海千山千の評論家たちによる、限界領域ギリギリのテストドライブもちろんいいが、より「ふつう目線」で試乗してみたら、見えてくるものもあるのではないだろうか。
そんな趣旨ではじまった、ベストカー本誌にて地味ーに人気らしい(?)「よってたかって評価する」。今回の相手は初の輸入車、プジョー208 GT Line。
これが日本再上陸の切り札!? オペルの小型SUV 新型モッカがやってくる?
価格293万円、全長4095mmのBセグコンパクト。発売からここまでの評価も上々というフランスからの刺客を、編集部の面々はどう判断したのか? 初の輸入車レビューということで今回は自動車評論家の意見も聞いてみた!
【画像ギャラリー】ヤリスとほぼ同じサイズ感!!! プジョー208 GT Lineをギャラリーでじっくりチェック!!!
※本稿は2020年9月のものです
文・写真:清水草一、永田恵一、ベストカー編集部/撮影:西尾タクト
初出:『ベストカー』 2020年10月10日号
■部内でも評価は分かれ気味? プジョー208 GT Lineってどんなクルマ?
4095mmの全長を持つBセグメントコンパクトカー。1.2L直3ターボを搭載したガソリンエンジン車のほか、ピュアEVも用意される(後述)。ガソリン車のグレード構成は、「Style」「Allure」「GT Line」の3グレード。GT Lineは最上級グレードとなり、写真の3本の爪でひっかいたような形状のフルLEDヘッドライトほか、17インチアルミホイールなどを装備。
7月に日本での発売開始以後、市場の評価は上々の2代目208、だがベストカー編集部員は甘くない!?
■編集部イイボシはこう見た!
エンジンは、街乗りでは最高だが、一発の加速は少々物足りず、乗り心地は予想よりも硬め。GTラインではなく、アリュールなら私の想像に近い柔らかな乗り味だったのかもしれない。
プジョー208はベーシックなアリュールか、スポーツ性を狙うならGTIを待つべきか。つまり、GTラインはどっちつかずの印象だったということだ。
ただし、それでも走りに関しては国産コンパクトの主要モデルをはるかに凌駕している。インテリアは遊び心にあふれていて質感も高く、エクステリアは高級感さえある。
コンパクトクラスを狙う運転好きにはいいクルマ。今のPSAの元気さを実感した。
プジョーといえばライオン。だが日本のナンバーを装着すると、足の部分が隠れてしまうのがチト悲しい
・パワー感:★★★☆☆
・ハンドリング:★★★★☆
・お買い得度:★★★☆☆
■編集部ウメキはこう見た!
なーんかドラポジがしっくりこないのよ。前後スライドやらリフターをカチャカチャ動かしても、ペダルで合わせるとステアリングが決まらない。
チルトにテレスコであれこれ試したけど、結局、メーターって楕円ハンドルの上から見るの? スポークの隙間からは見えないよね?
3本の爪痕のようなヘッドライトと、そこから下方に伸びるデイタイムランニングライトが作り出すフロントフェイスは、注目度高し。撮影場所への移動時など、多くの人が反応していた
この独創性、プジョーっていうよりシトロエンっぽい。ホログラムのように浮かび上がるメーター表示は美しい。
で、走り出すと、思っていたのとチト違う。昔の猫足プジョーを想像していたんだけど、サスの縮み側が硬めでタンタンタンと入力を感じる。
写真ではわかりづらいが、メーター表示は奥ゆきを感じさせる近未来的なもの。楽しい
伸びはじわーっとして猫足っぽいんだけど。なら、縮み側ももっと動かしていいかもね。
・パワー感:★★★★☆
・ハンドリング:★★★☆☆
・お買い得度:★★★★☆
■編集部ワタナベはこう見た!
これは楽しい! ステアリングを切った瞬間からプジョーらしいキビキビ感と小気味よさが味わえて、小さいクルマならではの愉しさにあふれていたのが印象的。
細かい振動は感じるけど、DS3クロスバックから採用のCMPプラットフォームの威力でしょうね。CMP未採用のシトロエンC3よりしなやかだし。
フェンダーアーチがブラックに塗られ、精悍な印象のGT Line。3本の爪をモチーフにしたテールランプは全グレードで共通
1.2Lターボも車重1200kgに満たない208には必要十分で、高速走行もノーストレス。上下を水平にカットした2スポークの小径ステアリングホイール、遠近2層式のバーチャルメーター「i-Cockpit」も近未来的で雰囲気抜群。
インパネにソフトパッドを多用しているのも嬉しいポイントですな。
・パワー感:★★★☆☆
・ハンドリング:★★★★☆
・お買い得度:★★★★☆
■編集部イイジマはこう見た!
