■スペックだけでなく見た目もゴツいコンプリートカーを振り返る
市販車をベースに外観のドレスアップやエンジンのチューニングは、1970年代には日本でも盛んにおこなわれていましたが、違法改造というケースも多く、アウトローなイメージで見られていました。
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その後、クルマのチューニングも合法的におこなわれるようになり、いまでは市民権を得て、自動車メーカーやメーカーの関連会社も参入しています。
なかでも、カスタマイズされたクルマを新車として販売するコンプリートカーは、性能が優れるだけでなく信頼性もあり、いまでは人気商品となって、各社とも力を入れている状況です。
そこで、これまで販売されたコンプリートカーのなかから、とくに迫力あるモデルを5車種ピックアップして紹介します。
●日産「NISMO 400R」
1995年に発売された日産4代目「スカイラインGT-R(R33型)」をベースに、1996年にニスモから販売されたコンプリートカーが「NISMO 400R」です。
車名の400Rは、搭載された「RB-X GT2型」エンジンが、最高出力400馬力を発揮することに由来しています。
エンジンはベースの2.6リッター直列6気筒ツインターボ「RB26DETT型」の排気量をアップして2.8リッターとし、鍛造の専用ピストン、コンロッド、クランクシャフトの採用や、N1タービン、強化エンジンブロック、燃焼室形状が最適化されたシリンダーヘッド、専用ECUなどを搭載。
なお、RB-X GT2型は中低速域のトルクアップを重視したセッティングとなっており、本来の実力は400馬力以上だったといわれています。
外観は各エアロパーツとボンネットが専用品とされ、全幅が50mm拡大されたオーバーフェンダーを装着。軽量化とともに迫力あるリアビューを演出するチタン製マフラーも、400R専用に開発されました。
一方、サスペンションやブレーキなどは従来のニスモ製スカイラインGT-R用パーツが組み込まれていますが、これは専用品でなくとも十分な性能を持っているという証といえます。
NISMO 400Rの価格は1200万円(消費税含まず)と、ノーマルよりも約700万円上乗せされていましたが、カスタマイズの内容や信頼性を考えると、適正な価格といえるでしょう。
なお、NISMO 400Rは99台限定で販売を予定していましたが、実際にデリバリーされたのは50台前後とされています。
●スバル「インプレッサ S201 STiバージョン」
スバルのモータースポーツ活動を担ってきた「スバルテクニカインターナショナル」(以下、STI)が手掛けたコンプリートカーは、これまで数多く存在します。
そのなかでも異色なモデルが、初代「インプレッサWRX」をベースとしたコンプリートカーである「インプレッサ S201 STiバージョン」(以下、S201)です。
2000年に発売されたS201は、ラリーをイメージさせるインプレッサにおいて、オンロードでの走行性能向上を追及したモデルとして開発されました。
エンジンは2リッター水平対向4気筒ターボ「EJ20型」をベースに、専用ECUと吸排気系の変更により、最高出力は300馬力まで向上。
足まわりには車高調整式サスペンションと、ピロボールを用いたリンク類が組み込まれ、レスポンスに優れたダイレクトな操縦性を実現しています。
そして外観は、グリル一体式のフロントエアロバンパー、大型エアスクープ、砲弾型ドアミラー、サイドスカート、ダブルウイングリアスポイラー、ディフューザー形状のリアエアロバンパーなどが装着され、ノーマルとはまったく異なる大迫力のフォルムに変貌。
およそ20年間にSTIが製作した歴代コンプリートカーのなかでも、ここまで外観に手が入れられた例はありません。
なお、限定台数は300台で、当時の価格は390万円(消費税含まず)と、意外と安価に設定されていました。
●トヨタ「86 GRMN」
トヨタのモデルでは、現在もGAZOO Racingが監修・開発したコンプリートカーやパーツの販売がおこなわれていますが、なかでも頂点に君臨するモデルが「GRMN」シリーズで、そのなかの1台が2016年に発表されたコンプリートカー「86 GRMN」です。
86 GRMNは、ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦を通じて得られた知見を生かして開発され、エンジンでは、吸排気系の変更に加え、エンジン内部パーツの低フリクション化により、アクセルに対する応答性を向上。
ボディではカーボン素材のボンネットとトランクリッド、ルーフパネルに加え、ポリカーボネイト製のリアウインドウ、クォーターウインドウの採用などで軽量化と低重心化を図っています。
