フルモデルチェンジしたホンダのミニバン「ステップワゴン」が公開された。実車を見た今尾直樹の感想と思いとは? 後編ではインテリアについて触れる。
注目のロングスライド機構
【前編はこちら】
室内で注力されたのは、外観デザインと並ぶ要改善ポイントのひとつ、シート・アレンジである。
先代でも好評だった折り畳み内蔵式3列目シートはそのままに、2列目キャプテン・シートのスライド機能は注目に値する。
前後に最大865mmも動かせるのだ。これは3列目を床下収納できるステップワゴンならではで、いちばん後ろに下げると、飛行機のファースト・クラスもかくやのレッグ・ルームがあらわれる。このロング・スライド量でライバルを圧倒できる、と内装担当者は胸を張る。
2列目のキャプテン・シートはベルト内蔵式になっていて、右側のシートは75mm、左側は115mm、内側にスライドさせることもできる。前後左右のスライドがレバー操作1回でできる、「ワンアクションレバー」もジマンの工夫のひとつだ。
掃除のしやすさに留意
スタイリッシュ&クオリティをコンセプトとする「スパーダ」は、フロントのバンパーを20mm、リアを15mmのばし、テール・ゲートにスポイラーを装着することでのびやかさを出している。
サスペンションはタイヤも含めて同じだけれど、サイド・スカートを装着することで最低地上高を10mm低く見せている。
外装色は、エアは生活になじむ柔らかい色、スパーダは、成熟したファミリー向けのダークな色調が選ばれている。
内装素材は、エアはファブリック素材を用いて温もりを、スパーダでは合皮で高級感を出し、2列目にはオットマンも付いている。どちらも掃除のしやすさに留意したというのが、子育てファミリー向けのミニバンらしいところだ。
2022年のミニバンは熱い!
関係者のお話から想像するに、プラットフォームは先代からのキャリーオーバーと見られる。
詳細は不明ながら、パワートレインはハイブリッド「e:HEV」と1.5リッター直列4気筒ガソリンターボの2本立てになることが予想される。現行型に対するホンダの営業部隊による調査でも、動力性能に対する不満は出ていなかったのだから、この判断は当然かもしれない。
ちなみに、エアもスパーダも、タイヤは同じ205/60R16という、乗り心地のよさそうなサイズが選ばれていた。これは現行型、もうすぐ先代と呼ばれることになる5代目と同サイズである。
花岡さんによると、丸型2灯ヘッドライトもやってみたという。花岡さんはチャーミングな軽自動車の「N-WGN(エヌ・ワゴン)」を手がけたひとだったのである。それをボツにしたのは、「ラブ&ヘイトはつくりたくなかった」からだ。「基本をしっかりつくって、このクルマはしっかり育てていきたい」。
新型ステップワゴンの外観デザインは初代、2代目へのオマージュでもある。とも花岡さんは語っている。Dピラーと縦型テール・ランプはその最もわかりやすい表現だ。
新しい外観デザインと新しいシート・アレンジで、新型ステップワゴンのエアとスパーダはトヨタのノア/ヴォクシーにリベンジできるのか?
2022年のミニバンのビッグな話題になるかもしれない。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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オラオラ化の進むミニバンに一石を投じる結果になるかな?