元WRCドライバーのマンフレッド・ストール率いる技術企業STARD(Stohl Advanced Research and Development)は、ラリークロス競技向けに自社開発した電動パワートレイン・キット“REVelution”を搭載したニューマシンをアンベイルした。シトロエン・レーシングとの共同開発となる世界初のR5規定ベースの電動マシン『シトロエンC3 ERX』を発表し、8月22~23日にスウェーデンのホーリエスで開幕する『Projekt E(プロジェクトE)』の開幕戦に投入することをアナウンスしている。
現在はFIA準拠の“ラリー2”カテゴリー用車両として製造されるR5規定シトロエンC3のローリングシャシーを使用したこの車両は、WorldRX世界ラリークロス選手権のサポートカテゴリーとして2020年のラウンチが予定される電動カテゴリー、プロジェクトE(Projekt E)に参戦可能なマシンとしてカスタマー供給が予定されている。
プロジェクトE:ケン・ブロックが電動車両でカムバック。フォード・フィエスタERXをドライブ
オーストリアに拠点を置くSTARDが、兼ねてから開発を進めて来た電動パワートレイン“REVelution”を搭載した『シトロエンC3 ERX』は、150kWを発生する3モーター構成で総合出力は612PS/1002Nmにも達し、前後アクスルに搭載された2速ギヤボックスを介して、240km/hの最高速をマークする。
2018年終盤にカスタマー販売が開始されたシトロエンC3 R5は、ここまでに3つの大陸で270以上の競技に参戦し、136の表彰台と58の勝利を獲得、60台以上がデリバリーされる成功を収めている。
そのC3 R5をベースとするシトロエンC3 ERXは、電動化に際してシャシーコンポーネントの80%以上が維持されており、プロジェクトEの技術規定に完全準拠すると同時に、技術面と商業面の双方でシトロエン・レーシングのサポートを受けることが可能となっている。この枠組みの導入により、C3 ERXを走らせるカスタマーチームは、シトロエン・レーシングから直接スペアパーツなどを購入することもできるという。
また、STARD製のREVelutionパワートレインで使用される独自の自社開発バッテリーシステムに関しても、マクラーレン・アプライド・テクノロジーズ社やウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング社に並んで、FIAのHVバッテリーシステムクラッシュテストに合格している。
これまで“ElectRX”と呼ばれてきた先行開発車両の『フォード・フィエスタERX』に並んで、プロジェクトE開幕戦ホーリエスでのデビューを予定するシトロエンC3 ERXだが、そのドライバーにはシトロエン契約ドライバーでもあるマッズ・オストベルグが起用されることも決まった。
■オストベルグ「初めてのことだらけだけど、最高の経験になる予感がしている」
2020年のWRC世界ラリー選手権WRC2クラス開幕2戦で連勝を飾っているオストベルグは、その豊富なR5規定ラリーカーのドライブ経験を活用し、C3 ERXの開発に取り組む最適な人選として、開幕のスウェーデン戦でラリークロス初出場を果たす。
「聖地ホーリエスから、このプロジェクトに参加するのは僕にとっても素晴らしい機会だ。マシン、トラック、そしてラリークロスの競技そのものなど、僕にとっては初めてのことだらけだけど、最高の経験になる予感がしている」と意気込みを語ったノルウェー出身のオストベルグ。
「テストの時点から、すでにこのクルマをドライブするのを楽しめたし、パワフルで本当に面白かった。そしてついに、ついにラリークロスに参戦できるのも待ち望んでいた瞬間だ。エレクトリック・シトロエンC3 ERXで心から楽しみたいね」
一方、STARD社のCEOを務めるマイケル・サコウィックも、R5ベースの画期的電動車両の誕生を喜ぶとともに、オストベルグの手で競技デビューを果たすことを「光栄に思う」と期待を込めた。
「世界初のR5ベースとなるフル電動レースカーをアナウンスできてうれしく思う。シトロエン・レーシングの強力なサポートを得て、カスタマーのエレクトリック・モータースポーツ参入への障壁を劇的に引き下げるベンチマークとなった」
「このマシンはすぐにでもプロジェクトEの舞台で競技参加できるほか、ヒルクライム、シティレース、国内および国際レベルのスプリントラリーにも使用可能だ。我々の電動パワートレインシステムは、フォーミュラE以外にFIAが承認した唯一の市販キットのシステムであり、その事実と今後の展望にワクワクしている」
「マッズ(オストベルグ)はラリー界でその才能を証明しており、シトロエン・レーシングとも非常にハイレベルで膨大な実務経験を有している。そんなワークスドライバーの経験を、我々のREVelutionパワートレインのデビュー戦で役立ててもらえるのは非常に光栄だ」
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