、多くの関心を集めるべく設定された、イメージ先行のグレードといえた。実際、多くのドイツ人はフォードの作戦に釣られたようだ。

1968年には、最新版となるP7b型のタウヌス 20M RSの3台がロンドン・シドニー・マラソンラリーに参戦。英国からオーストラリアを目指す、完走するだけでも偉業といわれる過酷なラリーで、見事2台がゴール。1台は7位入賞という好成績を残した。

さらに、20M RSは同年の東アフリカ・サファリラリーにも参戦。ロンドン・シドニーを走破したマシンが上位入賞を果たした。

1970年代に入ってエスコートのRSモデルが人気を集める以前に、タウヌスは大きなラリーイベントで活躍し、「RS」というブランド力を構築したといえる。フォードがアフリカの暑さや悪路、砂埃にも強いことを証明した勝利ともいえた。

この成果を、南アフリカのフォードが見過ごすわけはなかった。現地のフォードは、独自仕様のタウヌスを提供したいと強く希望。南部の東ケープ州ポート・エリザベスにある工場で、1969年からノックダウン生産する契約が結ばれた。

提供されたボディタイプは、クーペにサルーン、ステーションワゴンと多彩。同時期に南アフリカで生産されていたコルチナに並ぶ上級モデルとして、ディーラーへ並んだ。

英国製V6エンジンで右ハンドル

ラリーで優勝したモデルとの直接的な血の繋がりを主張するため、RSモデルもラインナップされている。今回ご紹介するロイ・タウンゼント氏の愛車が、その1台に当たる。

ただし、ドイツで販売されたタウヌス 20M RSとモデル名は同じながら、中身はだいぶ異なる。欧州本土とは逆の左側通行に合わせて、ダッシュボードは英国仕様の右ハンドルのものが組み付けられた。

また、南アフリカでは英国由来のエセックス・ユニットと呼ばれる3.0L V型6気筒エンジンが既に生産されており、ドイツ仕様と同じ2.6L V6ケルン・ユニットは非採用。本家より、大きなエンジンが載ることになった。

現地の趣向に合わせて、見た目は通常のタウヌスから明確に差別化されている。ボンネットにはエアインテークが追加され、ボディサイドのグラフィックは地味なストライプから、より大胆なラインへ変更された。

夏の日差しに、ピリピリ・オレンジと呼ばれる鮮やかな色彩のボディが眩しく輝く。惹き寄せられるようにタウヌスへ近づくと、アメリカ車的な広い車内が目に飛び込んでくる。

このP7b型はP7型のフェイスリフト版で、当時の評論家からはアメリカになびきすぎだと批判する声が挙がった。欧州や英国の人は、アメリカ文化へ憧れを抱いていたことも事実ではあるが。

アメリカンなインテリアとソフトなサス

ダッシュボードは平面的で、クロームメッキされた樹脂パーツが内装を彩る。空間は広く、アメリカ製フォードよろしく、身体を思い切り伸ばすことも難しくない。ボディはワイドで、同時代のモデルより横方向のゆとりも大きい。

センターコンソールには、時計と電流、油圧のメーターがドライバー側に傾けて装備されている。カウルはきれいに成形され、ビニールでコーティングされている。いかにもマッスルカー的だ。観察すると、油圧計にはOELとドイツ語で表記されている。

オーナーのタウンゼントは1度レストアを施しているがが、ビニール張りの内装やフォード・カプリ風のシートなど、インテリアの殆どはオリジナルのままだという。「とても快適なクルマですよ」。と笑顔で説明してくれる。

「ドイツ製のタウヌス RSのシートとは、まるで違います。あのクルマは、クロスメンバーに座っているように居心地が悪いですからね」

確かに当時のフォード車のなかで、ドイツ製タウヌス 20M RSのサスペンションが洗練されているとはいえなかった。フロントがマクファーソンストラット式、リアがリーフスプリングのリジットアクスル式で、細かな凹凸も逐一ドライバーへ伝えた。

南アフリカの例では、ノーマルの20Mよりスプリングは引き締められていたが、まだソフト志向。カーブではボディロールが小さくないものの、乗り心地は快適といっていい。

この続きは後編にて。

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みんなのコメント

3件
  • ♪ビュイックりするほどタウナスで

    の、アレですか?
  • うちの車もラリースポーツ
    ライトにシャッターがついた68カマロRS
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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