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【996+997+991】ポルシェ911 GT3 3世代比較試乗 前世代の集大成を再確認 後編

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【996+997+991】ポルシェ911 GT3 3世代比較試乗 前世代の集大成を再確認 後編

991型にはない純粋な一体感

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)

【画像】ポルシェ911 GT3 996型から991型 最新の992型も 全95枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


991型GT3の感動が残ったまま、後期の997型GT3に乗り換える。まるで別世界のように感じられた。座ってすぐに、明らかに劣ることが伝わってくる。

40psの差ほどではないにしろ、はっきりと遅い。997型のサウンドも素晴らしいが、全開時の991型が放つ興奮度には及ばない。

997型はグリップ力も低い。リミットを超えると、一気にコーナーの頂点を追えなくなる。991型のダンパーの良さにも気付く。997型の乗り心地は忙しないが、991型は路面の凹凸を吸収し、いつまでも乗っていたくなる。

しかし、997型にも特長はある。991型にはない純粋な一体感だ。991型が採用した電動パワーステアリングでは叶えられない路面からの感触を、油圧パワーステアリングは手のひらに伝えてくれる。

991型のパドルシフトも素晴らしいが、左足と左手の仕事は、かなり奪われたまま。997型に搭載される6速MT以上に素晴らしいトランスミッションは、世界中探してもないだろう。

シャシーバランスは完全ではなく、もう少し乗り心地は穏やかでも良い。それでも、991型とは違う方法で操る必要性が、強い一体感を生んでいる。不思議なことに997型の備えるマイナスは、ドライビング体験としてはプラスに働いているようだ。

ではGT3の初代、996型は過去のクルマなのだろうか。997型はドライバーへ伝える感覚で、パワーで勝る991型へ伍することができた。パワーやグリップで届かない996型は、負けないほどの楽しさを与えてくれるのか。

今日イチの驚きを与えてくれた996型

蓋を開けてみれば、今日イチの驚きを与えてくれたのは996型だった。英国の中古車ディーラーからお借りした今回の996型GT3は、見事な状態の1台。個体によって、得られる体験に差はあるはずだが。

誕生から随分時間の経つ996型は、舗装が平滑ではない郊外の道を飛ばしてもキシミ音や振動音を発しないことに気付く。ほぼ新車状態の、991型以上に静かだ。

996型はこれまでのポルシェ911の中で、最もコスト制限が強かったことはご存知だろう。だが、真新しいロールス・ロイスのようにしっかりしている。

チャレンジングな道では、997型と同じくらい楽しいことにも唸らされた。パワーやグリップの差は、さほど重要な要素ではない。コーナーでは引き締められたダンパーを活用し、アクセルペダルの操作で旋回時の姿勢を簡単に調整できる。

5000rpm以下では眠そうなフラット6が、それ以上に回すと突然エネルギッシュに変わる性格も好きだ。電子制御のセーフティネットがないことでの、スリルと背中合わせな感覚も筆者好み。

996型のGT3は、ピュアなアナログ・マシン。完全にドライバーがコントロールできる。GT3のようなクルマなら、それでも構わないと思う。

一方、996型で決定的に不足しているのが、近づきやすいマナー。たとえGT3でも、それなりの快適性は必要だと思う。乗る場面を選ぶおもちゃではなく、毎日楽しめるクルマになる。

GT3といえども日常性は大きな魅力

997型と991型の大きな成果は、走行性能の高さだけでなく、日常的に乗れるドライバーズカーに仕上がっていることだろう。996型の乗り心地では、普段使いしたいとは思いにくい。

とはいえ、911 GT3を楽しみたいだけなら、6桁ポンド(1500万円)以上も支払って991型を選ぶ必要はない。素晴らしい996型GT3なら、もっと身近な値段で手に入る。伝統的なポルシェのスポーツカーとして、多くのライバルより優れている。

同時に、997型の価格上昇も理解できる。996型の純粋なドライビング体験は白眉だが、997型が失った部分はごくわずか。日常的に乗りやすいという、大きな魅力が追加されている。

筆者にとって、PDKの991型は電子技術が多すぎ、ペダルの数が1枚足りない。しかし、スピードや快適性、運転のしやすさ、存在感など、多くのドライバーが欲しいと思える要素が詰まっている。

それでいて、ドライバーへの要求はずっと少ない。後には6速MTも登場した。

一般的な世代間テストでは、新しい順に順位が決まることは珍しい。だが最高のポルシェ911 GT3をこの3台から選ぶなら、僅差で991型がトップを掴む。筆者のような、少しひねくれ者には驚く内容となった。

ただし、純粋なGT3の楽しさを手に入れたいのなら、状態の良い後期型の996型GT3を探す方が良い。ずっと資金も少なくて済む。

純粋さと日常性という両方を叶えたいのなら、間を取って997型GT3も悪くない。そう考えると、今回の3台で最も説得力のある仕上がりなのかもしれない。

過去3世代 ポルシェ911 GT3のスペック

ポルシェ911 GT3(996型後期/1999~2005年/英国仕様)のスペック

全長:4435mm
全幅:1770mm
全高:1275mm
最高速度:305km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:328g/km
車両重量:1380kg
パワートレイン:水平対向6気筒3600cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:380ps/7400rpm
最大トルク:39.1kg-m/5000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

ポルシェ911 GT3(997型後期/2006~2011年/英国仕様)のスペック

全長:4427mm
全幅:1808mm
全高:1280mm
最高速度:312km/h
0-100km/h加速:4.1秒
燃費:7.9km/L
CO2排出量:298g/km
車両重量:1395kg
パワートレイン:水平対向6気筒3797cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:435ps/7600rpm
最大トルク:43.7kg-m/3250rpm
ギアボックス:6速マニュアル

ポルシェ911 GT3(991型前期/2013~2019年/英国仕様)のスペック

全長:4545mm
全幅:1852mm
全高:1269mm
最高速度:315km/h
0-100km/h加速:3.5秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:289g/km
車両重量:1430kg
パワートレイン:水平対向6気筒3800cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:475ps/8250rpm
最大トルク:44.8kg-m/6250rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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みんなのコメント

7件
  • 全部乗った事あるけどこの記事通りの印象。996前期のGT3はレーシングカーそのままな感じのエンジンが超刺激的だった。
  • 996GT3後期モデルを長年保有しています。鈴鹿サーキットフルコースを何回も走行していましたが、380psは一般素人では使いこなせないと思います。高回転のサウンドは痺れますよ。涙目がキライな人も一度でも限界迄エンジン回してください。印象が変わりますからね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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