2021年11月1日、人気コンパクトSUVのダイハツロッキー&トヨタライズに、エンジンで発電してその電力でモーターを駆動する、シリーズハイブリッド方式を採用したハイブリッドモデルと、新たに1.2Lガソリンモデルを追加するとともに、従来の1Lターボモデルは4WDモデルのみとするラインナップの変更を行った。
e-スマートハイブリッドと呼ばれるこのシリーズハイブリッドシステムは、1.2LガソリンNAエンジンも含め、新たにダイハツが独自開発したもの。
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シリーズハイブリッドといえば、ノートやキックス、セレナに搭載されているe-POWERが真っ先に頭に思い浮かぶが、ダイハツのe-スマートハイブリッドはどこがどう違うのだろうか?
今回、ロッキー&ライズのハイブリッド車と1.2Lガソリン車に徹底試乗! ワンペダルの走りは? 1Lターボと1.2LガソリンNAとの価格差は? コスパはいいのか? など多岐にわたって、モータージャーナリストの吉川賢一氏が解説する。
文/吉川賢一
写真/佐藤正勝、ダイハツ
[gallink]
■コンパクトSUVクラストップレベルのWLTCモード燃費28.0km/L
ダイハツ独自開発のシリーズハイブリッド、e-スマートハイブリッドを搭載したロッキープレミアムG HEV。28.0km/Lという低燃費と、重量税が免税となり、環境性能割非課税となるのも大きい。3万6900円+3万8400円お得!
1.2Lエンジンは発電用でその電力を使って100%モーターで駆動するシリーズハイブリッドを採用
ロッキー&ライズはこれまで、2WDも4WDも、1L、直3ターボのモデルのみであったが、今回、2WDに新開発した1.2L直列3気筒NAエンジンと、そのエンジンを発電用としたe-スマートハイブリッドを設定。
1.2Lエンジン、e-スマートハイブリッドとともに、ダイハツが独自に新開発したものだ。4WDはこれまで通り1L、直3ターボとするラインナップへと再構築された。
エンジンを発電専用とし、100%モーターのみで駆動するe-スマートハイブリッドは、日産のe-POWER、そしてホンダのe:HEVと同じシリーズハイブリッド方式となる(e:HEVは高速走行時にはエンジン駆動となるが)。発電用エンジンが1.2L直列3気筒エンジン、という点も同じだ。
また、日産の「e-ペダル」同様の、アクセルペダルだけでスピードコントロールできるワンペダルでの走行が可能な「スマートペダル」も採用。低速域でのクリープ走行も残しており、駐停車時などでギクシャクするような動きになりにくいように配慮されている。
ダイハツの開発担当者によると、e-スマートハイブリッド開発にあたっては、先代のE12型ノートe-POWERを相当研究したとのことでサイズや排気量、スペックなども多分に影響しているという。
日産ノートe-POWERのパフォーマンスを上回るよう、「燃費効率」を最優先に突き詰めてたそうで、その結果、ロッキーハイブリッドは、コンパクトSUVクラスではトップクラスとなるWLTCモード28.0km/Lを達成している。
ちなみにE13型現行ノートe-POWERのWLTCモード燃費は28.4~29.5km/L、コンパクトSUVのキックスe-POWERは21.6km/L。
■各車のWLTCモード燃費
●ロッキー&ライズHV(2WD)1.2L、直3ガソリン+モーター(2WD)/28.0km/L
(82ps/10.7kgm+106ps/17.3kgm)
●ロッキー&ライズ 1.2L、直3ガソリンNA(2WD)/20.7km/L
(87ps/11.5kgm)
●ロッキー&ライズ 1L、直3ターボ(4WD)/17.4km/L
(98ps/14.3kgm)
●ノートe-POWER 1.2L、直3ガソリン+モーター/Fグレード:29.5km/L。S、Xグレード:28.4km/L
(82ps/10.5kgm+116ps/28.6kgm)
●キックスe-POWER 1.2L、直3ガソリン+モーター/全車WLTCモード燃費21.6km/L
(82ps/10.5kgm+129ps/26.5kgm)
また、この発電用NAエンジンをそのまま使った1.2Lガソリンモデルも登場。こちらはWLTC モード燃費 20.7km/Lを達成、従来型1Lターボの18.6km/Lから約11%も改善している。
ベースのガソリンモデルは商品力を引き上げながらも価格は抑え、上級のハイブリッドは付加価値を与えて高めの販価とする今回のロッキー/ライズの商品改良は、まさに王道の商品改良だ。
1.2Lの直列3気筒エンジンと駆動用モーターを組み合わせたe-スマートハイブリッドのユニット。狭い車幅に収めるため、エンジンが非常にコンパクトなのが印象的だった
4.3Ahの小型バッテリーは後席シート下に格納される。「バッテリーの寿命は?」と聞くと、10年10万キロは保証されるという回答であったが、バッテリー交換を要するほど劣化してしまう仕様にはなっていない、ということだった
■ガソリンNAでも不足を一切感じない加速パフォーマンス!!
