2021年10月7日、マツダは2022年以降のクロスオーバーSUV商品群の拡充計画をアナウンス。米国アラバマ州ハンツビル新工場で生産する「CX-50」や、「CX-60」、「CX-70」、「CX-80」、「CX-90」を2022年から2023年にかけて、日本、北米、欧州地域に導入すると発表した。
本稿では、同年11月発表された「CX-50」にもふれつつ、クロスオーバーSUV拡充計画の目的、そしてマツダ経営の今後を解説していく。
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文/鈴木直也、写真/MAZDA
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なぜ、いま新型クロスオーバーSUV補充計画を発表したのか
2021年10月に発表されたマツダのニューモデル計画が話題をよんでいる。それをざっくり説明すれば今後のSUV計画を先行発表したもので、数字二桁のCXシリーズを、50から90まで5車種新たに出しますよ、という告知だ。
この5車種を2022年から2023年にかけて次々デビューさせ、『グローバルに成長を続けるセグメントにおいて、最新の環境性能と「走る歓び」を両立させた多様な選択肢をお客さまに提供してまいります』という。
2年間で5車種だから単純計算で5カ月ごとに新車を投入するというハイペース。カーボンニュートラル騒ぎやコロナ禍で遅延していた計画があるにしても、2022年からのマツダはただゴトじゃない新車ラッシュになる。
ちょっと不思議なのは、今なんでこんなに具体的な新車計画を発表したのかだが、そこにはマツダがいま直面している課題とそれを解決するロードマップが描かれているわけで、それをいち早くユーザーに伝えたいという思いがある。
マツダの課題として誰もが指摘するのは、まず第一に遅れている電動化バリエーションの拡充、そして第二に直6FRのラージ商品群のローンチ。この2つの大きなテーマを克服しないと、マツダの未来は厳しいものとなりかねない。
この重いテーマに「マツダはこうやって対応する予定です」という具体的な処方箋を示し、マツダファンをはじめマーケット関係者に安心感を与えるのがもっとも重要なポイントだ。
これまで、われわれクルマ好きはマツダの新車戦略というと直6FRプラットフォームが興味の中心で、「プレミアム市場に挑戦するマツダの直6FRすっごい楽しみ!」と無邪気にワクワクしてきた。
ところが、2020年10月の菅政権によるカーボンニュートラル宣言によって、日本でも内燃機関の終焉についての議論が急浮上するなど、わずか2年ほどで自動車業界を取り巻く社会情勢は予想を超えて激変した。
もちろん、マツダにも長期的な電動化戦略はあるのだが、それは「電動化は内燃機関と相互に補完し合うべき」というあまりにもストレートな正論。ロジックとしてこれは少しも間違っていないけれど、世論が冷静さを失っているときに(今のEUのBEV偏重は正気じゃないとぼくは思っている)正しいロジックが通用するとは限らない。
「直6FRもいいけど電動化は大丈夫なの?」
現時点でマツダが最優先すべきテーマはむしろコレ。今回のSUV商品群拡充計画の発表は、むしろそっちを注目すべきと思うのだがいかがだろう。
米国専売「CX-50」の立ち位置と欧州市場での厳しさとは?
2022年から2023年にかけて投入される、クロスオーバーSUV商品群の第1弾として登場した新型CX-50
さて、こういう観点で今回の「2022年以降のクロスオーバー商品群の拡充計画」の発表を読んでみると、ぼくにとって意外だったのはCX-50の立ち位置だ。
今回公表された5車種のうち、CX-50は唯一スモール商品群に分類されるクルマ。導入される市場は米国のみとされている。それゆえ、当初はラージ商品のためにCAFE値(Corporate Average Fuel Economy:企業別平均燃費)を下げるエコカーと予想していた。
CX-50はマツダとトヨタの合弁で建設したアラバマ州ハンツビル工場で造られる。この工場でトヨタはカローラクロスの生産が発表済みだったので「CX-50とカローラクロスは姉妹車? ということはハイブリッドあり?」と早合点。CO2規制の厳しい欧州でヤリスハイブリッドのOEM供給を受けたように、北米ではカローラクロスハイブリッドのマツダ版がCX-50、そう予想したわけだ。
ところが、約1ヶ月後に発表されたCX-50の概要を見ると、パワートレーンはNA2.5Lとそのターボ仕様のSKYACTIV-Gオンリー。うわさされていたハイブリッド仕様は「今後追加の予定」にとどまっている。
