現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > おっかなビックリ東京へ向かうも、今度はブレーキが効かない!? 豊田で高級ホテルに泊まるはめに【週刊チンクエチェント】

ここから本文です

おっかなビックリ東京へ向かうも、今度はブレーキが効かない!? 豊田で高級ホテルに泊まるはめに【週刊チンクエチェント】

掲載 21
おっかなビックリ東京へ向かうも、今度はブレーキが効かない!? 豊田で高級ホテルに泊まるはめに【週刊チンクエチェント】

チンクエチェントオーナー必読の湿気対策方法もお伝え! 

愛知県の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第15回は「マジかー!? ペダルがフロアにコンニチハ」をお届けします。

いよいよナンバー取得して路上へ出るも「ナゾ」の振動が発生! エンジンは当たりを確信【週刊チンクエチェントVol.14】

応急処置とは思えぬ手厚いサポート

ベーシックベーネ・ニワの丹羽さんとお会いするのは、どれくらいぶりだろうか?『ティーポ』の編集者時代だったのはたしかだけど、おそらく丹羽さんがショップをオープンさせてからそう時間が経ってない頃で、すごく腕の立つ人がいると聞いて取材に行った記憶があるから、おそらく20年ほど前? とても穏やかな方で、訊ねればその場で即座に転ばぬ先の杖みたいなことまで教えてくださって、お客さんたちから信頼が厚いことが一発でわかったのを、よく覚えている。

丹羽さんは昔と変わらない笑顔で僕たちを迎えてくださった。御無沙汰の挨拶もそこそこに僕が感じていたことを伝えると、すぐに問題を一緒に考えてくださり、「ガレージがいっぱいで中に入れられないから、あくまでも応急処置的なものになっちゃいますけど……」と言いながらも、ゴニョン(仮称)をジャッキアップしてチェックをはじめてくださる。ガレージの中でレーシングカーのようなチンクエチェントが重整備を受けている最中なのは見てわかるし、プロはガレージ外でのこうした作業はできるだけ避けたいものだということもわかっていながら、お願いしたからだ。

ついでにお伝えしておくと、ゴニョン(仮称)はチンクエチェント博物館が日本に入れた、かなり初期のクルマ。車両管理番号は「#011」とされていて、2回目か3回目の船積みで日本にやってきているわけだ。その頃は前々回でお伝えしたネットワークづくりが着々と進んでいるタイミングで、博物館車両のPDIのメニューも暗中模索。今では丹羽さんはじめチンクエチェントのプロの提案でかなり深いところまで行われるようになっているようだ。とはいえ、いずれあきらかになるゴニョン(仮称)のトラブルの根っこはPDI作業とは何ら関係がないというか、ほぼ全バラのレベルまでやらないとわからないんじゃないか? というところに潜んでいたというか、そんな感じだったのだけど。

ともあれ、最初はステアリングを切ったときの動きの渋さから。走らせるのに支障があるというほどでもないけど、切り込んでいくときも戻すときも、ちょっとばかり違和感を感じるのだ。丹羽さんは、まずはフロントのキングピンまわりのチェックと調整、グリスアップなどを施してくださった。同時に振動の原因を確認する意味で、まずはそのままフロントのハブベアリングの調整、前後サスペンションのガタのチェック、エンジンマウントの高さ調整、ミッションマウントとミッションマウントステーの隙間のゴムのチェックなど、おおよそ考えられるところすべてに手を入れてくださる。応急処置のレベルじゃないでしょ、これ……。

もうひとつ、博物館からの出発直前に気づいたことなのだけど、車外からキーでドアのロックとアンロックをすることはできるものの、運転席側ドアのロックノブが機能してなかった。そこも助手席側ともども診ていただく。ドアの内張りを外してチェックしていただくと、内部でパーツがはずれている様子。そこに手を入れながら丹羽さんが教えてくださったところによると……。

クルマのドアは大なり小なりガラスとウェザーストリップ(=ゴムパッキン)の間から水が内部に入るもので、設計の旧いチンクエチェントももちろんそう、というか思い切り入る。その水はドアの内部の下側に3つの孔があって、そこから抜けることになっている。……のだけど、速攻で抜けるっていうわけじゃない。そのため内張りが水や湿気を吸ってフニャフニャになったり湾曲しちゃったりして、インテリアの見栄えを大きく損ねちゃったりすることにもなるわけだ。

それを防ぐため、どうやら新車のときには内張りとドアの間に何かをはさみ込んで水/湿気が内張りに直接的な影響を与えないような対策をして販売していたらしい。そういう痕跡のあるクルマを、何台も見てきたそうだ。でも、そんな部品なんてない。そこで丹羽さんはいろいろ考えた結果、秘密兵器を編み出した。