ダイハツが新開発した1.2L、直3NAエンジンを搭載するライズ1.2L。すべて2WD仕様でライズはXが170万7000円、Gが185万7000円、Zが203万9000円。ロッキーの1.2Lの価格はLが166万7000円、Xが181万円、プレミアムGが205万8000円
まず、新開発の1.2Lの直3 NAエンジン車のライズガソリン Z 2WDから試乗した。今回の商品改良で、2WDについては、これまでの1Lターボから、この1.2L直3NAへと入れ替えとなったため、ロッキー/ライズのラインナップのなかでは、この1.2L、直3NAの2WDが最も売れそうな気がする。
ちなみに1.2Lガソリン車の価格は、Lが166万7000円、中間グレードのXが181万円、上級グレードのプレミアムGが205万8000円と、戦略的な価格設定となっている。
87ps/11.5kgmを発生する新開発のWA-VE型1.2L、直3NAエンジン。トランスミッションはCVT
1.2L、直3NAエンジンは、以前1Lターボ車に試乗した時に感じた、あのパワフルなフィーリング(エンジンサウンドも含めてやんちゃだった)ではないが、流れの速い一般道でも、まったく不足のない加速パフォーマンスで、エンジントルクの出方がマイルドで扱いやすいのが特徴。
アクセルペダルを踏み込むと、「ガー」というエンジンサウンドがよく聞こえるのだが、ロードノイズが比較的静かなこともあって、このエンジンサウンドが「加速フィールの演出」という捉え方もできる。
今回試乗したグレード(Z)は、ガソリンの最上位グレードであったため、ACCとLKA、そしてオートブレーキホールド機能付き電動パーキングブレーキが標準装備となる。手動式のサイドブレーキがないことで、運転前後の負荷や信号待ちなどで負担が少なくなったことも好印象であった。
1.2LのライズZのコクピット。CVTのシフトレバー後方に電動パーキングブレーキとオートブレーキホールドのスイッチがある
ロッキーのハイブリッド、1.2LガソリンNA、1Lターボ4WDのスペック比較
ライズのハイブリッド、1.2LガソリンNA、1Lターボ4WDのスペック比較
■路面をなめるようにスーッと進む感覚はとても気持ちいい!