乗り込んだ瞬間からワクワクさせてくれるクルマです。1.2Lターボはガバッてアクセル踏んじゃうと「やっぱり100ps」ってなるけど、それやらなければ、思った以上にクルマが前に進みます。
ハンドリングも上々。レーンキープアシストの反力の強さが気になる時もあるけど、全体に好きな雰囲気です。
ユニークで印象的なコックピットまわり。楕円形のステアリングは意外にも使いやすい
でもドライブモードはひょっとしたらいらないかも。「スポーツ」にすると車内で疑似エンジン音が唸るんだけど、街乗りだとなんか気ぜわしく感じちゃう。
そんなワタシには受注生産の最廉価グレード「スタイル」がいいのでしょう。239万9000円だし。フルLEDヘッドライトは惜しいけどしかたなし。
メカ好きのココロに訴えるトグルスイッチ。「コクッ」という操作フィールも心地よい
・パワー感:★★★★☆
・ハンドリング:★★★★☆
・お買い得度:★★★☆☆
■編集部ババはこう見た!
先代の印象の薄いモデルから、みごとに大胆にモデルチェンジ。しかも、デザイン優先のスタイルと思いきや、ある程度の室内空間を確保。
確かに後席は狭い。でも走りを楽しむドライバーズカーというキャラだと思えば、ドア4枚あるだけでありがたい、と思わねば(ドア2枚より使い勝手は格段にいいので)。
当たりが柔らかく、体を包みこむような感触のシート。ステッチは多色使いでオシャレ
走りは気持ちいい。四輪が路面にぴたっと張りつき、前輪でぐぐ~ッと引っ張られるように心地よく加速。「スポーツ」モードも試したけど、「ブロロ……」という音の演出があり、ちょいと腰砕け(笑)。
「ノーマル」で充分です。サイズ感も手ごろな格好いいハッチバック作り、やはりPSAはうまいと思う。
ドア開口部こそ狭いが、乗り込んでしまえばさほど狭さは感じない後席。街乗りなら余裕だ
・パワー感:★★★★★
・ハンドリング:★★★★☆
・お買い得度:★★★☆☆
■編集部フルカワはこう見た!
「こんなにカッコよかったのね」。というのが、新型208の実車を初めて見ての印象。
GTラインの黒く塗られたフェンダーが、昔のオーバーフェンダー車みたいだ。室内もスポーティで、シートのフィット感も心地いい。
わずか1750rpmで最大トルクを発生するため、ジワッとアクセルを踏んだ時の反応がよく、街乗りが楽しい
走りは1.2Lの3気筒ターボということで力強いというほどではないけれど、低速域から充分なトルクを発揮するタイプ。ハンドリングも含めてキビキビと走れて、とても軽快。力の入ったスポーツ系じゃない、ほどよいスポーティさが味わえる。
最近はコンパクトクラスもSUVが人気だけど、208はコンパクトハッチならではの走りが楽しい魅力的な一台だと思いました。
・パワー感:★★★☆☆
・ハンドリング:★★★★☆
・お買い得度:★★★☆☆
■編集部マツナガはこう見た!
キャラが非常に立ってて、魅力的なクルマですね! クセのあるデザイン、内装の未来感、フォーミュラカーみたいなステアリング形状、体をがっちりホールドしてくれるシート……。オトコゴコロをくすぐるんですよ。
コレがコンパクトなパッケージに詰まってるってのが素晴らしい。思わず欲しくなっちゃいましたね……。
サイドビュー。空間の「無駄」を感じさせないフォルムに好感を持つ人は多いかも知れない。ちなみに全長×全幅×全長は4095×1745×1465mm、ヤリスは4115×1700×1475mmなので、ほぼ同じサイズだ
走りは1.2Lターボエンジンが低速からしっかりトルクを出してくれるのでアクセルを踏むのが楽しいです。ちなみにプジョーの1.5Lディーゼルも楽しいエンジンなので、そちらと天秤にかけたいですね。
唯一不満なのは足元。左足を休めるフットレストが小さい……。慣れたら問題なくなりましたケドね!
