5月31日ご紹介の記事「【タイプR スイスポ A110…】 走りのよさ? 楽しさ?? 「人馬一体感」ってなんなんだッ!!?」。
この取材中、インプレッションを依頼したレーシングドライバー山野哲也氏が昼食時、カレーを食しながら「スマートブラバスがいいんだよ、乗ったことある?」と聞いてきた。しかし、である。
【10年目で“顔”激変】新型RVR発進!! フルモデルチェンジはどうなる!?
「…………」。
話を振られた編集者A・B、スマートブラバス未試乗……。自動車専門誌の編集者ながら何ともお恥ずかしい……。しかし、ならばスマートブラバス含め評論家おススメのクルマに試乗してみようぜ! ということにあいなった。
用意したクルマは下記の4台。ブラバス以外のクルマをオススメしてくれたのは自動車評論家・レーシングドライバーの松田秀士氏だ。今回の指南役もお願いした。
気づくと新車選びの候補から外れてしまいがちな実力車を、あらためて検証してみたい。果たして編集者A・B、4台クルマの魅力をちゃんと堪能できるのか!?
●エントリーリスト
・レクサス UX 250h バージョンL
・ホンダ インサイト EX
・スバル フォレスター アドバンス
・スマートブラバス forfour Xclusive
※本稿は2019年7月のものです
文:ベストカー編集部/写真:平野 学
初出:『ベストカー』 2019年8月10日号
■「CH-Rのウィークポイントを全部埋めたのがレクサスUX」
●レクサス UX250h Version L(価格:535万円)
デビュー直後は注目されたが、現状はやや落ち着いた感あり。本企画で再加速なるか
編集部A ではまず私はレクサスUXを。
松田秀士(以降:松田) どうぞ。第一印象は?
A アレ? 思ったよりアシが硬いですね……。もっとフワフワしている印象があったんですけど。
松田 なぜかっていうと、重さだね。なんせ4人乗ってるから(笑)。ショックアブソーバーがバンプラバーに触っちゃっているんですよ。だから、ボーンと突き上げがあるわけですよ。
編集部B 底突き寸前ってことですか?
松田 大人4人の重さでかなりプリロードがかかったような状態になってる。余裕がないから、段差を超える時にバンプラバーを触っちゃう。
●乗り心地と静粛性リア周りを中心に改良が加えられたUX
TNGAプラットフォームはリアからロードノイズが入ってくるが、それを見事に抑えた。C-HRに比べて静粛性と乗り心地がよくなっている。ナビ周りも非常に秀逸だ
A じゃあ次はエンジンパワーを……。エコ、ノーマル、スポーツはあんまり違いを感じないですね。一番速いスポーツプラスは……お、レスポンスよくなりましたね。
松田 ハイブリッドでもエンジンって重要で、2Lエンジンを積んでるからC-HRとかの1.8Lと比べてもパワーに余裕がある。
エコとスポーツプラスでけっこう差があるけど、コレでイイと思うよ。僕なんか普段エコモードで走る。エコに挑戦って感じで。
A ゲーム感覚ですね!自分のクルマと比べると、快適だなぁって感想です。
B (感想薄っす)
A C-HRとの違いってほかにありますか?
松田 アシがほんとよくなったよ。静粛性もよくなって、音の質が変わった。低周波は消しきれてないけど、高周波をカットできてる。
B 後ろで聞いてても静かですよ。
松田 おっ。わかる?
●レクサスUX250h 採点表(各項目左から松田氏、B、Aの採点・5点満点)
・エンジンのパワー感…3.5/4/3
・ハンドリング…4/4/4
・ボディの剛性感…3.5/4/4
・室内の質感…4/5/4
・乗り心地…4/4/4
■「スバル フォレスターは実はスポーティなクルマ」
●スバル フォレスター(価格:309万9600円)
ターボがなくなり「華がない」と言われがちな現行型。e-BOXERの魅力を探ります
A じゃあ次、フォレスター乗っちゃいます。大きいなあ(笑)、室内も広いけど。
松田 特に後ろに乗った時に後ろのスペースが広くて、圧迫感がない。このクルマは窓面積がすごく広い。運転席もサイドミラーがドアマウントなのも評価できる。横方向の視界がAピラーマウントと比べてよくなる。スペースのありがたみを感じるクルマだね。後ろの乗り心地素晴らしい!
