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「ヒット」と「不発」繰り返した名車! 日産 シルビアが歩んだ37年の浮沈 【偉大な生産終了車】

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「ヒット」と「不発」繰り返した名車! 日産 シルビアが歩んだ37年の浮沈 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 シルビア(1965-2002)をご紹介します。

【画像ギャラリー】初代登場から37年! 7代に渡るシルビアの系譜をギャラリーでチェック!!!

文:伊達軍曹/写真:NISSAN

■1965年に現れた美しすぎるスペシャルティクーペ

 当時の日本車の水準からは、良い意味で大きくかけ離れた美しすぎるクーペとして1965年に初代モデルが誕生。

 その後、1代おきに「ヒット」と「不発」を繰り返し、1988年に登場したS13こと5代目が超絶大ヒットを記録。

 しかし続く6代目はジンクスどおり(?)不発に終わり、7代目で失地回復を試みたものの、時代の渦に飲み込まれて生産終了を余儀なくされたスポーティクーペ。それが、日産シルビアです。

 高級パーソナルクーペとして誕生した初代シルビアは、同時代のイタリアンクーペと比較しても何ら遜色ない素晴らしいデザインをまとったクーペでした。

初代シルビア(1965年・CSP311型)。ギリシャ神話に登場する美しい女神の名前を由来としている。売上は芳しくなく、1968年に一旦生産を終了

 が、1960年代の日本人にとっては高額すぎた&高尚すぎたせいか、総生産台数554台のみで1968年に生産終了となりました。

 その後、凡庸な2代目(S10)とスマッシュヒットを記録した3代目(S110)、しかしまたまた凡庸な不人気車となってしまった4代目(S12)を経て、今なお中古車市場やドリフト愛好家の間で人気が高い名作、5代目の「S13」が1988年に登場しました。

5代目シルビア(1988年・S13)…最大のヒット作となる5代目。デートカーとして一世を風靡

 S13シルビアの素晴らしさについては他の記事でしばしば触れられていますので、詳しくは割愛します。

 ざっくり言えば、5ナンバーサイズの美しいFRクーペに程よくパンチの利いたエンジンを搭載し、そして「チューニングの余地」も程よくあったという部分が、当時の青年たちのハートを鷲づかみにしたのです。

 しかし1993年に登場した6代目(S14)は全車3ナンバーになったことと、言ってはなんですがシャープさが感じられないデザインになってしまったことで大失速。

6代目シルビア(1988年・S14)。ボディサイズが拡大され、全てのグレードが3ナンバーに

 1996年6月にヘッドランプをシャープな吊り目形状にするなどのマイナーチェンジを行いましたが失地回復には至らず、不人気車のまま、その生涯を終えました。

 そして1999年、今にして思えば「最後のシルビア」として誕生したのが、S15こと7代目の日産シルビアでした。

 先代の反省からボディは5ナンバーサイズへ戻り、デザインも「イタリアのピニンファリーナが担当しました」と嘘をつかれたならば「ですよね!」と納得してしまいそうなほどの美しさを取り戻していました。

 デザインの面だけでなく、中身も大いに進化したのがS15シルビアという車の特徴です。ボディ剛性の向上に加えてターボ車には補強材が加えられ、S13後期型から採用された伝統のSR系エンジンもさらにパワーアップ。

 そしてターボ車には新たに6MTも採用されました。

 そのような「美しき力作」だったS15シルビアですが、それでも、残念ながら販売的には低空飛行が続きました。

 そのため日産は2002年8月にS15シルビアの生産を終了。そして同年11月には、販売のほうも完全に終了となりました。

■シルビアが7代で潰えた2つの理由

 1代おきに豊作と不作を繰り返していたとはいえ、基本的には「伝統のブランド」だったといえる日産シルビアはなぜ、7代目のS15を最後に消えてしまったのでしょうか?

 理由は2つ。クーペというジャンル自体の凋落と、平成12年度排ガス規制です。

 大ヒット作となったS13(5代目シルビア)が現役だった1992年頃の空気を、筆者はよく覚えています。

 筆者が当時勤務していた一般メーカーで、筆者の対面に座っていたTくんという、特に自動車マニアではない同期入社の青年が「あー、もう給料が余っちゃって仕方ないから、三菱GTOでも買おうかな!」なんて独り言を大声でつぶやいていたのが、1990年代前半という時代でした。

 「給料が余っちゃって」うんぬんの発言は彼が実家暮らしだったゆえですが、そこはさておき、Tくんのようなマニアではない普通の青年も車にそれなりの興味を持っていて、そして「買うならやっぱ速い車だべ?」と思っていたのが、S13が大ヒットした1990年代初頭のニッポンでした。

 しかし1990年代も半ばを過ぎると、販売台数ランキングの上位にミニバンいくつか入ってくるようになり、S15シルビアがデビューした1999年には、トップ30のうち8台がミニバンで占められるようになりました。

7代目シルビア(1999年・S15)…S14で不評だった3ナンバーサイズを5ナンバーに戻すなど、随所を刷新し登場したが、5代目のような勢いを取り戻すことは叶わなかった

 時代の風向きが明らかに変化し、いわゆる普通の男子でもクーペあるいはスポーツカーに興味を持っていた時代が終わり、ごく一部のコアな人間だけが、それに興味を持つ時代となったのです。

 そうなるとS15シルビアがいくら力作でも、いくら美しくても、そして5ナンバーサイズに戻っても、ごく少数の者しか買ってはくれません。

 そしてそこに追い打ちをかけたのが、前述した平成12年度排ガス規制の「猶予期限」でした。

 平成12年排ガス規制は2000年からすでに施行されていましたが、すでに市販済みの乗用車は2002年8月までの猶予が認められていました。

 で、S15シルビアはSR系エンジンを2002年8月までに改良すれば良かったのですが、あいにくシルビアに搭載されていたSR20DE/DETは、他のモデルと違って「縦置き用」でした。

 他に流用が利く横置き用のSR系エンジンはさておき、シルビア専用と化していた縦置き用ユニットを、「今後も数は売れない」とわかりきっているクーペのためにコストを投じて改良するのは、企業としてはあり得ない選択肢でした。

 そのため、美しかったS15はカタログから消えていったのです。また他メーカー製クーペのいくつかも、ほぼ時を同じくして消えていきました。

 仕方のないことだとはいえ、なんとも残念な「2002年」でありました。

■日産シルビア(S15)主要諸元
・全長×全幅×全高:4445mm×1695mm×1285mm
・ホイールベース:2525mm
・車重:1240kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1998cc
・最高出力:250ps/6400rpm
・最大トルク:28.0kgm/4800rpm
・燃費:11.2km/L(10・15モード)
・価格:239万円(1999年式スペックR 6MT)

【画像ギャラリー】初代登場から55年! 7代に渡るシルビアの系譜をギャラリーでチェック!!!

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