世界の自動車メーカーに電動化、それもピュアEVの波が押し寄せているのは周知の通りだが、いよいよジャーマンスリーの一角、アウディも日本市場にピュアEV、e-tronを送り込んできた。まず上陸したのは、Audi e-tron Sportback 1st edition。そしてこのあと、Audi e-tron SUVが続くことになっている。
ブリュッセルの工場で生産されるe-tron Sportbackと出会った第一印象は、とにかく立派、デカい、である。Audi Q ファミリーをイメージさせる8角形のシングルフレームグリルを採用したボディは全長4900×全幅1935×全高1615mm、ホイールベース2930mmだ。カテゴリーとしてはクーペSUVに分類されるそうだが、こう言ってはなんだが、一連のQシリーズよりはるかにスタイリッシュで、国の党首の専用車としても似合いそうな、アウディ最上級サルーンのA8を凌ぐ堂々とした貫禄がある。もっと言えば、SUV臭はないに等しい。8角形のシングルフレームグリル(シャッター付き)周りの泣く子も黙る押し出し感と、アウディならではのエレガンスの絶妙なバランスが見事だ。
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エクステリアでピュアEVを示すのは、フロントフェンダー左右にある充電口で、これがまたボタンを押すだけで電動開閉するあたり、さすが、プレミアムブランドのアウディらしさだろう。そしてもちろん、CD値0.25の実現に一役買った、スリムなバーチャルエクステリアミラーが強い個性を放つ。ちなみに、標準型ドアミラーを畳んだときよりも、ミラー・トゥ・ミラーの幅は狭いとのこと(バーチャルエクステリアミラーの畳みは手動)。
電動パワーユニットは前輪、後輪をそれぞれ駆動する、あわせて2基の電気モーターを搭載。そのシステム最大出力は300Kw、約408psに達し、0~100km/h加速5.7秒を実現(Sモードのブースト時。Dレンジでは6.6秒)。
気になる航続距離は、95kWhのエネルギー容量を誇る駆動用バッテリーによって、1充電あたりの航続可能距離は最大405km(WLTCモード)となる。日本仕様のe-tron Sportbackの充電は、標準装備の家庭用普通AC(交流200V標準3kW、オプションで8kW対応)充電器と、主に公共の急速DC(直流)充電器に対応。フロントフェンダー左右に充電口(これまでスタイリッシュ)があるのはそのためだ。95kWh(正味容量86.5kWh)のバッテリーを0%から80%まで充電する所要時間は、50kWの出力で1時間半という。
駆動方式はもちろん、クワトロだ。2基の前後電気モーターによる電動4WDであり、通常は主にリヤのモーターを使用。滑りやすい路面や急加速やコーナリング時など4WD 走行が望ましいとシステムが検知した場合は、前後のモーターが駆動。強大なパワー、トルクを確実に路面に伝える役目を果たす。また、電気モーターのトルクが立ち上がるまでに要する時間はわずか0.03秒の鋭さで、アクセルレスポンス、人車一体のドライブフィールを味わせてくれることになる。
試乗したのは、e-tron Sportback 1st editionで、サイレンスパッケージ(アコースティックサイドガラス、プライバシーガラス、Bang & Olufsen 3Dサウンドシステム、パワークロージングドア)、5Vスポークスターデザインの21インチアルミホイール&21インチタイヤ、カラードブレーキキャリパーオレンジなどを特別装備したAudi e-tron日本導入記念限定モデルで、バーチャルエクステリアミラーを追加したモデルだった(Audi e-tron Sportback 1st edition 1327万円、バーチャルエクステリアミラー仕様1346万円)。
満充電で借用したe-tron Sportback 1st editionのバーチャルコクピット(メーター)が示すEV航続距離は360km。個人的な話で申し訳ないが、ボクの求めるピュアEVの航続距離は350kmを目安としている。その理由は、充電設備のある自宅から、頻繁に出掛ける軽井沢間を、なんとなれば、無充電で往復できる距離(片道170km)だからである。途中の高速道路のSA、軽井沢周辺には充電スポットもあるにはあるが、先客がいる、ペット連れで充電待ち時間の自由度がないなどの事態、自身のドライブスタイルに備えて、である。
