高級セダンのイメージが強かったクルマが驚きの走りを見せる!
これまで数えきれないほどのクルマに乗って来た。そのキャリアを通じて、乗った瞬間にクルマの素性の良さを感じ取れるようになり、何故そのような感応性が得られているのかに興味を持つようになる。そして、これらの経験と取材を通じて、ひとつの「解」に到達することとなった。その「解」とは何か。感動を与えてくれたクルマ達と共に解説していきたい。
レーシングドライバーでも操れない! 運転が難しすぎる市販車3選
E38型BMW 7シリーズ。
BMWを初めて操ったのは1980年頃。当時、まだ大学生だった僕は某自動車専門誌でアルバイトをしながらレース資金を稼いでいた。新車の広報車をメーカーから駆り出し、箱根などの山々へ走行シーンの撮影へ向かい、走行シーンの撮影用ドライバーも自分の役目だった。まだ完璧にクルマの挙動やドライビングテクニックを習得しているわけではなかったが、自分の得意課目はレースに通じる「走り」だとして走行シーンではカウンターステアを当てて走ることにこだわっていた。
しかし国産車では、まだリヤリーフリジットサスペンションのクルマが多く、LSD(リミテッド・スリップ・デフ)を装備するモデルもなく、一般道でカウンターステアを当てて走行するのは至難の技だった。とくに電子制御装置もない当時の市販車は、どのメーカーもアンダーステアに仕上げることを主眼に置いていたので、リヤを流して走るテールスライド走法(いわゆるドリフト走行)は行いづらいセッティングになっていたから当たり前だ。ときにダート路面やウエット路面を探し、サイドブレーキを引きサイドブレーキターンをきっかけにしなければならなかった。
そんなある日、BMW 5シリーズ(528e)に試乗することになった。当時BMW 5シリーズといえば超高級車。どちらかといえば大型な部類の高級セダンというイメージがあった。それをテールスライドさせて走らせるのは可能なのか。いざ某所で撮影に臨むと、なんと528eはターンインから極めてバランスよくヨーを発生し、アクセルコントロールを続けるとテールがリバースしだした。そのままカウンターステアを当ててスロットルを踏み込むと見事にパワースライド姿勢に移行し、カメラマンも驚くほどのかっこいいシーンが撮影できたのだ。
※同型の5シリーズ
最初のトライから自分のイメージした通りの挙動が得られ、国産車で四苦八苦して自分のドライビングが悪いのかと悩んでいた頃でもあり、運転操作に誤りがなかったのだと確信することができた瞬間でもあった。「BMWってすごいんだな」。その実力を眼の当たりにして、単なる高級車と思っていた概念が吹っ飛びスポーツセダンとしての地位が僕のなかで確立されたのだ。
しかし、BMWがなぜこれほど意のままに操れるクルマとして完成されているのか、その奥義に迫れたのはずっと後年のクルマとなる。
E38型が「20世紀の最高傑作」だと確信
1994年。BMWの最上級モデルである7シリーズがE38型となって登場。4リッターV8を搭載する740iと5.3リッターV12エンジンを搭載しロングホイールベースの750iLがラインアップされた。その試乗会は何と冬の北海道。一般道と特設コースをスタッドレスタイヤ装着の7シリーズで走行した。
このE38型は数々のエポックメイキングな装備を誇っていたが、なかでもBMWがアピールしたかったのはトラクションコントロールとABSを制御するDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)の制御なのだという。それにしても7シリーズは後輪2輪駆動だ。雪道で試乗させるとは何を考えているのか? と疑問を感じつつ参加した。
試乗ルートの最初に雪道での坂道発進が設定されている。4輪駆動の国産車がスタックしそうに苦戦しながら発進しているのを横目に750iLの巨体がするすると何事もないかのように発進していく様は衝撃的だった。続く特設コースは狭い林道をクローズした雪上ラリーステージのようなコースだ。そこでクラッシュするまで攻めていいといわれたが、DSCの制御が完璧でクラッシュするには壁に向かってステアリングを切り込むしかなかった。こんな悪路を走っていても室内は静かで快適。BMWの技術力の高さに愕然とさせられたのだった。
後日、鈴鹿サーキットでのイベントでも全開走行を許されて走る機会があったが、そこでも750iLは逆バンクのS字コーナーで見事なパワースライドを決める。LSDなどもちろん装備していないが、シャシーバランスの良さで駆動輪の接地が左右で維持され、溢れ出るV12のパワーで自在にコントロールできる。バランスと剛性に優れ、パワーのあるクルマならLSDの有無は関係ないと実感させられる出来事だった。
こうした経験を得てE38型7シリーズに惚れ込んだ僕は以降740i、750iLと計3台を保有したほど。そこで改めて確信したのはE38型が「20世紀の最高傑作」だったということだ。その技術の秘密は、面白い事にレンジローバーの試乗会でいきなり明白になった。
2002年に主にBMW社が開発をした英国製のレンジローバー(3代目)が日本でもローンチされ、その試乗会に参加したときのことだ。僕は、所有するE38型BMW750iLで会場に乗り付け新型レンジローバーに試乗すると、なんとレンジローバーの乗り味がE38型にそっくりなフィーリングだったのだ。そこで開発担当者(独人)に説明を求めると、なんと彼はさも当然だろうという自信に満ちた表情で解説を始めた。彼の話によれば新型レンジローバーのエンジン、サスペンションそしてフロントサブフレームはE38型7シリーズのものを流用しているのだという。そして彼こそがBMW社でE38型7シリーズを開発した張本人なのだ。
彼によればE38型は最高の自信作であり、その感応性の秘訣はサブフレームに隠されているという。見た目ではわからないそのサブフレームは断面内に手の込んだ隔壁が仕込まれていて、それを某サプライヤーに作らせて使用できるのは自分だけだと。遠い異国でE38型と新型レンジローバーの共通性を指摘された彼は嬉しそうで饒舌だった。僕は僕で長年求めていた「解」にたどり着くことができた喜びに満ちていた。
彼の話は続く。BMW社には優れたテストドライバーが多勢いて、彼のようなエンジニアもまた自らテストドライバーとしてステアリングを握る。そして彼らの総意として認められたサプライヤーパーツがBMW車の走り味の実現に大きく貢献している。まったくそのとおりで、その頃試乗したE36型3シリーズや、それに続くE46型も同じ感応性を示していたからだ。
だが、ローバーグループの経営再建に失敗したBMW社は経営的に厳しい環境となり、この時期に多くの優秀なテストドライバー/エンジニアが社外に流出し、BMW車の乗り味を他社で確立する動きが顕著となった。2000年代の独フォードやジャガー社にも重要なキーパーソンが流れたようで、フォード・モンデオや2003年に登場するX350系ジャガーXJなどは乗れば彼らの技と考えられる乗り味に仕上がっていた。
テストドライバー/エンジニアの果たす役割がクルマの感応性能をこれほどまでに支配できているというのは驚きであると共に、明確な「解」として浮かび上がったのだった。
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