芸術性を端的に表すペダルボックス
ジュリアン・トムソン氏(以降:JT)「リチャードとエリーゼのデザインに関われたことは、とても良い経験になりました。彼は美しく見せることにも考えが及ぶ、素晴らしい技術者です。ミニマリスト的な構造の必要性を、明確に共有してもいました」
<span>【画像】傑作スポーツ ロータス・エリーゼ シリーズ1とシリーズ3を比較 全73枚</span>
「可能な限りシンプルに、ごまかさない。サイドシルのソフトパッドも、必要だとは思いませんでした。当初はダッシュボードも構造が露出していたんです。最終的にカバーが付きましたが」
リチャード・ラックハム氏(以降:RR)「ヘッドライトはカウリングが前提で、発表段階では付いていました。111Sでは復活していますが、初期のエリーゼはコストの都合で省かれています」
JT「ペダルボックスの美しさは、彼の芸術性を端的に表している部分でしょう。美しく、機能的。エンジニア出身のアーティスト。とても特別な才能です」
RR「確かにこれまでに関わったプロジェクトでも、エリーゼのペダルは満足度の高い仕事の1つ。ロータスと刻まれていた初期のデザイン案は、踏むのには重すぎました」
「ロータスの技術者は、当時ランドローバーの新しい構造開発にも関わっており、わたしもその1人でした。プロジェクトは中止になりましたが、押出成形の可能性を知るきっかけになっています」
「接着結合がどれほど強固なのかは不明だったので、100mm四方の結合部分は、推測から出した大きさ。実際は、半分のサイズでも充分だったかもしれません」
コストを理由に一部で選ばれたスチール
RR「アルミ材の供給元、ノルウェーのノルスク・ハイドロ社は販売を拡大したいと考えていました。押出成形材で新しいことに取り組んでいるとも、知っていたようですね」
「反面、わたしたちは使用量の削減を模索していました。例えば、ルーノー・スポール・スパイダーのシャシー・ウオールの厚みは、溶接できるようにエリーゼの2倍あります」
JT「常にネイキッド・バージョンの考えはありました。最終的に、340Rでカタチになります。エリーゼは洗練され過ぎている、というケーターハム・オーナーからの要望に応えるために」
RR「押出成形材は、知覚品質の面でも意義があると気づきました。ドアヒンジにも用いています。機能だけでなく、造形として驚きや喜びも与えてくれます。品質も高く、剛性も確保できるので、サスペンションのアップライトにも採用しました」
「スパルタンなクルマとして、ピッタリですよね。リアのサブフレーブもアルミ材にしたかったのですが、エンジンの熱による影響を防ぐには重量が増え、コストも高くなる。そこで、適した素材としてスチールを選んでいます」
「シャシーのサスペンションマウント部分にも、スチール製のボビンが使われています。鉄とルミが接することで起きるガルバニック腐食が心配で、アルマイト素材を選びたかったのですが、コストが許しませんでした」
「サイドシルは100mm低くしています。車重は6kgから7kgほど増えていますが、乗降性を考えれば、その価値はありましたね」
ミニマルでも、すべてに特別感がある
JT「でも当時の自分たちにとって、乗降性はそもそも問題ではありませんでした。若かったので、ウサギのようにジャンプして乗れましたから」
「エリーゼのシートは、ランボルギーニ・ディアブロのモノがモデル。膨らませられるランバーサポートを付けてあり、良く機能します。ミニマルなクルマですが、すべてに特別感があります。サイドステップのプレートもカッコイイ」
RR「わたしがエリーゼのデザインで最も満足しているのが、インテークまわりからリアに向けて、パワー感が増していく雰囲気。古いスーパーカーのようにね」
「悪い部分は、恐らくサイドウインドウのワインダー。でも、ジュリアンに責任はありません。ワイーパーのアームも、あまり好きではないですね。もっとエレガントなカーブに作れたはず。ここまで丈夫そうな見た目である必要もない」
JT「テスラは、ロードスターを宇宙に打ち上げました。ヘネシーのモデルでは、世界最速のフロントガラスにもなりました。スバッロのコンセプトカーでは、水中にも潜っています。世界で最も有名なフロントガラスかも」
RR「フロントガラスは、シングルワイパーで拭ける曲面で仕上げてあります。これも、大きな制限でした。レースカーと同じ構造ですし、シンプルで安価に作れる。2脚のシートが近い理由も、ガラスを拭ける面積が小さいためです」
自分のための設計が導いたベストな結果
JT「ボディのリア・クラムシェルは、少しワイド過ぎたと思います。製造プロセスを短くするという点でも誤算でした。リア側のエアベントがフェイクなのも、気に入らないポイントですね」
「押出成形材の構造や結合部分、ペダルの造形などはとても気に入っています。自分がエリーゼで気に入らないことは、うるさすぎること。メカニズムの音が」
RR「当時は、ノイズや振動に関する要件はありませんでした。純粋に、楽しむためのクルマでした」
JT「それと、オーナーという視点では、バッテリーへのアクセスが悪い。(トムソンはエリーゼ・シリーズ1のスポーツ160を所有している)」
RR「重量配分という点で、可能な限り低い位置に搭載されているんです」
JT「一般的な自動車会社では、デザイナーがエンジニアと緊密に連携しながら仕事を進めることは珍しい。でも、お互いの考えや意思を尊重することで、純粋に良いものを仕上げることができます」
「エリーゼのようなクルマをもう一度作れれば、と時々想像します。でも考えるほどに、現在では難しい。それがユニークなところでしょう」
「最近まで働いていたJRL(ジャガー・ランドローバー)には、1万人の技術者がいます。でも、エリーゼに携わったのはほんの数名。自分たちのクルマを、自分たちで作っているようでした。自分のための設計ですから、ベストな結果が得られるわけですよ」
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