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ゴードン・マレーも所有 GSMフラミンゴ 1500 ケント・エンジンの黄色いバナナ 前編

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ゴードン・マレーも所有 GSMフラミンゴ 1500 ケント・エンジンの黄色いバナナ 前編

小型軽量な南アフリカのグランドツアラー

南アフリカでは、欧州メーカーのモデルに大きなエンジンを組み合わせることを好む傾向がある。フォード・カプリにV8エンジンを載せたり、BMW 3シリーズへ333iというグレードが設定されたこともあった。

【画像】ゴードン・マレーも所有 GSMフラミンゴ 少量生産のスポーツモデル エリートも 全122枚

以前にAUTOCARでご紹介した、3.0L V6エンジンのフォード・タウヌス 20M RSもその1つだろう。土地が変われば、好みも変わるものだ。

一方で欧州本土では生産を終えたモデルが、延々と作り続けられることもある。1974年に発売された初代フォルクスワーゲン・ゴルフは、2009年まで南アフリカのショールームに並んでいた。

必ずしも、他の市場で通用するアイデアではないかもしれない。それでも、グレートブリテン島の中南部、コッツウォルズ地方で生き延びたイエローの小さなクーペが、英国人の筆者にとっても少々魅力的に映ることは事実だ。

かつての南アフリカには、モータースポーツで培った技術を活かした、GSM(グラス・スポーツ・モーターズ)という小さな自動車メーカーが存在した。オースチン・ヒーレーと競い合うべく作られた、ダートというスポーツモデルで事業をスタートさせた。

続いて開発されたのが、今回ご紹介するフラミンゴ。小型軽量なグランドツアラーとして、欧州のモデルと渡り合えそうな実力を備えていた。販売不振から経営難に陥り、1965年に消滅することがなければ、われわれの記憶へもう少し刻まれていたただろう。

左右へ分断されたリアウィンドウ

別名デルタとも呼ばれた、GSMダートは短期間ながら英国でも生産が行われ、欧州市場ではある程度の認知度を得ていた。それを追い風に、需要を探るように誕生したのがフラミンゴだ。

英国の販売部門は、雨の多い地域ではクローズドボディの方が人気を得るだろうと考えた。ダートで得た4年間の経験を通じて、次期モデルに取り組もうという勢いがあった。ライバルに掲げていたのはポルシェ356で、理想は高かった。

技術者はゼロから新モデルの設計を進めた。ところが、フラミンゴが英国で正規に販売されることは最後までなかった。

フラミンゴのリアフェンダー上には、1960年代初頭に流行したテールフィンが与えられている。そんなスタイリングで最大の特徴といえるのが、左右へ分断されたリアウィンドウ。中央が峰のように立ち上がり、印象的な後ろ姿を構成している。

GSMの従業員の間でも、リアガラスを仕切る3本目のテールフィンには異論が出たという。だが単に様式的なものではなく、構造的な意味合いが存在していた。当初デザインされたテールエンドは、ブレッドバンと呼ばれるコーダトロンカ・スタイルだった。

今回ご登場いただいたフラミンゴは、最終仕様となった1964年式の1500。モデルの生産は1961年に始まり、途中で改良が施されている。現在のオーナーはグレン・ロクストン氏で、「黄色いバナナ」という愛称で呼んでいるそうだ。

開発段階ではV6エンジンが想定されていた

エンジンは、当初はドイツ・フォードが生産していた1760ccのタウヌス用4気筒だった。数年後に、フォード・コルティナ用として登場した1498ccのケント・ユニットへ置換されている。

英国では1959年に生産が始まっていたケント・ユニットは排気量が小さかったものの、高回転域まで軽快に吹けあがった。軽量で最高出力でも勝っており、バージョンアップといえる内容だった。それでも、GSMの技術者は性能に満足していなかった。

開発段階では、フォードのエセックス・ユニットかケルン・ユニットというV6エンジンが想定されていたのだ。しかし南アフリカでの生産がキャンセルになり、フラミンゴには不必要に大きなエンジンルームが残されてしまった。

ケント・ユニットにクロスフロー仕様が追加されたのは1966年。その能力の高さから、モータースポーツ界やキットカー・メーカー、少量生産のスポーツカー・ブランドから一気に注目が集まった。

グレンの黄色いバナナでも、初代エスコートに搭載されていた1599ccのケント・ユニットへ後年に交換されている。ハイテクな4気筒エンジンとはいえなかったが、フォードにとっては新しい主力ユニットだった。

英国生まれの馴染み深いエンジンだということは、今でも始動直後からすぐにわかる。少々乱雑に目覚め、振動は小さくない。ステアリングホイールやシートベースを通じて、ピストンが上下する動きが伝わってくる。

走りは後輪駆動のBMCミニのよう

公道を走らせれば、レスポンスの良さが光る。やや上質さに欠けるとはいえ、意欲的に力強くフラミンゴのボディを前進させる。車重は739kgと軽く、実際の速度はそこまで高くなくても、走りには活気が溢れている。

ドライビングポジションは路面にお尻が付きそうなほど低く、エンジンサウンドは荒々しい。それらが、スピード感を増長している。

ドライビング体験を濁しているのが、コルチナ由来のトランスミッション。1960年代のフォードらしく、1速と2速のギア比が極端にショートなのだ。しかし、短いシフトレバーのおかげで小気味よく次のゲートを選べる。慣れれば素早くシフトアップできる。

交通量の少ない裏道は、スリル満点の場所になる。まるで後輪駆動のBMCミニのよう。

フロント・サスペンションには、技術者のアレック・イシゴニス氏が開発したオリジナル・ミニと同じ、ラバーコーンが用いられている。フロントタイヤが跳ねるように動く挙動や、傷んだ路面の状態が伝わってくる乗り心地は、実際に似ている。

アスファルトが剥がれた穴を通過すると、激しい振動に見舞われる。そのかわり、ステアリングホイールの操作に対する反応はダイレクト。身軽そうに、フラットにコーナーを縫っていく。

アスファルトの状態が酷くなければ、フラミンゴの身のこなしは鮮やか。シャシーのバランスは高い。そのまま気張りすぎると、アンダーステアが出て大きく外へ膨らんでしまうけれど。

この続きは後編にて。

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