「先代まではよかったのにモデルチェンジしたらダメになった」なんてことはよくあることだ。しかしなかには一貫してファンの支持を受け続けるクルマもある。
長年ファンに愛されて、よもや指名買いもされるような名車たちにはどんな共通点があるのだろうか?
【N-BOX、アルファード/ヴェルファイア】 売れてるクルマの『残念』ポイント
国内外問わず、ファンを裏切らない手堅い完成度を誇るクルマを集めました。
文:岡本幸一郎/写真:トヨタ、日産、スズキ、スバル、ベストカー編集部
■元祖SUVのハリアーが今でも愛されるわけ
売れているクルマがたくさんあるトヨタの中でも、ハリアーはちょっと特異な感じがする。
ハリアーが現在にいたるまでの経緯は概ねご存じのことだろうが、本来は2代目までで消滅する予定だったところ、トヨタ内の販売サイドからの要望を受けて、それまで共通だったレクサスRXとは別の日本専用車として企画された。
販売サイドが熱望したのは、むろん「ハリアーが欲しい!」というファンの声があったからにほかならない。
かくして復活をとげた3代目となる現行ハリアーは予定どおり人気を博し、想定を上回る受注により、これまでたびたび納期の遅れが報じられてきたのもご存知のことだろう。
2018年度上半期(4月~9月)の販売台数は1万9674台でランキングが24位というと、たいしたことない気もするが、もう新しくもなく価格も安くはないSUVがこれだけ売れているのは立派だ。
人気のヒケツは、泥くささを感じさせない外観に、高級感のあるインテリア、なにも気になるところのない快適な乗り心地など、あらゆる点で満足度が高いところにありそう。
走りについても特筆すべきことはないが、クセもなく乗りやすい。とくにインテリアはインパクト満点で、女子ウケも非常にイイ。
ハイブリッドやガソリン直噴ターボも選べるが、最近の売れ筋はガソリンの2WDが圧倒的らしい。
たしかに、ガソリン価格でこれだけ見栄えするクルマが手に入ると思えば買い得感は高い。あるいは、C-HRに興味を持ったものの奇抜さについていけず、わずかな出費のプラスで買える格上で無難な性格のハリアーに少なからず流れたとも聞く。
このクルマにファンが期待するのは、まさしくそのあたりなんだろう。
■ミニバンユーザーを裏切らないセレナの利便性
2018年度上半期には4万7472台を販売し、下のクラスのシエンタやフリードを含めてもミニバンでナンバーワンとなり、全体でもノート、アクア、プリウスに次ぐ4位となったセレナ。
ただし、ミニバンの実質的なトップはトヨタの三兄弟を合計するとセレナの約1.75倍になることは、一応お伝えしておこう。
そつのない完成度を誇るトヨタの三兄弟に対して、セレナはいかにも室内が広そうに見えるボディ形状や、驚くほど多彩なシートアレンジという点でもともとライバルをリードしていて、それがまさしくファンが支持するセレナの強み。
さらに現行型は、上下に分割した「デュアルバックドア」や「プレミアムインテリア」、「プロパイロット」や「e-POWER」などの新しい付加価値が与えられたのだから鬼に金棒だ。
また、これまで凡庸だったデザインが個性的になったのも現行セレナの特徴のひとつだが、もっと個性的なステップワゴンがハズして苦戦しているのに対し、セレナは冒険しすぎなかったところもよかった。
とにかくセレナの本質的な魅力というのは、ライバルを凌駕する優れた利便性につきる。
■レヴォーグはスバリストを守るスバルの良心だ!!
レヴォーグとしては初代でも、実質的には人気のあった頃のレガシィ直系の後継車であることに違いなく、買った人もそのつもりで買った人が大半であることに違いない。
そのレガシィがかつてウケた最大の要因は、これぐらいのサイズの高性能なワゴンであること。
ワゴンとして必要十分な居住性と積載性を持ち、パワフルなボクサーエンジンとシンメトリカルAWDによる天候を問わない走行性能を身に着けていたからにほかならない。
そこにスバル独自のアイサイトという武器も加わって、ますますレヴォーグを指名買いする人が増えた。
ほかに似たようなキャラクターのクルマもほぼ存在せず、そこに共感するファンの期待にちゃんと応えることができているから売れたわけだ。
2018年度上半期の販売台数は7576台で40位と、登場から時間が経過したせいか、さすがに一時期ほどの勢いはなくなってきたものの、いまでも街でよく見かけるのはそれだけ売れたからにほかならない。
■安くて上質なスポーツもあるスイフトは庶民の味方
2018年度上半期には前年比の約1割増の1万9484台を販売してランキング25位。えっ、そんなに低いの!? と感じた人も少なくないことだろう。
なにせコンパクトカークラスでは、1位のノート(6万3303台)や2位のアクア(6万2220台)はいうまでもなく、すっかり存在感をなくしたものの実は売れている5位のヴィッツ(4万6213台)や、出足でつまずいたものの底力を発揮している8位のフィット(4万1929台)に大きく水をあけられている。
それでもスイフトのほうがなにかと話題に上がることが多い気がするのは、キャラが立っているからだ。
日本車であることを意識させない無国籍風味のデザインもスイフトならではのキャラのひとつだが、なによりも大きいのは、世界に通用するグローバルカーとして、走る、曲がる、止まるをしっかり作り込み、それが高く評価されたことだ。
ひいてはスズキ自体のイメージを大きく変えることに成功し、にスイフトはその立役者として、完成度の高いコンパクトカーというイメージすでに確立している。
さらには、その急先鋒であるスイフトスポーツの存在も大きい。スポーティなコンパクトカーの中でも別格的な完成度の高さを誇り評価も高いスイフトスポーツが、スイフト全体のイメージをさらに引き上げている。
よいイメージと、それに違わぬ実力の持ち主であること。それがスイフトのウケている要因だ。
■世界のベンチマークCクラスはファンも裏切らない
2018年上半期における輸入車の販売台数ランキングのベスト3は、昨年度と同じく1位がMINI、2位がゴルフ、3位がCクラスとなった。
MINIはすべてボディタイプを合わせての数字なので、実質的なナンバーワンはゴルフだ。
そのそつのない仕上がりは、たしかにこのクラスの世界のベンチマークと呼ぶにふさわしく、価格もリーズナブルゆえ売れているのもうなずける。
いっぽうで、けっして安くないのに、こんなに売れているのかと驚かされるのがCクラスだ。
高くてもそれだけ買う価値を感じた人が大勢いるからにほかならないわけだが、要因としては、まず絶対的なブランド力があり、誰の目にもひとめでわかるデザインの力によって、存在そのものが多くの人に「欲しい!」と思わせる強い力を持っているところが大きい。
さらにはドライブすると誰しも感じ取れるメルセデス特有の走りがある。しっかりとした手応えと接地感のあるステアリングフィールや優れた操縦安定性による絶大な安心感、長時間運転しても疲れ知らずの走行感覚はメルセデスならでは。
最近ではやたらと俊敏性をアピールするようになったが、それでも本質は変わらない。また、そのときそのときで世界最先端のものを惜しみなく与えてきた安全性への取り組みも挙げられる。
これほどメルセデスが愛されるのは、もともとブランドに魅力がある上さらに、それ相応のことをメルセデスがやっているからに違いない。
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