A スタートしますね……、ハイブリッド感ないなぁ。
B ターボなくなっちゃったしねぇ……。
松田 でもこの2.5Lエンジンは下からのトルクあるからね。e-BOXERのいいところは、多人数乗車で重くなっても極低速域でグッとトルクが出せる。これはターボにもできないことだよ。
●後ろに乗った時の心地よさが素晴らしいフォレスター
足もとのスペースを含め、後席の快適さは特筆に値する。窓面積が広く、開放感も抜群。細かいところまで使い勝手にもこだわっている。非常に真面目に作られたクルマだ
A アシ、柔らかいですね。乗り心地がいい。
松田 ちょっとクルマを左右に振ってみて。
A …アレ?
松田 わかった? 横Gが強いでしょう。実はロールが少ないクルマなんだよね。しかもちょっとハンドル切ったらすぐ曲がったでしょ。意外にもサスペンションが硬い、スポーティなクルマなんだよ。
A・B エーーーッ!?
松田 スバルって応答性を追いかけちゃうのよ。柔らかいと感じた原因は、タイヤ。扁平率が高いでしょ? タイヤで衝撃を吸収させてるわけですよ。
マツダ3もサスをスッキリ動かしたいから、最初にタイヤを潰して、その後にサスを動かす。タイヤでガラッと変わっちゃう。高いOEMを履くしかない……。
A・B キツいですね!
●スバル フォレスター アドバンス 採点表(各項目左から松田氏、B、Aの採点・5点満点)
・エンジンのパワー感…3.5/3/3
・ハンドリング…3.5/4/3.5
・ボディの剛性感…5/4/4
・室内の質感…3/3/3
・乗り心地…3.5/3/4
■男4人が乗っても加速俊敏。トゥインゴが「ポルシェ964」ならブラバスは「993」だ!
●スマート ブラバス forfour Xclusive(価格:318万円)
0.9Lの直3ターボと思えぬパワフルさが魅力。走りに不満はないが後席窓は開かない
B で、ここからは私、Bが担当するわけですが……。
松田 印象はどう?
B いい、ですね。やたら速いし、ツインクラッチのミッションもスムーズだし。
松田 これ何馬力だっけ?
B 109psなんですけど、信じられないくらい走りますね。同乗しているカメラマンはかなりのヘビー級なんですが。
松田 ハンドリングはどう?
B なんかすげー安定感がありません? RRだからもっと危なっかしいんじゃないかと思ってたんですけど。
松田 ボクもそこに感心した。撮影地まで高速で来たわけだけど、高速域のリアのスタビリティなんか、非常に完成されてる。
●高速域でのスタビリティが高評価のスマートブラバス
RRという駆動方式からフロントの接地感は薄く安定性に欠けるのでは、という予想をまったく覆し、圧倒的なスタビリティの高さを見せたスマートブラバス。エンジンもやたらとパワフル。318万円という価格はお安くないが、それだけの内容は持っている。0.9Lの直3ターボとはとても思えぬパワフルさは、痛快の一言につきる
B 兄弟車であるトゥインゴもこんな感じでしたっけ?
松田 あっちはもっとRRらしいクセを持ってる。RR同士ってことでポルシェに例えると、素のトゥインゴは964でこいつはリアがマルチリンクになった993かな。
964は味があったけど、やっぱり怖いなって思うシーンもあった。993になってリアのスタビリティが増して、間口が広がったよね。こいつはミニポルシェ993だよ。ブラバスのチューンが効いてる。
B でも乗り心地は硬いですね。けっこう突き上げがくる。これは少しツラいかも。
松田 これ、たぶんメーカーが想定してる使い方と違うからだよ。メーカーはせいぜい2人乗車くらいまでで、男4人がフル乗車するなんてのは想定してない。
サスがすでに硬くなるところから動きだすことになっちゃうから、乗り心地が硬いんだろうな。
B 男4人のフル乗車なんて気持ち悪いだけですもんね…。
松田氏・A・B・かなりヘビー級のカメラマンC (静まり返る車内)
●スマート BRABUS 採点表(各項目左から松田氏、B、Aの採点・5点満点)
・エンジンのパワー感…4/5/5
・ハンドリング…4/5/4
・ボディの剛性感…3.5/4/3
・室内の質感…3/2/2
・乗り心地…3/2/2
■乗り心地、静粛性。インサイトは高級車だ!
●ホンダ インサイト EX(価格:349万9200円)
1.5Lのi-MMDを搭載。上質感ある乗り味が魅力的だが300万円以上の価格がネック?