可児市 家庭用ごみ収拾袋。

ほどほどの厚さでサイズもわずかな加工で使えるくらい。試しに使ってみたらなかなかの効果で、内張りがしっとりすることがなくなったのだそうな。以来、望まれない場合以外は施工することが多いという。もちろん僕も、お願いした。内張りを外すと顔を出す「可児市 家庭用ごみ収拾袋」。何だか楽しいし。

チンクエチェントの湿気対策

その作業が終わったので丹羽さんにチンクエチェントでの水対策・湿気対策のようなことを質問したら、驚くほどていねいにあれこれ教えてくださった。その中で印象的だったのは、まずはフロントウインドウとリアウインドウのそれぞれのウェザーストリップまわり。これがちゃんと機能していればいいのだけど、ゴムの硬化や変形などで隙間ができるとそこに水が入ったり湿気がたまったりするようになって、車体の側にサビが生じてくる。ここの腐食が進むと……ああ、考えただけで恐ろしい。

それにキャンバストップのリア側。ここにも隙間があって、当然ながら水も入るし場合によっては溜まる。イコール、腐りにつながる。ああ、こっちも考えただけで恐ろしい。丹羽さんのところでは、前後ウインドウのウェザーストリップのところは手練れのガラス業者さんとの協同作業で水が入らない構造にする施術をすることができるし、キャンバストップのところに独自のシーリングを施したりもしているという。……いずれそれも施工してもらいに来よう、と思った。僕はすでに、チンクエチェントは動く文化遺産、だと思っている。できるだけいいカタチで未来に残したいじゃないか。

まさかトラブルが発生!

そんなこんなで丹羽さんにも試走してもらい、ステアリングは少々動きの違和感が薄れたが、その原因は特定できず。そして振動の方は丹羽さんが手を尽くしてくださったにも関わらず、依然として特定の速度域に達すると発生する。こちらも原因は特定できず。新品パーツをたくさん使って組んだクルマだから馴染んでないところがあっても不思議はないし、走るのに差し障りはないといえばない。僕と深津さんはもう少し様子を見てみようと結論づけて、丹羽さんのところを辞することにした。丹羽さんの「くれぐれも注意深く走ってくださいね」という言葉が身にしみた。

まぁ……先述のとおり、原因など特定できるはずはなかったのだ。ついでに言うなら、注意深く走ったけど結果は変わらなかったはずなのだ。もちろんそれは今になって言えること。この頃はゴニョン(仮称)に関わったすべての人の頭の中に「……?」があったようなものだった。そして生まれて初めてゴニョン(仮称)を走らせたこの2021年4月9日、僕は生まれて初めてゴニョン(仮称)でのトラブルに見舞われる。

深津さんと一緒にチンクエチェント博物館に戻り、しばらく雑談を楽しんで、暗くなりはじめたあたりで東京に向かうことにした。同じ月の25日に九州トリコローレというイベントが予定されていて、そこには毎回トークのゲストとして呼んでいただいていることもあり、ゴニョン(仮称)をそこで豚骨スープみたいに濃い九州のチンクエチェント乗りたちにお披露目するつもりだった。そんなこともあっての「少し様子を見てみよう」であり、それを東京での日常生活の中でやろうと考えていたのだ。

高速道路もできるだけ走るパイロンにならないように交通量や車線の数を考えてルートを選んだのは、振動がグッと大きくなる速度域には可能な限り入れず、ゆっくり走っていくつもりだったから。ベーシックベーネ・ニワからの帰り道に、クルマの速度計が65km/hを示すときにはiPhoneのナビのGPSで75km/h弱であることが判明していたから、メーター60km/hで走れば高速道路の最低速度にはまったく触れないし、まわりのクルマに迷惑をかけることもない。そう思っていた。

そして東海環状自動車道の豊田松平インターチェンジの少し手前、左車線を左ベタベタにメーター60km/hキープで走っているとき、それは起こった。右側からチンクエチェントを抜いていった大型トレーラーが、小さくて見えなかったのかヘッドランプが行灯並みに暗いから目測を誤ったのか、ゆら~っと車線変更をして箱のテールが鼻先をかすめそうになったのだ。反射的にグッとブレーキを踏ん……えーっ! ペダルがフロアについた!?。

いや、これまでの自動車雑誌編集者/自動車ライター生活で培ってきたトラブル慣れとは恐ろしいもので、僕は反射的にサイドブレーキのレバーを引き上げて減速し、もともと多少の速度差もあったし、もちろん大事にはいたらなかった。いたらなかったのはいいのだけど、どうしよ……? その気になればサイドブレーキだけで東京まで帰ることもできるけど、またクルマをこっちまで運ぶのも大変だしなぁ……。

