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【RAV4大ヒットの裏事情】弟分C-HRを犠牲にして天下を取った新SUV王者の実像

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【RAV4大ヒットの裏事情】弟分C-HRを犠牲にして天下を取った新SUV王者の実像

 SUV新車販売台数ナンバー1は、2014~2016年がホンダヴェゼル、2017年~2018年がトヨタC-HR、2019年はヴェゼルとC-HRの戦いになるかと思われた。

 ところが思わぬ伏兵(といっていいのかわからないが)が現われた。2019年4月10日に発売されたトヨタRAV4である。

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 ほぼC-HRとヴェゼルのワンツー体制が続いていたSUV販売の構図が崩れ、RAV4が2019年5月以降、SUVナンバー1の座に就いているのだ。

 なぜ、SUV群雄割拠のなか、これほどまでにヒット街道を驀進しているのか? RAV4が新SUV王者に就いた理由をモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 

【画像ギャラリー】写真で見るRAV4、C-HR、ヴェゼル、ハリアーの魅力

RAV4が登場1カ月でSUV1位に!

2019年4月10日に日本再登場となったRAV4。全長4600mm、全幅1855mmとC-HRよりひと回り大きいサイズのミドルサイズSUV。まさかこれほど売れるとはトヨタも思っていなかったはず?!

 今はSUVの人気が高いが、そのなかでもSUV新車販売台数1位となるのがRAV4だ。2019年4月10日に発売され、5月から8月までは、1カ月約6000~約8000台を安定的に登録している。小型/普通車の販売ランキング順位も7~10位前後だから、ヴォクシーなどの人気車と同等だ。

 SUVの販売ランキングを振り返ると、小型/普通車の場合、2014~2016年(暦年)はヴェゼルが1位であった。

 2017年は、新たに登場したC-HRが1位になる。1カ月平均の登録台数は約9800台に達した。小型/普通車の販売ランキング順位も、プリウス、アクア、ノートに次ぐ4位であった。

 ところが2018年になると、C-HRの売れ行きは、対前年比でマイナス35%と大幅に減少する。1か月の平均登録台数は約6400台で、小型/普通車の販売ランキングも12位まで下がった。ヴェゼルは14位で1カ月平均が5000台だから、台数格差が急速に縮まった。

2013年12月に発売されたヴェゼル。発売時から堅調な売れ行きをキープし、2018年2月にマイナーチェンジ、2019年1月には1.5Lターボを追加。 2014~2016年の新車販売台数ではSUV販売ナンバー1だった。2019年上半期の販売台数はC-HR越えのSUV首位に躍り出た

2016年12月発売のC-HR。 2017年~2018年の新車販売台数ではSUV販売ナンバー1

 そして2019年1~6月は、C-HRの登録台数が1ヵ月平均で約5400台、ヴェゼルは約5600台だから、C-HRの下降が止まらずヴェゼルを下まわった。このライバル争いの最中に、RAV4が登場して、5月以降はSUVのトップに立っている。

 直近の2019年8月の登録台数を見ると、RAV4が6277台、C-HRは3608台、ヴェゼルは3371台になる。最近はC-HRとヴェゼルは僅差で、月によって順位が入れ替わることが多い。7月はヴェゼルがSUVの2位で、C-HRは3位だった。

 RAV4の販売系列は、トヨタカローラ店とネッツトヨタ店だ(東京地区は全店併売)。4系列のすべてが扱うC-HRに比べると、販売店舗数は60%程度にとどまる。それでもなお、RAV4が好調に売れる背景には、さまざまな理由がある。

2019年8月の販売台数では2位のC-HRに圧倒的な差を付けてSUV1位

RAV4はオフロード指向のSUVだから売れた!

ランクルなど本格派クロカンにおよばないが、オフロード指向に強いところが大ヒットした要因か。写真は購入を検討しているユーザー向けのオフロード試乗会

 好調に売れる理由の筆頭は、RAV4のデザインや機能がオフロードSUVに近いことだ。RAV4は前輪駆動ベースの4WDを備えたSUVだから(前輪駆動の2WDもある)、ランドクルーザーのような後輪駆動ベースの本格的なオフロードSUVとは本質的に異なる。

 しかし最低地上高を190~200mmに高めた直線基調のボディは、オフロードモデルを連想させる。

 2Lノーマルエンジンを搭載した4WDの上級グレードには、後輪左右の駆動力配分を積極的に変化させるダイナミックトルクベクタリングAWDも装着され、悪路から舗装路まで走行安定性を向上させた。

 直線基調のボディは荷室も広く、荷室のデッキボードを裏返しにすると表面が樹脂仕上げになるから、汚れた荷物を積んだ時でも拭き取りやすい。

 このようなオフロード指向がRAV4の人気を押し上げた。ランドクルーザーのような後輪駆動ベースの4WDを備えた本格オフロードSUVは、走破力が高くて外観もカッコイイが、小回り性能が悪くボディは重い。床が高いので乗り降りもしにくく、価格は高い。

 そこで初代RAV4が1994年に発売されてからは、前輪駆動のシティ派SUVが増えて、オフロード派は車種数を減らした。シティ派でも雪道なら十分に走破できるから、日本国内の一般的な使用条件なら、走破力に不満を感じる場面はほとんどない。