B 最後はインサイトですが、オレ、このクルマ好きなんですよ。なんか重くてシッカリしたものが動いてるような感じがして。
松田 確かに重厚感はあるね。重さとボディのシッカリ感は全然違うけど。
A このクルマ、車重1400kgないですよ。
B なんだよ、わりと軽量なほうじゃねーかよ! そ、そうそう。重くないんですよ。いやー、乗り心地いいから重量級高級車チックって思っちゃったのかなー。
松田 乗り心地はいいよね。このクルマ、フロントがストラットでリアがマルチリンクなんだけど、今のホンダはこの組み合わせのクルマはちゃんと足を動かすんだよね。
●「アメリカナイズされた高級車のよう」インサイト
静粛性と乗り心地のよさ、そしてドライバーの意に沿う自然な動きが高く評価されたインサイト
B 今、連続する段差を乗り越えましたけど、突き上げに角がない気がします。
松田 そうだね。それにさっきみたいな道を走っても、ボディにイヤな二次振動が生じないのもいいね。
B ってことは、やっぱりボディがシッカリしてる?
松田 上手く作ってる。今30km/hくらいで連続するコーナー抜けたけど、ちゃんときれいにロールするよね。
B なんかクルマの動きが自然で気持ちがいいです。
松田 その感覚は間違ってない。動きが自然っていうのはクルマにとって大事なことだよね。
このクルマは静粛性も高いし、ちょっとした高級車。いかにもアメリカ人が好きそうなクルマで、アメリカナイズされた高級車って感じだね。
A・B なるほどー。
●ホンダ インサイト EX 採点表(各項目左から松田氏、B、Aの採点・5点満点)
・エンジンのパワー感…3/3/4
・ハンドリング…4.5/4/5
・ボディの剛性感…4/4/4
・室内の質感…3.5/4/4
・乗り心地…4.5/5/5
* * *
地味めながらミドコロありの4台。ぜひ次期愛車候補に入れてほしい。なお、松田氏には今回の4車に対する評価原稿を別途依頼している。そちらは下の番外コラムに掲載したのでそちらも是非目を通してほしい。
【番外コラム】 個性バラバラでも光るものアリ! そんな4車の松田秀士総論
ブラバスは山野哲也選手のオススメとかで、実際に乗ってみると確かにイイ! ベースのスマートはルノー・トゥインゴと姉妹車でも、味つけはまったく違う。サスペンションは味つけよりも実際のスタビリティを重視したハード系。特にリアの安定感が高い。
RRゆえリアタイヤを幅広にしているけど、コーナーへの進入から高い速度を維持して、思いどおりのラインが描ける。このRRコンパクト2兄弟は空冷ポルシェの再来とまでボクは言い切る。
トゥインゴは964ポルシェで、このブラバスは993のようなんだ。
フロントが軽いが、前後荷重をドライバーがコントロールして操る楽しさが964に共通するトゥインゴ。RRのはずなのに全然それを感じさせない993のようなブラバス! かなぁ!?
リアのスタビリティの高さでポルシェ993のようだとまで評価されたスマートブラバス
インサイトの再来! と思って乗ってみたら、まったくラグジュアリーな高級車に変身してデビューしているのが新型インサイト。後席も足元を含めたスペースが広大で、シートの大きさも座面などをしっかりとってあるので、とてもくつろげる。
フロント:ストラット、リア:マルチリンクという前後コンビネーションのサスペンションで、これだけのストローク感を出して、しかも乗り心地もいい。室内静粛性も高く、デザインもイイね。バックミラーにインサイトのフロントノーズが写ると思わず譲っちゃう。クルマじゃんけんで負けない顔もグッド。
続いてフォレスターなんだけど、こちらも後席の乗り心地がいい! こちらはインサイト系のくつろぎ感とは違って、開放感だね。3枚目までしっかり窓面積を広くとってあり、後席が楽しい。
またラゲッジスペースが広大なことも魅力。家族や友達と遠出するには持ってこい。ボクはスキーに行くから信頼性の高い4WDも嬉しいポイントだね。
そしてレクサスUXは存在感がイイね。2Lエンジン搭載のハイブリッドは力強い。やっぱりハイブリッドを生かせるのはパワーのあるエンジンだ! ということを再認識。
ダッシュボード上段に設置された10.3インチのナビディスプレイは、目からの距離が充分にあり、視線移動も少なくドライバーを疲れさせない。
タッチパッドの操作性もよかった。いちいち深層に入らなきゃ操作できないスイッチ類はちゃんと外に配置してある。大人向けですね。
シフト部のタッチパッドの操作性が、同ブランドのESよりいいと評価されたレクサスUX
ということで、今回試乗した4台はなるほどと思わせる長所がいくつもあったね。この4台、正直見直しました!
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