・パワー感:★★★★☆
・ハンドリング:★★★★☆
・お買い得度:★★★★☆
■今回はチョット豪華に(?)評論家の意見も聞くぞ
●清水草一はこう見た!
同じPSAグループのホットハッチ・DS3のオーナーとしてはですね、新型208は、スポーティな性格はそのまま、なにもかもが熟成されたっていう印象だよ!
サスはかなりスポーティだけど、バタつかずしなやかになった。楕円小径ステアリングのおかげもあって、ハンドリングはとってもクイック。3気筒の1.2Lターボのフィーリングは、相変わらず中速トルク炸裂で、実用域がビューンと伸びてとっても気持ちいい。
しかもATが大幅に進化してる! 6速から8速になったことよりも、プログラミングがこなれて変速が上手になったから、もはや弱点ナシ! 室内は狭いけど、全体にシトロエンC3との差別化はバッチリだね!
・パワー感:★★★★☆
・ハンドリング:★★★★★
・お買い得度:★★★★☆
3気筒の不利を感じさせない1.2L、直3ターボ。100ps/20.9kgmを発生
●永田恵一はこう見た!
乗る前に感じたのは「ヤリスと同等の居住性を考えると、全長、特にノーズが長すぎ」ということだった。まあ日本では趣味のクルマになる輸入車なら、それも構わないけど。
乗り始めるとシトロエン以上にアヴァンギャルドな小径ハンドルに違和感を覚えたが、足はよく動いているし、エンジンも3気筒の悪さを感じさせずと、いい意味でふつうの印象。
しかし10分ほど乗ると、小径ハンドルは取り回しの際に楽な点など、208が体になじむように好印象になってきた。
ここで思い出したのが国沢光宏師匠に言われた「フランス車はわかるまで時間がかかる」という言葉だ。というわけで208に試乗することがあったら、なるべく長い試乗を薦める。
・パワー:★★★☆☆
・ハンドリング:★★★★☆
・お買い得度:★★★☆☆
CMPプラットフォームはB、Cセグメント用の新世代プラットフォームで、居住空間やラゲッジ容量などをほぼ変えずに内燃機関、EVのすべてのパワーユニットに対応可
■まとめ
乗り込んだ瞬間から好きか、そうでないかが、ハッキリ分かれるタイプのクルマと言えそうだ。好きな人はパワーフィールから乗り味まで、すべてが好ましく思え、苦手な人はネガな部分に目がいきがち。
なので208の購入を考えている人は、必ず実車を見て、コックピットに乗り込んでみよう。もしそこで好きとなったら、購入一直線、かもね。
■プジョー 208GT Line主要諸元
・全長×全幅×全高:4095×1745×1465mm
・ホイールベース:2540mm
・車両重量:1170kg
・エンジン:直3 DOHC+ターボ
・総排気量:1199cc
・最高出力:100ps/5500rpm
・最大トルク:20.9kgm/1750rpm
・トランスミッション:8速AT
・WLTCモード燃費:17.0km/L
・価格:293万円
【番外コラム】208のもうひとつの個性 100%ピュアEV e-208
発表時からガソリンエンジンモデルとともに用意されていたe-208。50kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載するピュアEVだ。
モーター出力は選択したドライブモードによって可変する。パフォーマンス重視の「Sport」は136ps/26.5kgm、日常の快適性にフォーカスした「Normal」は109ps/22.4kgm、そして航続距離の最大化に最適な「Eco」は82ps/18.4kgmとなっている。
最大航続可能距離は340km(欧州WLTPモード)。気になる充電時間は3kW/200V充電で約18時間、6kW/200V充電で約8時間(ともに100%まで)。
CHAdeMO方式の急速充電にも対応しており、その場合は約50分で80%まで充電可能。日常での使い勝手はかなり優秀といえる。
e-208。グレード構成は「Allure」と「GT Line」の2グレード構成で、Allureは389万9000円。GT Lineが423万円。
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みんなのコメント
確かにこの手のタイプは評価が分かれて当然のジャンルなので、忖度なしに皆さんの率直な感想が表れてて読んでて面白かったです。
評価にはありませんでしたがこの車種はシートが素晴らしいです☆
なぜこういうシートを国産車では作れないんだろうと思うくらい上質で、とっても居心地が良くなります。結局車って座ってる時間がほとんどなわけで、国産車にはそこをもっと重視して車を出していただきたいと思います。