e-tron Sportbackに、SUVらしからぬスムーズさで乗り込めば、そこはデジタル・フューチャーと言うべき先進感と上質さに包まれたアウディ一流の空間だ。液晶フルカラーデジタルディスプレーメーター、タブレットのようなナビゲーション&エアコンディスプレーには今更驚かないが、e-tron Sportbackらしいのは、やはりアウディ初の装備としてバーチャルエクステリアミラーの室内側左右のドア側にレイアウトされ、タッチで画角を変えることもできるOLEDディスプレーだろう。ただ、ホンダeの同種のディスプレーと比べると、やや下位置にあり、視線移動は大きめになり、慣れはホンダe以上に必要と感じた。もっとも、ブラインドスポットモニターも装備されるから、車線変更時の接触事故などは、ある程度回避できるから、過大な心配はいらない。
スタートボタンを押し、電源オン。個性的なデザインながら、実にしっくり手になじむシフターを操作し、Dレンジに入れて走り始めれば、ピュアEVらしく軽快に前に出る、と思ったら、そうでもない。軽快というより、重厚かつウルトラスムーズに発進するというイメージだ。何しろ車重は2560kgもある巨漢であり、逆に走りの質感としてはこのほうが上質でお似合いだ。
そこからは、もう、驚くほど静かでスムーズなクルーズを開始する。耳に届くのは、当たり前かも知れないが、微小なロードノイズと、エアコンの風のさわさわした音だけ。間違いなく、A8より静かであり、渋滞時には極上のリスニングルームになることは間違いない。
21インチタイヤを履く乗り心地も、想定外にフラットに徹し、マイルドだ。いつもの段差を超えても、ボディ剛性、足回り剛性の高さと、床下に配置されるバッテリーの重さによって、それを気づかせないほどで、まるで分厚いカーペットの上を行くように走ってくれる。
意外なのは、操縦性だ。これほどの巨漢、重量にして、ステアリングを左右に切るシーン、カーブでは、想像以上に軽快に向きを変えてくれる。パドルシフトも完備し、ピュアEVならではのモータートルクの立ち上がりの俊敏さのおかげで、実際のサイズを感じにくい一体感ある走りっぷりさえ味わせてくれたのだから、びっくりだ。最小回転半径5.7mの”意外なる”小回り性の良さは、Uターンの容易さでも証明し、”広い道では” 意外なほどボディサイズをかんじにくい扱いやすさを披露してくれたのである。
もちろん、クワトロならではの安定感も見事だ。ドライ路面では当然として、滑りやすい路面でも、終始安心して走れるのが、クワトロならではである。
また、電動車の中には、ブレーキフィールに違和感があるモデルもままあるのだが、このe-tron Sportbackの場合、それはまったくなし。ふつうのアウディからいきなり乗り換えても、いや、アウディ以外のブレーキフィールに優れたモデルから乗り換えても、自信をもってブレーキを操作できた。
そして、これまたふつうのアウディから乗り換えて違和感なしなのが、ふたつのレバー操作によるACC。ステアリングスイッチのほうが扱いやすいと感じる人もいるはずだが、アウディオーナーなら説明なしで操作が可能。ACC機能のキモとなる追従性能、再加速性能も文句なしだった。
後席にも座ってみたが、アウディとしてはかなりアップライトな着座姿勢となり、前方見通し性は抜群だ。ニースペースはクラスの平均値的広さとはいえ、着座位置の高さがそれ以上のゆとり、快適感を味わせてくれる。
そうそう、e-tron Sportbackのボンネット内には、当たり前だがエンジンはない。しかし、フートを開ければ、そこに充電コードを収納するのにぴったりなスペースがあるのには感心。メルセデスベンツEQCのように、カバーだけがあり、収納スペース皆無のピュアEVも多いのである。もちろん、トランクも広大だ。
そんなAudi e-tron Sportbackは、アウディの次世代プレミアムカーを指し示し、未来への架け橋となる、日本市場におけるピュアEVの第一弾。その導入に合わせ、e-tron Charging Service(充電カード)を1年目のみ月会費5000円と1分15円の従量料金を無料となるサービスが付帯する。ピュアEVだけに相当額の減税、補助金のメリットもある。
S-トロニックやクワトロシステム、アウディスペースフレームなどでクルマのテクノロジーをリードしてきたアウディが、このe-tronをきっかけに、これからどんなクルマの未来を創造してくれるのかも、楽しみである。
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
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