 それでもなお、SUVには悪路を走れる機能と、それを表現したボディスタイルが求められる。

 舗装路での走行性能、日常的な使い勝手、価格を考えると、多くのユーザーは前輪駆動ベースのシティ派SUVを購入するが、だからといって背の高いワゴンのようなSUVでは物足りないのだ。

 この不満は多くのユーザーが持っていて、CR-Vが売れない原因にもなっている。またエクストレイルが堅調に売れる背景にも、ロックモードを備えた4WDシステム、水洗いの可能な荷室など、アウトドアのツールに適した機能がある。

 軽自動車で本格的なオフロードSUVのジムニーが、かつて経験したことがないほどの人気を得た理由も同じだ。

 ランドクルーザーでは運転がしにくくて価格も安いが、ジムニーであれば本格的なオフロードSUVを手軽に購入できる。現行ジムニーは、外観もシンプルでオフロードSUVの個性を際立たせたから人気を得た。

 今ではSUVも普及開始から約20年を経過して、個性の乏しい車種は飽きられ始めた。その車種のイメージを際立たせる明確な特徴が必要だ。RAV4やエクストレイルのオフロード指向は、ジープを出発点とするSUV本来の機能とも合致するから、魅力を高めやすい。

 C-HRは、オフロード指向は皆無だが、未来的ともいえる独特の外観が大いに注目された。

 ヴェゼルもオフロード指向は乏しいが、燃料タンクを前席の下に搭載したことで、コンパクトSUVなのに後席と荷室はミドルサイズ並みに広い。フィットのような空間効率がファミリーユーザーの間で人気を高めた。

 このほかフォレスターには水平対向エンジンの搭載に基づく優れた走行安定性、ハリアーには日本のユーザーをターゲットにした豪華さの巧みな演出、アウトランダーには先進的なプラグインハイブリッドのPHEVがある。

 以上のように、各車種が独自の特徴を備えるからSUVには活気があり、オフロード指向の強いRAV4は、格好の成功例といえるだろう。

中心的な価格帯は280万~350万円。ハリアーやCR-Vと比べると割安感が高い

販売店から聞いたRAV4人気の理由

 販売店からは、RAV4に関する別の意見も聞くことができた。

 「RAV4は、かつてトヨタが販売していたヴァンガードや先代RAV4からの乗り替えが多い。エスティマの3列目を畳んで、2列シートのワゴンとして使っていたお客様が、RAV4に乗り替えることもある。いろいろな車種のお客様が購入していることも、RAV4の人気を押し上げた理由だ」と指摘する。

 トヨタ車のなかでは、RAV4はミドルサイズのSUVだから購入しやすいこともあるだろう。ランドクルーザーは前述のようにオフロードSUVだから、日本の一般的な用途には適さない。ハリアーは内外装は豪華だが、価格も高い。C-HRはカッコ良くて価格も手頃だが、後席と荷室が狭い。

 その点でRAV4は、後席と荷室が相応に広く、価格はハリアーよりも求めやすい。SUVらしさも濃厚だから、多くのユーザーにとって、トヨタのSUVとしてはちょうど良い選択肢なのだ。

RAV4が売れるほどC-HRの人気が急降下?!

RAV4が売れるほどC-HRが売れなくなる?

 このことは、C-HRの販売推移からも分かる。C-HRは外観に特徴のあるSUVだから、購入するのは主にクルマ好きのユーザーだ。「欲しい!」と思えば、愛車の車検期間が残っていても乗り替えるため、先に述べた通り発売直後の2017年には1か月平均の登録台数が1万台近くまで急増した。

 その代わり売れ行きが下がるのも早いが、RAV4が2019年4月に発売された後は、C-HRの販売下降が一層強まった。

 2019年3月の対前年比はマイナス19%、4月はマイナス5%だったが、RAV4が発売された後の5月は24%の減少に急増している。

 その後は6月が36%、7月は37%、8月は41%という具合に、月を減るごとにC-HRの対前年比は急降下の度合いを強めた。

 RAV4が売れるほど、C-HRが下がる関係になっている。RAV4とC-HRでは商品の特徴が大幅に異なるので、互いに影響されにくいと思えるが、実際は両立が難しい。

 ユーザーは「SUVが欲しい」と考えて車種選びをするから、どちらか1車種しか選ばれないわけだ。

RAV4の人気は今後も持続するのか?

ライバルとの戦いにもワイルドさと居住性のよさなど、ちょっと違った持ち味を発揮しているRAV4。この天下はいつまで続くだろうか?

 表現を変えると、C-HRの後席や荷室の狭さを補っているのがRAV4といえるだろう。逆にC-HRには、RAV4では得られないカッコ良くて個性的な外観がある。

 ハリアーの豪華さ、ランドクルーザープラドのオフロード性能、ランドクルーザーのV型8気筒4.6Lエンジンによる豪快な加速感も同様だ。

 これらトヨタのSUVラインアップのなかで、中核に位置するのがRAV4になる。その周囲をC-HRやハリアーが囲んでいる構図だ。

 RAV4はSUVの主役だから、販売が好調なのも当然で、今後も安定的に売れ続けるだろう。

【画像ギャラリー】写真で見るRAV4、C-HR、ヴェゼル、ハリアーの魅力

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