一部改良を受けたマツダの「CX-5」の特徴や魅力を、実車に触れた小川フミオが考えた。
大きくイメージが変わる
テコ入れ策はいかに──マツダの新しい“レトロスポーツエディション”に迫る!
都会派SUVとしてマーケットではしっかりポジションを築いている感のあるマツダ「CX-5」。2023年9月4日に、一部商品改良がおこなわれた。
CX-5のマイナーチェンジの眼目は、別記事で既報のとおり、「レトロスポーツエディション」の設定だ。
そもそも、2017年に発売された現行CX-5だけれど、ボディカラーだけで、ここまで大きくイメージが変わるというのが、私にとっての発見だった。
聞けば、レトロスポーツエディションは、既存の「ブラックトーンエディション」と「スポーツアピランス」のあいだに入るグレードという。
新設の目的として「ブラックトーンエディションからの買い替え需要促進を狙ったもの」と、マツダの広報担当者から説明を受けた。
レトロスポーツエディションとは、ちょっとふしぎな言葉であるが、もとは「ロードスター」で試して、市場の評価が高かった仕様に準じたもののようだ。2022年11月の改良で「ジルコンサンドメタリック」という新塗色を導入。これまでになかった色という点ではあたらしいが、同時に昔風のイメージを狙ったコンセプトが興味ぶかかった。
レトロスポーツエディション投入の背景CX-5レトロスポーツエディションの実物をみると、かなり似合っていた。グリル、ドアマウンテッドミラー、ホイールなどをグロスブラックで塗ったのも対比がきれいだ。CX-5は、都会的なイメージをもつSUVとしては希有な存在で、オフロード感を出すより、こちらのほうがよく合っていると私は思う。
CX-5の売れ行きは、マツダという企業にとって重要な生命線なので、あまりひとつの方向に振り切りたくなかった……というマーケティング上の戦略もあったろう。とはいえ、悪路を走りまわるクルマというイメージは、メカニズムの面からいっても、いまひとつ似合わない気がする。
それに対し、ジルコンサンドメタリックの塗色や、パーフォレーション加工の人工皮革「レザレット」を採用したシート座面など、今回のレトロスポーツエディションは、デザイン性の高さゆえCX-5を好む層の好みにハマりそうではないか。
「若いひとをメインターゲットに、時を経てもなおよいものという価値観をこの色(ジルコンサンドメタリック)で表現したい」
マツダ株式会社デザイン部の星正広はそう説明してくれた。
フロントグリルにはじまり、ヘッドランプ、ホイール、ドアマウンテッドサイドミラー、モールディングにクラディング、さらにリヤのテールカッターにいたるまで、すべての意匠が精緻でしっかりつくられている。それゆえ、現行CX-5は発売から7年目を迎えても、まったく古びて見えないのかもしれない。そのなかで、新味を出すには、ボディ塗色は効果的な手段だろう。そして、それがうまくいったのが、レトロスポーツエディションなのだ。
いっぽう、そろそろ大型モニターを含む新世代のインフォテイメントシステムをはじめデジタライゼーションを進めてもいいだろう。
エンジンのダウンサイジング化(より省エネルギー化)、それに安全および運転システムの充実など、市場での陣取りをより強く進めるためには、あらゆる面での進化は必要不可欠。そのあたりは次期型に期待だろうか。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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