ひとつの文化を創ったビートルベースのバギー
1960年代、アメリカでデューン(砂丘)バギー、別名ビーチバギーが大流行した。フォルクスワーゲン ビートルのプラットフォームをベースに、開放感あふれるアッパーボディを装着した「メイヤーズ・マンクス」がその始祖である。
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「メイヤーズ・マンクス」の生みの親、ブルース・メイヤーズの肩書きは多岐にわたっている。サーファー、発明家、アーティスト、兵士、そしてレースカーのドライバー。多くの顔をもつメイヤーズが、フォルクスワーゲン ビートルをベースに仕立てたバギー「メイヤーズ・マンクス」は、1960年代の南カリフォルニアにおいてひとつの自動車文化を醸成した。
冒険一色の人生を送ったメイヤーズ
2021年2月19日、ブルース・メイヤーズはカリフォルニアの自宅で94年の生涯を閉じた。彼はファイバーグラス製のボディをまとったデューンバギーを開発し、サーファーやオフローダーに砂浜を縦横無尽に飛び回ることのできる自由な足を与えた。メイヤーズの会社で製造したオリジナルの「メイヤーズ・マンクス」は約7000台に過ぎなかったが、のちに数え切れないほどの模倣品が市場に溢れ、同車にインスパイアされたバギーは世界に25万台以上存在すると言われている。
生前、メイヤーズは北米フォルクスワーゲンが行ったインタビューでこう語っている。
「私の人生は冒険一色でした。人々の人生にも冒険があって欲しい。そう願っているんです」
帆船づくりで出合ったファイバーグラス
ロサンゼルスで生まれたメイヤーズは、ビーチやサーフィン、自動車に囲まれて育つ。彼の父親は、有名な自動車販売店を営んでいた。第二次世界大戦が勃発して徴兵されたメイヤーズは、最初にマーチャント・マリーンズに入隊、次に海軍へと転属する。1945年、航空母艦USSバンカーヒルでの任務中に敵機からの攻撃に遭遇。およそ400人のクルーが命を奪われたが、メイヤーズは生き残った。仲間の船員を救出しようと、彼は海中を泳ぎ回ったという。
戦争が終わり、自宅に帰ったメイヤーズはアートスクールへ入学。多くの時間をサーフボードの上で送りつつ、帆船の作り方を学んだ。帆船づくりには、当時としては新しい素材であったファイバーグラスが用いられていた。
友人の多くが愛用していたビートルに着目
いつしか、メイヤーズはカリフォルニアで暮らすの仲間の多くがフォルクスワーゲン ビートルを愛用していることに気がつく──ボディパネルのほとんどを取り外した状態で。乾いた砂に埋め尽くされ、急激な凹凸がそこここに現れる海辺では、伝統的な四輪駆動車も航行しづらかった。
1964年、メイヤーズはビートルの車台と駆動装置にファイバーグラス製のタブを載せ、クロームで縁取ったバグ・アイ(虫の眼)スタイルのヘッドランプを取り付けたオリジナルのマシンを手作りした。彼の心に浮かんでいたのは、ホットロッドの雰囲気を感じさせる楽しく趣に溢れたプロダクト。かくして“Old Red(オールド・レッド)”と呼ばれる、手頃で軽量なバギーが完成した。
伝説のオフロードレースで掲げた栄光
メイヤーズは言う。「びっくりするくらい大成功しましたね。瞬く間に、みんなこの幸せで小さなクルマを欲しがった。これは友情と愛情をそのままカタチにしたものだったんです」と。
それから数年後、メイヤーズと友人は彼らのバギーをメキシコへと運んでいった。そこで待ち受けていたのは、砂漠の中を延々と走り抜けねばならない過酷なレース。わずか数日の準備時間しか残されていなかったものの、メイヤーズとコ・ドライバーは見事その闘いを制してしまった。このレースは、のちに「バハ・1000」と命名され、世界で最も有名なオフロード競技のひとつとして知られるようになる。
伝統を打ち破った男と、デューンバギー
メイヤーズは会社を立ち上げ、オリジナルの「メイヤーズ・マンクス」を生産した。しかしあまりに魅力的であったが故か大量の亜流が次々に生まれ、ついにはメイヤーズのショップは閉店に追い込まれてしまう。
ごく最近になって、メイヤーズは新たにバギーの生産を再スタートしていた。もちろんビートルをベースにして。生涯、彼はデューンバギーを愛し続けたのである。そして、オリジナルのオールド・レッドは、2014年にNational Historic Vehicle Register(歴史的に重要な自動車を認定するアメリカの機関による認証)に登録。そのデザインはいまも色褪せることなく、世界中に数多くのファンを生み出し続けている。
メイヤーズは、次のような言葉を残している。
「私は単に、伝統を打ち破るライフスタイルを送っていたひとりの人間に過ぎません。そして、それを実現してくれたのがデューンバギーだったのです」
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みんなのコメント
皮肉ですね
某国製に駆逐される
日本製品のよう