アウトランダーと同様に前後トルクの理想的な配分が可能
ヘッドライトに見える部分はシグネチャーランプとウインカー、ヘッドライト本体はバンパーに配置する最新の三菱自動車フェイスに変身した「エクリプスクロス」。
テールゲートのデザインも変更するというほど大きく変わったエクリプスクロスですが、パワートレインも新たにPHEV(プラグインハイブリッド)が設定されたのがニュース。今回、発売開始になったばかりのエクリプスクロスPHEVに試乗しました。
エクリプスクロスPHEVのシステム構成は、2.4Lエンジンと発電用モーター、前・後の駆動モーターに13.8kWhのリチウムイオン電池で、アウトランダーPHEVとまったくといっていいほど同じもの。駆動用モーターはフロント用が60kW、リア用が70kWと後輪がパワフルで、高速走行以外は基本的にモーター駆動だけで走るのも同様です。
前後をモーターで駆動する「ツインモーター4WD」こそが、新型エクリプスクロスPHEVの走りを支えるカギといっても過言ではありません。前後が独立しているということは、多板式センターデフなどの複雑なシステムを組まずとも、前後の駆動トルクを自在に制御でき、エンジンとは比べ物にならないくらいトルク応答性を高められます。
2トン近い重量級ボディでも素直に曲がっていく印象
そして、このデバイスを活かすのが「理想前後駆動トルク配分」。これは“車両としてもっともトラクションを稼ぐことができ、また旋回性能も最大にできるような駆動配分”の理論値で、路面ミューが低くなると直結4WDの配分に近づき、路面ミューの高い(グリップの高い)舗装路ほど、トルク配分によって走りが大きく変化します。エクリプスクロスPHEVは路面ミューが大きく影響する横Gをパラメータとして、前後方向の加速度と合わせて演算することでリアルタイムに理想前後駆動トルク配分を導き出しています。
試乗したのは箱根の峠道で、ステアリングを大きく切り込むような低速コーナーが連なるワインディング。オプションを装着した状態で車両重量1980kgもある試乗車ですから右に左にステアリングを大きく切り込むようなシチュエーションは得意ではないはずですが、非常に素直に曲がっていく印象を受けました。
さらにドライブモードを「ノーマル」から、新型エクリプスクロスのPHEVだけに設定されるという「ターマック(舗装路)」に変えてみると、より曲がりたがるキャラクターに変身します。といってもオーバーステア傾向になるわけではなく、あくまでもドライバーの意思に忠実に躾けられています。
重量増などもあってハイブリッド燃費はやや期待外れ
もちろん、駆動系だけで意のままのハンドリングを生み出しているわけではありません。フロントのエンジンルームを中心に強化されたボディや、PHEV専用セッティングを受けた電動パワーステアリング、ショックアブソーバーの設定なども、そのハンドリングを高める要素として見逃すことはできません。
ただし、アウトランダーPHEVのシステムを、バッテリーを含めてほぼそのまま積んだこと、ボディ剛性アップにプライオリティを置いたため軽量化はそれほど進められなかったというネガは、燃費性能に現れています。
燃費・電費についてエクリプスクロスPHEVの主なカタログスペックを整理すると、一充電でのEV航続距離は57.3km、そして外部充電した電気を使い切ったあとのハイブリッド燃費は16.4km/Lとなっています(いずれもWLTCモード値)。
ようはハイブリッドカーとして運用したときの燃費が16.4km/Lというわけで、ユーザー期待値からするともう少し頑張ってほしいと感じるのではないでしょうか。新型エクリプスクロスには、1.5Lガソリンターボ車もラインナップしていますが、そちらのWLTCモード燃費は12.4~13.4km/Lと、さほど変わらない印象を受けます。たとえば、同じプラグインハイブリッドのSUVでいえばトヨタRAV4 PHVのハイブリッド燃費が22.2km/L(WLTCモード)をマークします。
開発エンジニアによれば、アウトランダー用プラグインハイブリッドシステムを移植することが最優先事項で、エクリプスクロスにあわせたチューニングは考えなかったとのこと。話ぶりから、そこまでする余裕がなかったという風に感じましたが、これほど変身したエクリプスクロスですから、燃費面でも進化していて欲しかったというのも正直な気持ちです。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)、写真:望月浩彦、山本晋也
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みんなのコメント
トヨタと比べてどうのこうのって叩くんだ。
ただ三菱は電気屋の方で良いモーターある筈だからEV車になったらトヨタなんて逆転するかもよ?w
記事は書くけど、ご贔屓なメーカーじゃないから
飼い主のメーカーに迷惑が掛からないように
他のメーカーのクルマはブッ叩いておこうって
ことでしょ。