シリーズハイブリッドを搭載するロッキープレミアムG HEVに試乗
左側が1.2L、直3エンジン、右側がハイブリッドのパワーコントロールユニット、右下にトランスアクスルを配置
続いては、本命のロッキーハイブリッド・プレミアムGの試乗だ。ハイブリッド仕様の訴求ポイントは、レスポンスの良い加速性能、高い静粛性、そしてカテゴリーTOPクラスの低燃費の3つ。
乗り込んで驚いたのは、車内に割と大きめに響くアイドリング音。シリーズハイブリッドモデルはエンジンが発電用で、駆動は電気モーター。
このe-スマートハイブリッドにおけるエンジンによる発電は、バッテリーのメモリーが「3」を切ると開始し、「5」になると止める設計のようだが、パーキング状態でも電力を消費するため、発電が始まることがあった。
ただ、街中のスタートストップを繰り返すようなシーンでは、モーター駆動のスムーズさと、クルマが軽いことでの軽快感が合わさって、とても気持ちが良い走りをする。路面をなめるように「スーッ」と進む感覚は、これまでロッキーにはなかった新しいドライブフィーリングだ。
スマートペダルのスイッチはステアリング右下にある。ワンペダルの感触は現行ノートe-POWERと同様、回生ブレーキの効きは控えめで、ガツンとGを感じるほどではない
ワンペダルで速度の加減速が可能なスマートペダルを設定
スマートペダルモード時の回生ブレーキの効きは、現行ノートe-POWERと同じく「控えめ」だ。開発担当者によると、先代のノートe-POWERを参考にして作り込んだようだが、駐車時など、低速での扱いやすさを考えた結果、クリープを残した今の特性に落ちついたそう。
スマートペダルは、ステアリング右にあるスイッチでオフにすることも可能。回生ブレーキが「ガツン」と効く、ノートオーラNISMOのNISMOモードのようなものがあってもおもしろかったが、「誰でも扱いやすい」ことを優先した、ということだろう。
ガソリン車比で80kgほど車重は増えているが、ハイブリッドの補器類もコンパクトで、ガソリンタンク上に駆動用バッテリーをしまい込むなど、重量物を分散しているため、クルマの回頭性が鈍くなった、というような悪い印象は全く感じない。
相変わらずの軽快なハンドリングで、「元気で楽しいロッキー&ライズ」はハイブリッドモデルとなっても健在だった。
ただ、信号待ちと発進を頻繁に繰り返すようなシーンでは、バッテリー回生が間に合わず、エンジンによる発電が割と頻繁に行われる。
モーター駆動時の無音と、エンジン発電時のノイズの落差は、かつてE12型先代ノートのe-POWERで多く指摘されたことであったが、まさにその指摘がそのまま表われている、という状況だ。
アクセルペダルの踏み込みを増やすと、エンジンの「元気なサウンド」が盛大に車内へと侵入し、電動車だということをちょっと忘れてしまうほどであった。
ハイブリッド専用アクティブマルチインフォメーションメーター。車両情報がひと目でわかるフル液晶風のディスプレイ。4つのデザインから、好みやその日の気分に合わせて選択可能。e-SMART HYBRIDの出力状況や充電状況、回生状況もリアルタイムに表示
ドライブモードはノーマルモード、エコモード、SペダルスイッチOFFの3つのモードを選択できる
ノイズ対策として、ダッシュサイレンサーの三層化やフードサイレンサーの遮音性向上、エンジンアンダーカバーへの吸音材の追加、遮音性能向上や制振材の改良は加えられている。
そうした効果は当然出ているのだろうが、E13型現行ノートe-POWERや、トヨタTHS-IIを搭載したヤリスクロスハイブリッドのような、ワンランク上の静けさと上質感と比較してしまうと、ちょっと気になるレベルだ。
ダイハツの担当者は、「さらにエンジンノイズを消し込むことはできるが、コストと性能のバランスを加味し、この仕様に決めました」と話してくれた。とにもかくにも、コスト至上主義のダイハツ。
取材の現場では、「乾いた雑巾を絞る」なんていう会話も聞こえたが、第一優先は「燃費」であり、ノイズの低減による「動的な質感向上」は、わかってはいるが、導入は困難だという。
対策を織り込んだぶん、販価を上げるか、販売台数が増えるのか、投資対効果が予測つかないものには、予算がつかない。音振対策はどうしても追加コストがかかるものだが、対応してくれたダイハツの担当エンジニアの表情が、悔しそうに見えたのは、印象的であった。
ロッキープレミアムG HEVのコクピット。9インチのスマホ連携ディスプレイオーディオを設定(メーカーオプション)。全車速追従機能付きACC、LKC(レーンキープコントロール)、車線逸脱抑制制御機能など安全装備のスマアシも装備
上級グレード、ロッキーはプレミアムG、ライズはZに設定されるフルファブリック×ソフトレザー調シート(フロント/リア白ステッチ付き)
フルファブリックシート(フロント赤パイピング付き)となるX。エントリーグレードのLのフロントシートは赤パイピングなしのフルファブリックシート
リアシートは2段階のリクライニングが可能で、6対4分割可倒式。座面の下には居住空間を犠牲にしないように配置されたリチウムイオンバッテリーが備わる
■驚異的な価格で大ヒット間違いなし!!
