■国内の新車販売で長年トップを独走するトヨタ
日本でもっとも多くクルマを販売しているメーカーはトヨタです。
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2020年1年から7月の統計を見ると、トヨタは日本国内で約81万台の新車を売りました(OEM車を含む)。2位のホンダが約36万6000台ですから、トヨタは2倍以上の差を付けて販売1位を独走しています。
過去を振り返ると、1962年までは乗用車については日産がトヨタより多く販売しましたが、1963年以降は乗用車、総台数ともにトヨタが一貫して1位です。
ただし現在のトヨタの国内シェアは、軽自動車を含むか否かで大きく異なります。軽自動車を除いた小型/普通車に限ると、2020年1月から7月の累計で、トヨタ比率は48%に達しました。国内で売られた小型/普通車の新車は、約半数がトヨタ車です。
その一方で、軽自動車を含めた総台数では、トヨタ比率は31%に下がります。2020年1月から7月に国内で売られた新車のうち、37%が軽自動車だったからです。
小型/普通車が圧倒的に多いトヨタは、日本で好調に売れている軽自動車を含めると、シェアが大きく変わるのです。
トヨタの小型/普通車におけるシェアが安定して45%を超えるようになったのは2006年以降です。この時代に軽自動車の国内販売比率も30%を上まわり、小型/普通車市場でトヨタの強さが際立ってきました。
ほかのメーカーの動向も、トヨタのシェアに大きな影響を与えました。1990年頃まで、国内と海外の販売比率は、トヨタを含めて各メーカーとも各50%ずつでした。
ところが2000年頃になると、各メーカーとも海外販売比率を65%に高め、国内は35%へ減少します。海外の旺盛な需要に押され、小型/普通車の商品開発が海外中心になり、国内の売れ行きを下げたのです。
このときに急速に普及を開始したのが、スズキ「ワゴンR」、ホンダ「ライフ」、ダイハツ「ムーヴ」「タント」といった背の高い軽自動車でした。
軽自動車は国内向けの商品なので、日本のユーザーから高く評価され、日本を離れた小型/普通車とは対照的に売れ行きを伸ばした結果、新車として売られるクルマの30%以上が軽自動車になったのです。
「小型/普通車は海外向けに造り、国内市場は軽自動車と一部のコンパクトカーやミニバンに任せれば良い」と考えるメーカーが増えるなかで、トヨタだけは軽自動車を用意しません。
後にダイハツのOEM車は加えましたが、2000年代に入っても小型/普通車に力を入れました。
「エスティマ」や「ヴォクシー&ノア」のようなミニバンで売れ行きを伸ばす一方、カローラ、クラウン、「マークX」などのセダンも堅調でした。SUVも「ハリアー」、「ヴァンガード」、「RAV4」、「ランドクルーザー&ランドクルーザープラド」をそろえました。
■人気車と不人気車の格差が顕著に!?
トヨタが小型/普通車を堅調に売るために大切な役割を果たしたのが、トヨタ店/トヨペット店/トヨタカローラ店/ネッツトヨタ店という販売系列です。
以前は系列ごとに専売車種も用意され、トヨタ店のクラウン、トヨペット店のハリアー、トヨタカローラ店のカローラ、ネッツトヨタ店の「ヤリス(旧ヴィッツ)」などは、ほかの販売系列では扱いませんでした。
例えばトヨペット店は、ハリアーをとくに大切に売りました。近所にトヨペット店のないユーザーは、ハリアーを遠方まで買いに出かけることもありました。そのためにハリアーは高価格車なのに堅調に売れて、販売会社の売り上げを維持する上でも大切な存在だったのです。
ところが2020年5月になると、先行して実施していた東京地区に続いて、ほかの地域もトヨタの全店が全車を売る体制に変更されています。
東京地区以外はトヨタ店やトヨペット店といった4系列は基本的に残っていますが、全店が全車を扱うと、系列の意味は実質的に薄れます。
そして全店が全車を扱えば、トヨタ店やトヨペット店でヤリスを、あるいはトヨタカローラ店やネッツトヨタ店でハリアーを買えますから、人気車は売れ行きをさらに伸ばします。
逆に不人気車は販売力を奪われて売れ行きが下がり、トヨタ車同士の人気と不人気が一層明確になります。
この状況について、トヨペット店では次のようにいいます。
「いまは『アルファード』やハリアーをほかの系列でも買えるので、以前専売だったトヨペット店としては、正直愉快ではありません。しかしウチとしても、ヤリスやカローラを新たに販売できるので、それはお互いさまでしょう。
注意したいのは、アルファードやハリアーの売り上げを保つことです。この2車種が減って、低価格のヤリスやカローラが増えると、販売台数は増加したのに収益が下がることも起こり得るからです」
人気車が伸びて不人気車が下がる販売格差は、すでに生じています。
例えば「アルファード&ヴェルファイア」は、現行型が発売されたときまでは、ヴェルファイアの販売が好調でした。
それが2017年のマイナーチェンジでフロントマスクの形状を変えると、販売順位が逆転してアルファードが優勢になりました。
この販売格差は、全店が全車を売るようになるとエスカレートして、2020年6月にはアルファードとヴェルファイアでは6倍の差が生じています。
以上のようにトヨタが小型/普通車販売で最強になった背景には、優れた商品力や、ホンダや日産の2倍以上に達する販売店舗数に加えて、他メーカーの小型/普通車が弱体化したこともありました。
それなのにいまになってトヨタも全店で全車併売に踏み切り、他メーカーのような販売格差も生じ始めています。
今後は、アルファード/ヴェルファイアやノア/ヴォクシー/エスクァイアなどの姉妹車は統合が進むでしょう。発売から13年以上を経過した「プレミオ/アリオン」なども整理される可能性が高いです。
そうなるとトヨタの販売総数が減ることも考えられます。合理化は大切ですが、ヴェルファイアやエスクァイアが廃止されると、寂しい思いをするユーザーもいるでしょう。
今後は車種を廃止しながら、ユーザーの満足感をいかに高く保つかが重要です。サブスクリプション(定額制でクルマを使えるサービス)もその一環ですが、さらに新しいアイデアの採用も待たれます。
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みんなのコメント
現実社会では人気があるようです。
間違いない。
現行モデルになってからの逆転ぶりは色々と考えさせられるね。
少なくともメディアがよく言う「販売力」などというものは、
「商品力」の前には無力だという事はハッキリしてる。
販売力が勝敗を決するのなら、こんな現象は起こり得ない。