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フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「T-Roc」と「T-Cross」はどっちが買いか。同時試乗で徹底検証!【T-Cross編】

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フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「T-Roc」と「T-Cross」はどっちが買いか。同時試乗で徹底検証!【T-Cross編】

Volkswagen T-Roc × T-Cross

フォルクスワーゲン T-Roc × T-Cross

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個性派コンパクトSUV兄弟、ベストバイを探る:T-Cross編

フォルクスワーゲンが日本で展開する2台のコンパクトSUV、T-RocとT-Cross。似て非なる兄貴分と弟分は、それぞれどんなキャラクターを与えられているのだろうか。前編につづき、自動車ジャーナリスト・山田弘樹が両車をインプレッションしてその個性を読み解いていく。

直3ガソリンターボを搭載するリッターカー

さて前編でリポートしたT-Rocがこれだけ街中で快適かつ俊敏だと、T-Crossの出番などないように思えてくるが、全くそんなことはないから安心して欲しい。今回試乗したグレードは、ホイールやミラー、インパネにコスメチューンを施して、安全装備を充実させた「TSI 1st Plus」。エンジンはBセグメントの主流となる直列3気筒ターボで、約1.0リッターの排気量から116ps/200Nmのパワー&トルクを発揮する。

ここに組み合わされるトランスミッションはT-Rocと同じ7速DSGだが、そのギヤ比は出力と重量の兼ね合いを考え巧みなレシオに設定されており、T-Crossは小排気量でも実によく走る。ちなみに駆動方式はT-Roc同様FWDのみとなっている。

日常を楽しくする直3ならではの鼓動

街中では上手にタイヤを転がしながら、ほぼ2000rpm以下の領域で全てをこなす。高速巡航では1500rpm~という低い回転域からアクセルを踏み足すような運転をしても、うっすらとブーストを立ち上げて高いギヤを保ったままジワーッと速度を上げていく。この小さなエンジンで、キックダウンによる急激なトルク変動を強いられることもなく、交通の流れについていくことができるのには本当に感心する。高速巡航性能がさほど問われなくなった日本で、これだけの粘り強さがあれば日常をストレスなくこなすことができるだろう。

そしてもちろんアクセルをいっぱいに踏み込んでも、T-Crossは活発に走ってくれる。加速性能に目を見張る所は全くないが、小排気量ターボのブースト感と7速DSGのキレ味がミックスされた走りは気持ち良く、そして楽しい。直列3気筒ターボの独特なバイブレーションやトルキーな鼓動を、ギヤをひとつふたつ下げるだけで日常から楽しめるのはある種の趣味性とも言えるだろう。これをT-Rocでやろうと思ったら、ちょっとスピードが出すぎてしまう。

スライド機構付きの後席空間

乗り味はスッキリと硬めで、T-Rocよりも若者向けといった感じ。SUVとしての車高を支えることに加え、少ないエネルギーで無駄なく走るために、足まわりを少し固めてロールを適度に抑えているのだと思う。それでもその乗り心地にポロのようなチープさを感じないのは、増えたストロークやタイヤのエアボリュームによって路面からの入力を巧みにダンピングできているからだろう。

T-Crossで感心するのは、後部座席のルーミーさだ。フォルクスワーゲンに問い合わせたところ室内の各寸法は公表されていなかったのだが、意外なことにT-Rocと比べてもさほど狭いと感じられなかった。リヤシートをいっぱいにスライドさせればひざ周りには十分な余裕ができるし、逆に一番前にしてもフロントシートのくぼみによってスペースを確保できる。その上で若干のリクライニング姿勢まで取ることができる。

トランク容量は通常で385リットル、シートを倒した状態で1281リットルだから、T-Rocの445リットル/1290リットルには一見及ばないのだが、リヤシートを14cmスライドさせた際の容量は455リットルと、実はT-Rocを上回っている。またメータークラスター内のディスプレイも、試乗車はアナログ型のままだったが、今後はT-Crossもカラーの“Active Info Display”が標準装備となるようだ。