まぁ、プレスリリースをよく読むと、CX-50については「SUVらしい存在感やオフロード性能が求められる米国に、新たなラインアップの中核として導入するクロスオーバーSUV」とある。
電動化についてはちゃんと「ラージ商品群では各国での電動化ロードマップに対応し、さまざまな電動化パワートレインの選択肢を提供していきます」と書いてあるんだけど、いちばん数多く売れそうなクルマの電動化が後回しとはなぁ、というのがぼくの正直な感想。ここはもうちょっと頑張って欲しかった。というわけで、当面マツダ電動化戦略の主役となるのはラージ商品群のPHEVや48Vマイルドハイブリッドということになる。
ボディラインナップとしては、CX-60とCX-80が標準ボディで、それぞれ2列シートと3列シート。CX-70とCX-90は北米市場中心のワイドボディで、同様に2列シートと3列シートのバリエーションが用意される。
パワートレーンとして、もっともCO2に厳しい欧州には直4ガソリンエンジンのPHEVを中心に、SKYACTIV-XやSKYACTIV-Dの48Vマイルドハイブリッド。ラージ商品群の主戦場たる北米市場には、直6ガソリンターボとPHEV。そして日本市場にはSKYACTIV-Dの48VマイルドハイブリッドとPHEVが導入される。
この陣容、北米市場と日本市場はある程度の手応えが予想できるが、はたして欧州市場はどうだろう。
たとえば、メルセデスの新型C300eは、2L直4ターボ204psのエンジンと95kWのモーターを搭載。25.4kWhのバッテリーでWLTPモードEVレンジ100kmを達成している。ちなみに、EUルールはPHEVのCO2排出量を超優遇しているから、C300eのカタログCO2排出量はわずか14g/km! CAFE数値低減に大きな効果がある。
2022年デビューのブランニュー新型車だから、マツダのラージPHEVも同等レベルの性能が欲しいところだが、ここまでやればおそらく価格もC300eに近づくはず。アウェイの欧州マーケットで、老舗のプレミアムブランドと勝負するのは楽な戦いではない。
しかも、優遇されているPHEVすら欧州では逆風吹きまくりで、メルセデスは開発終了を明言。まぁ、ベンツは2025年以降のニューモデルをすべてEV専用にすると言っているわけだから当たり前なのだが、欧州ではPHEVですらこの有様ということは覚悟しておく必要がある。
ただ、不確定要素が多すぎる欧州市場を別とすれば、マツダのラージ商品群は意外にイケるんじゃないかという可能性はある。
低コストかつ柔軟な開発がSUV拡充計画成功の道しるべとなるか
2022年1月から生産が開始される新型CX-50
ひとつはコスパの良さで、これはマツダが長年培ってきた一括企画(またの名をモデルベース開発)の効果をフルに発揮する勝負どころとなるからだ。少ないリソース(国内の完成車組み立て工場は宇品と防府の2箇所)で数多くの車種を生産しなければならない事情があるから、マツダの工場は以前から混流ラインによるフレキシブル生産システムに定評があった。
これは、開発チームについても同様で、限られたマンパワーで多種多様な開発を行うための工夫では業界随一。パワートレーンやボディ・シャシーに関して、もっとも重要なコア(例えば燃焼や衝突など)部分を徹底した実験をふまえて数値モデル化し、その数値モデルをベースにバリエーションを開発するモデルベース開発(MBD)の先駆者として知られている。
この開発/生産の両面における革新に一定のメドがついたことが、異例ともいえる大規模な新車計画の前倒し発表に踏み切ったひとつの理由。要するに、多種多様なパワートレーンやボディタイプを一気に開発し、それを低コストかつ柔軟に生産する自信がある、ということなのだ。
マツダは年産150万台クラスのメーカーで、ラージ商品群の当面の目標をその10%とすると年15万台。いま25万台の北米市場に数万台上乗せすることができれば、グローバルで15万台というのはそれほど非現実的な目標でもない。
ついでにいえば、COP26(気候変動に関する国際連合枠組条約締結国会議第26回)では総論賛成各論反対で意見がまとまらず、石炭火力や内燃機関廃止について一致した宣言が出せなかった点も注目。これまでEUが一方的に決めてきたルールに、批判の声が高まってきている。マツダの電動化戦略に少しだけ時間の余裕が生まれたとみることも可能だ。
われわれ日本のクルマ好きとしては、2022年にデビューするであろうCX-60のデビューを、まずは楽しみに待つしかないのですが、ホントにこのチャレンジ、ぜひ成功してほしいものでございます。
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そりゃ日本じゃ売れないわ