本物そっくりだけど1人乗りの小さな「セブン」は自分専用仕様
1980年代初頭にスズキがごく少数を販売した原付カー「CV1」については以前の本連載でご紹介しましたが、今回ご紹介するのも、同じく原付カー。どちらも原付四輪ナンバーを取得した公道走行可能モデルで、じつはオーナーも同一人物。しかしCV1が大手自動車メーカーが製作した「量産車」であるのに対し、こちらの「セブン50」は、ほぼ手作りのワンオフモデルです。はたしてその素性とは?
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50ccエンジンを積む「原付カー」の世界
原付カーというジャンルの乗り物がある。その名の通り排気量50cc以下、または定格出力0.6kW以下の原動機(モーター)を有する普通自動車で、そのサイズは長さ2.5m×幅1.3m×高さ2.0m以下とされている。
町工場レベルの設備でも生産でき、普通車に比べると構造に関する法規的な制約も少ないという簡便さから、二度の石油危機を経て省エネが叫ばれ始めた1980年初頭には規模の大小を問わず、いくつものメーカーから多数の原付カーがリリースされた。
日本ではスズキ「CV1」や光岡自動車の「BUBU」シリーズなどがよく知られた存在だが、フランスやイタリアなどでも類似の超小型コミューターがいくつも生まれ、その中のいくつかは当時わが国にも輸入されていた。また現在では、コンビニの配送などに使われているトヨタ車体の「コムス」などがお馴染みであろう。
オーナーはもともと本職のメカニックだったが……
若かりし頃からクルマとバイクが好きだったという中村 清さんは1953年生まれの70歳。トヨタ自動車大学校を卒業後、トヨタフォークリフト(現トヨタL&F)に入社。プロのメカニックとしてのキャリアをスタートさせた。
研鑽を積んだ中村さんは40歳を迎えた時点で独立し重機の整備を行う会社を設立する。その後、仕事は順調に発展し、日本全国を飛び回りつつも自宅には趣味のクルマやバイクいじりのための作業工房も設置。多忙だが充実した日々を送っていた。
しかし好事魔多し。今から20年ほど前、50歳のときに中村さんは突如病魔に倒れてしまうのである。幸い一命は取り留めたものの、その脳梗塞の後遺症で右半身に麻痺が残ってしまった中村さん。身体障がい者用の「オートマ・左足アクセル限定免許」で免許証は更新できたものの、今まで同様に仕事を続けるのは無理となり、失意の底に打ちひしがれたという。
原付カー趣味を通じて再び前向きな気持ちが湧き起こった
そんな失意の中村さんを救ってくれたのが、小さな原付カーだった。友人が左半身だけで運転できるように改造してくれたミツオカ「MC-1」のドライブをきっかけに再び前向きな気持ちが湧き起こり、リハビリと並行してさまざまな原付カーを中古車店や個人売買で手に入れて整備やレストアを行い、また各地のイベントにも積極的に参加。原付カーを通じて同じような趣味嗜好の仲間も増え……といった具合だ。
「さすがに歳も歳だから、ここ最近はけっこう断捨離してます」
という中村さんのガレージ&工房だが、それでもなお、おびただしい数の原付カー(と、そのパーツや残骸?)がみてとれる。
そしてそれらの中でもひと際目を引いた1台が、今回ご紹介する小さな「セブン」だ。原寸大(=本物の)セブンもそのシンプルな構造から類似のスポーツカーが各国で作られたが、これはさらにそれら実物の3/4程度に縮小された、いわば公道を走るスケールモデルである。
自分専用仕様に仕上げた「セブン50」はナンバー取得済み
やはりこの趣味を通じて知己を得た、レース車両製作のスペシャリスト「ノーチラススポーツカーズ」にオーダーして制作されたベース車両を、中村さんが自身の工房で自分専用仕様にカスタム&モディファイを加え完成させたのが、この「セブン50」である。
エンジンやサスペンションなどには中国製小型バギーのパーツが巧みに流用されており、もちろん原付カーとしてナンバーも取得済みで公道走行も可能だ。
元ネタとなった「原寸大」のケータハム「セブン」は今でも新車で販売されているが、思い起こせばそのルーツとなったロータス「マーク6」や「セブン」はその多くが完成車としてではなくキットフォームで販売され、ユーザーが自分の好みの仕様に仕上げていったという歴史がある。「クルマはマーケットに向けたビジネスなどではなく、ごく私的な趣味であり人生そのもの」。そんな英国バックヤード・ビルダーの生き様にも通じる中村さんとセブン50の幸せな関係、そして素晴らしき原付カー人生なのだった。
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みんなのコメント
しょうもないプロパガンダ記事なんぞ一切要らんから、こういった血の通った魂のある記事ばかりでイイんだよ。