潔くミニマルなT-Crossと、費用対効果の高いT-Roc

というわけで両車を総合的に評価してみると、個人的にはT-Crossのミニマルさが魅力的に感じられた。電動化の“で”の字もない。目新しさなどどこにもないのだが、小さなエンジンを効率良く回しながら、シンプルに走るそのスタイルにフォルクスワーゲンらしい道具感と、今っぽさを感じた。シティユースを主体に、たまに長距離移動をこなすような使い方であれば、これで十分! という素朴な潔さがT-Crossにはある。

かたやT-Rocは、その車格から一枚上手の質感を備えており、なおかつ今回の「Design Package」であれば、70万円程度のエキストラを支払うだけで、2.0リッターTDIが手に入るという魅力がある。こう考えるとT-Crossのコストパフォーマンスは、かなり高い。

T-Rocは“現代のゴルフ”なのか

さてT-Rocが現代のゴルフになり得るのか? という点に関しては、第一印象だけで言えば答えは「ノー」だ。残念ながら筆者はゴルフ 8に先行試乗できていないが、第7世代だけを取っても、その比類無きしっとりとした乗り味や価格に対する隙の無い質感の高さが、T-Rocにも反映されているとは思えなかった。

もっとも日本仕様にはTDIしかない上に、フォルクスワーゲンはそうしたゴルフのオーソドックスさよりも、T-Rocでは若々しさを表現しているのかもしれない。前述した通り、乗るだけで前向きかつ元気になれる躍動感は、これまでのフォルクスワーゲンでは感じられなかったものである。

フォルクスワーゲンだからできること

とはいえ、フォルクスワーゲンにはT-Rocよりも「T-GOLF」を作って欲しかった、という気持ちが筆者にはある。なぜなら、ハッチバック車が今後のコンパクトシーンをリードできる時代はとうに終わっているのではないか? という思いがあるからだ。

他社では到底追従できないコストを投じてコンパクトSUV版ゴルフを完璧に作り上げる。誰もが脱帽するようなコンパクトSUVを提案することこそが、フォルクスワーゲンの核になるなのではないか? もっともそれは、電動化を見据えたゴルフ 8ベースでの話なのかもかもしれないが。

(前編:T-Roc編はこちら)

REPORT/山田弘樹(Kohki YAMADA)

PHOTO/峯 竜也(Tatsuya MINE)

【SPECIFICATIONS】

フォルクスワーゲン T-Cross TSI 1st Plus

ボディサイズ:全長4115 全幅1760 全高1580mm

ホイールベース:2550mm

車両重量:1270kg

エンジン:直列3気筒DOHCターボ

総排気量:999cc

ボア×ストローク:74.5×76.4mm

最高出力:85kW(116ps)/5000-5500rpm

最大トルク:200Nm/2000-3500rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:FWD

サスペンション形式:前マクファーソンストラット(スタビライザー付) 後トレーリングアーム

ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

タイヤサイズ:前後215/45R18

燃料消費率(WLTC):16.9km/L

車両価格:337万9000円

フォルクスワーゲン T-Roc TDI Style Design Package

ボディサイズ:全長4240 全幅1825 全高1590mm

ホイールベース:2590mm

車両重量:1430kg

エンジン:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ

総排気量:1968cc

ボア×ストローク:81.0×95.5mm

最高出力:110kW(150ps)/3500-4000rpm

最大トルク:340Nm/1750-3000rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:FWD

サスペンション:前マクファーソンストラット(スタビライザー付) 後トレーリングアーム

ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

タイヤサイズ:前後215/55R17

燃料消費率(WLTC):18.6km/L

車両価格:405万9000円

【問い合わせ】

フォルクスワーゲン カスタマーセンター

TEL 0120-993-199

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