e-スマートハイブリッド車のロッキーX HEVは211万6000円、プレミアムG HEVが234万7000円。ライズのハイブリッドGは216万3000円、ハイブリッドZは232万8000円。1.2Lガソリンエンジン車と比べ、28万9000~30万6000円のアップ
ダイハツロッキー価格表
トヨタライズ価格表
そんな努力もあり、ロッキーの1.2Lのガソリン車はエントリーグレードのLが166万7000円、Xが181万円、プレミアムGが205万8000円。
e-スマートハイブリッド車のX HEVは211万6000円、プレミアムG HEVが234万7000円。1.2Lガソリン車と、e-スマートハイブリッド搭載車の価格差は、プレミアムGグレード同士の比較で28万9000円、Xグレード同士の比較でe-スマートハイブリッドのほうが30万6000円高い。
一方、ライズの価格は、1.2Lのガソリン車のエントリーグレード、Xが170万7000円、Gが185万7000円、Zが203万9000円。ハイブリッドGは216万3000円、ハイブリッドZは232万8000円と、ロッキーと同様、Zグレード同士の比較で28万9000円、G同士の比較で30万6000円、ハイブリッドのほうが高い。
1Lターボ4WDの価格はロッキーが194万4800~231万8200円、ライズが198万4800~229万9200円。2車種ともに1.2Lモデルよりもターボのほうが26万200~27万7800円高く、ターボよりもハイブリッドのほうが2万8800~2万9300円高い。
しかし、この商品力で、この価格が実現できるのは、ダイハツ(兄弟車のトヨタ車含む)かスズキだけじゃないだろうか。他の国産車メーカーからすれば驚異でしかない。特に、e-POWERでシリーズハイブリッドの先陣を切った日産としては、悔しい思いをしていることだろう。
2019年の登場から約2年が経ち、ここのところは落ち着きを見せていたロッキー/ライズの販売台数だが、今回のハイブリッドモデルの登場で、再びロッキー/ライズ旋風が巻き起こるだろう。
ここにシリーズハイブリッドをもつ日産やホンダがコンパクトSUVを投入して追従してくるのか、目が離せない。
ロッキー&ライズのハイブリッドは停電などの非常時に電気製品が使えるAC100V・1500Wの給電用アクセサリーコンセントをラゲッジルーム内に装備。AC100Vで最大消費電力1500W以下の電気製品を使用できる
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みんなのコメント
走行中にエンジンが始動するのは、走行音もあり通常のガソリン車と比較してそれ程気にはなりませんが、停車時や低速時にいきなりエンジンが始動した時には、ボディが共振する様な音に安っぽさを感じます。
時期購入車として視野には入れてますが、同じ3気筒エンジンでも、ヤリスの方が静粛性は高いですね。
同じコンパクトでありながら、車内の広いライズ&ロッキーか、質感の高いヤリスか悩みどころ。
妻も試乗して一気に購入意欲が失せたそうで、もうしばらく今の車で良いかなと…。
(以前の1.0Lターボも試乗しましたが、その時の方が印象は良かったそうです。)
まあこのクラスで静粛性を求めるのもどうかと思いますが、同じエンジン音でも良い音か雑味のある音かによっても印象は変わります。
アクセルを話すとブレーキがかかり過ぎ。
乗って非常に不快でした。ボクシーハイブリッドに比べて
まあ売れないですね これは