また、カーボン製リアウイング、フロントスポイラー、バンパーサイドフィンなどの各エアロパーツを装着し、力強さとスポーティな印象を表現。
補強材の追加によるボディ剛性向上とともに、サスペンションの専用チューニング、前後異径タイヤの採用、ブレーキ性能強化など、「走る」「曲がる」「止まる」の基本性能向上を追求しています。
内装では2名乗車仕様となっており、専用のスポーツシート、小径ハンドルの採用など、まさに走るためだけにつくられたストイックなモデルです。
86 GRMNは100台限定で発売され、価格は648万円(消費税込、以下同様)でした。
■オーテックジャパンの総力が結集したマーチとは
●トムス「センチュリー」
トヨタの最上級モデルとしてVIPのためにつくられたプレステージサルーンの「センチュリー」は、2018年6月に21年ぶりのフルモデルチェンジをおこなったことで、話題となりました。
このセンチュリーを、さらにラグジュアリーかつゴージャスに仕上げたのが、モータースポーツ活動を通じてトヨタ車を知り尽くしたトムスによるコンプリートカー「トムス センチュリー」です。
高性能で高品質なショーファードリブンカーであるセンチュリーのパフォーマンスをキープしつつ、さらに走行性能を高め、自ら運転を楽しむ「ドライバーズカー」をコンセプトに開発されました。
外装は、ベース車の気品あるデザインから、アクティブなスタイルに一新。専用のフロントバンパー、サイドステップ、リアアンダースポイラー、トランクスポイラーなどを装着。
センチュリーが持つ高級感を残しつつもスポーティな雰囲気に仕上がっているほか、実際にエアロパーツの効果で走行安定性も向上しています。
内装では「フルオーダーメイドシート」を設定しており、スポーティにもラグジュアリーにも仕上げることができ、高級レザーをはじめとする素材やカラー、ステッチを組み合わせることで、自分好みのカスタマイズが可能です。
パワートレインは、ベースモデルと変わらず5リッターV型8気筒エンジン+モーターのハイブリッドですが、4本のオーバルテールエキゾースト「トムス・バレル」が装着され、スロットルレスポンスの向上と、エンジン始動時には上質かつ重厚なサウンドを奏でます。
トムス センチュリーは、2020年1月の東京オートサロン2020で発表されると同時に注文受付を開始。限定36台の販売で、価格は3097万6000円からです。
●日産「マーチ ボレロ A30」
2016年9月に、日産の関連会社で特装車やカスタマイズカーの開発・生産をおこなっているオーテックジャパンは、創立30周年を迎えました。
それを記念して、わずか30台のみ販売されたのが日産「マーチ ボレロ A30」です。
もともとオーテックジャパンは、マーチをベースにクラシカルな雰囲気にカスタマイズしたマーチ ボレロを2代目マーチから販売しており、その後3代目、現行モデルの4代目でも設定されていました。
マーチ ボレロ A30は現行モデルをベースに、エンジンはクランクシャフト、コンロッド、カムシャフトなどを専用品とした1.6リッター直列4気筒を搭載し、トランスミッションは5速MTのみ。
ほかにシリンダーヘッドの吸気ポートを研磨し、組み立ては完全に手組みとされ、最高出力150馬力を7000rpmで発揮する高回転ユニットに変貌しています。
シャシは各種補強パーツの追加による剛性アップと、専用のサスペンション、フロントブレーキの大型化とリアブレーキのディスク化など、トータルでチューニングされ、高い操縦安定性を実現しています。
そして、マーチ ボレロ A30最大の特徴はボディで、90mm拡大されたトレッドにあわせて、大きく張り出した迫力ある前後フェンダーを装着。全幅はベースの1665mmに対し、1810mmと145mmも拡幅されつつも、フロントフェイスはクラシカルな雰囲気のマーチ ボレロそのままと、全体との対比がユニークです。
内装も専用のレカロ製シート、ハンドル、240km/hスケールのスピードメーターを採用し、見た目にもスポーティに演出。
マーチ ボレロ A30の価格は356万4000円とベース車の2倍強でしたが、30台はあっという間に完売しました。
※ ※ ※
今回、紹介したコンプリートカーは、どれも過激な性能の特殊なモデルばかりですが、もっと手軽に買えるコンプリートカーのほうが一般的です。
自分の好みでドレスアップやチューニングする楽しさもありますが、新車で買えるコンプリートカーならば、整備や車検もディーラーで受けられ、パーツの信頼性や耐久性もメーカーのものと変わらない品質を確保するなど、カスタマイズカーを意識させません。
気軽に乗れるコンプリートカー人気は、ますます高くなると予想されます。
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