1980年代、「クロカン」ブームを支えた4WDが、各自動車メーカーから続々と発売された。この連載企画では、今でいうSUVとは、ひと味もふた味も異なる「泥臭さやワイルドさ」を前面に押し出したクロカン4WDを紹介する。第3弾は「ランドクルーザー100」だ。
日本という国は知らなくても「ランドクルーザーは知っている」
「ランドクルーザー」の名前に関する話だが、初代ランドクルーザーは「トヨタジープ」として1951年に誕生した。しかし、その車名が「ウイリスジープ」の商法権にかかわることから、3年後の1954年に「ランドクルーザー」に改名された。そして66年経った2020年の現在でも、世界中でこの車名が使われている。日本という国は知らなくても「ランドクルーザーは知っている」そんな地域もあるくらいだ。つまり「ランドクルーザー=世界共通語」と言っても過言でないほど、ランドクルーザーは偉大なクルマへと進化したのだ。
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そんなランドクルーザーに「車名が変わるかもしれない」という噂が流れたときがあった。それは1997年の東京モーターショーに、「Grand Cruiser(グランドクルーザー)」というクルマが展示されたときだ。全長5mオーバーの超大型オフロード4WDとその車名。当時、ランドクルーザー80は発売からすでに7年が経過しており、ファンの間では次期モデルが話題になっていた。そのタイミングもあり、「ランドクルーザーの車名を変えるのか?」と、そんな声も囁かれた。しかし、その不安を払拭するニュースが翌年(1998年)に報じられた。次期モデル名は「ランドクルーザー100」だと……。
高級セダン並みの快適性を実現したランクル100
ランドクルーザー100のキャッチコピーは「Made in Earth」だった。壮大な砂漠、険しい山脈、世界中の自然の厳しさを経験してきたランドクルーザーは、まさに地球が生んだ「キング・オブ・4WD」ということだろう。事実、ランクル100は、見た目も機能面もすべてが国産4WDの先進的であり、高級セダンそのものだった。隅々まで配慮された作りからは、かつてワークホースだった先代たちの面影は微塵も感じられず、優雅にドライビングを楽しむ豪華クルーザーに生まれ変わっていた。
さて、ランドクルーザー100だが、先代モデルのランドクルーザー80からの変更点はいくつもあったが、その筆頭はサスペンションだろう。伝統の前後リジッドアクスルを一新し、フロントにダブルウィッシュボーンを投入。リアは先代のコイルリジッドを引き継いだ。形こそ多数派になったが、ランドクルーザー100はこれに加え、上級グレードには走行時の車高を一定に保つ「AHC」や、路面状況に合わせて減衰力を制御する「スカイフックTEMS」などの新機能が搭載されたことで、オンロード、オフロードを問わず操作性を格段に引き上げた。
ついに200psの壁を突破した直6ディーゼルターボ
そしてエンジンには2機種のパワーユニットが設定された。電子制御化された直6インタークーラー付ディーゼルターボ「1HD-FTE型(4163cc/205ps)は、高効率化と高出力化を実現した。なお、このエンジンはランクル200(国内仕様)への採用は見送られたが、より過酷な状況で使用される輸出仕様には搭載されており、その信頼性は現在でもとても高い。
話を戻そう。ガソリンエンジンは、クラウンやソアラなどに搭載された1UZ-FE型をベースに、大型SUV車用にモディファイされたV8「2UZ-FE型(4663cc/235ps)を新開発。235psのパワーを誇りながら、それまでのオフロード4WD車では考えられないほどの静粛性を実現した。
2002年のマイナーチェンジで4速ATから5速ATに進化した
1999年にはVSC(横滑り機能)やアクティブTRC(タイヤの空転防止機能)などの、走破性を高める装備を上級グレードにオプション設定した。さらに2000年には盗難防止装置のイモビライザーを全車に標準装備。2002年のマイナーチェンジで4速ATを5速AT化し、さらに乗車定員8名のワゴンに5名仕様モデルを投入するなど、選択肢の幅を広めている。
ただ国内市場では、高級感漂うこのクルマをオフロードでアクティブに走らせる人は少数で、しだいにオフローダーからのニーズは少なくなっていった。一方で、大型オフロード4WDの存在は一般的に定着し、幅広い層に受け入れられるようになっていった。走破性や耐久性は高いまま、さらに優れた快適性が加わったことで荒野だけでなく、世界を走るオールラウンダーとなったランドクルーザー100は、「高級化=軟弱化」ではないことを見事に証明したのだ。(文:田尻朋美)
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サファリもそこそこ頑張ってる。