とりあえず豊田松平インターで一般道に出て、停まってスマホでホテルを検索することにした。在来線で名古屋を目指して新幹線で帰ることができるかどうかギリギリの時間、それにゴニョン(仮称)をその辺に放って帰るわけにもいかないし、そんなのイヤだ。一番近いのは豊田市エリア。……おっ! 1件だけ部屋が空いてるホテルがあった! よしよし。……なぬっ? 何だよここ豊田市でいちばん高いホテルじゃん……。

背に腹は代えられない僕は、仕方なくフツーひとりだったら絶対に泊まらない高級ホテルをポチッと予約して、サイドブレーキのレバーを握りしめながら豊田市の駅前を目指したのだった。

そしてサイドブレーキとひとり手押しを駆使しながら駐車スペースにおさめたのが、今回の最後の写真である。

 ■協力:チンクエチェント博物館

 ■協力:ベーシックベーネ・ニワ

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ミツオカ、創業55周年記念車『M55』の市販モデルを正式発表。ローンチ仕様を100台限定で発売へ
ミツオカ、創業55周年記念車『M55』の市販モデルを正式発表。ローンチ仕様を100台限定で発売へ
AUTOSPORT web
初代NSXに存在した「やりすぎ」モデル! たった14台しか売れなかった「タイプS Zero」のストイックさに脱帽
初代NSXに存在した「やりすぎ」モデル! たった14台しか売れなかった「タイプS Zero」のストイックさに脱帽
WEB CARTOP
一体何が!? シーズン終盤のF1レースディレクター交代劇にドライバーたちも驚き「ちょっと奇妙だよね……」
一体何が!? シーズン終盤のF1レースディレクター交代劇にドライバーたちも驚き「ちょっと奇妙だよね……」
motorsport.com 日本版
VW、新型SUV「ティグアン」を発売 価格は487万1000~653万2000円
VW、新型SUV「ティグアン」を発売 価格は487万1000~653万2000円
日刊自動車新聞
“300馬力”V6搭載! ニッサン爆速「最上級ミニバン」とは? 超豪華内装×専用装備マシマシな“走り屋仕様”の「エルグランド」に熱視線!
“300馬力”V6搭載! ニッサン爆速「最上級ミニバン」とは? 超豪華内装×専用装備マシマシな“走り屋仕様”の「エルグランド」に熱視線!
くるまのニュース
家族のおでかけマンネリ解消へ、日産が新プロジェクト 全国の「奥名所」を発掘
家族のおでかけマンネリ解消へ、日産が新プロジェクト 全国の「奥名所」を発掘
レスポンス
メルセデスAMGから「CLE53カブリオレ」発売!専用のパワフルなルックスと先進・洗練のインテリア
メルセデスAMGから「CLE53カブリオレ」発売!専用のパワフルなルックスと先進・洗練のインテリア
LE VOLANT CARSMEET WEB
平凡な男が突如、何百万人もの夢の中に現れる!?『ドリーム・シナリオ』
平凡な男が突如、何百万人もの夢の中に現れる!?『ドリーム・シナリオ』
バイクのニュース
「悪くはないが、良くもない」勝田貴元、シェイクダウンは入念に走行。改善のカギと戦略は/ラリージャパン
「悪くはないが、良くもない」勝田貴元、シェイクダウンは入念に走行。改善のカギと戦略は/ラリージャパン
AUTOSPORT web
新車が買えないレベルで人気沸騰中のメルセデス・ベンツGクラス! EVが売れない日本でも「G 580 with EQ Technology」ならバカ売れするか?
新車が買えないレベルで人気沸騰中のメルセデス・ベンツGクラス! EVが売れない日本でも「G 580 with EQ Technology」ならバカ売れするか?
THE EV TIMES
軍用ジープが最新モデルで蘇る…ドアなし&オリーブドラブが渋い「ラングラー ウィリス'41」発表
軍用ジープが最新モデルで蘇る…ドアなし&オリーブドラブが渋い「ラングラー ウィリス'41」発表
レスポンス
ロゴスと「ファイナルファンタジーXIV」コラボのアウトドアグッズの予約受付がスタート!
ロゴスと「ファイナルファンタジーXIV」コラボのアウトドアグッズの予約受付がスタート!
バイクブロス
インディカー初体験の角田裕毅、インディ500への挑戦に現状関心ナシも「もう少し歳をとって考えが変われば……」
インディカー初体験の角田裕毅、インディ500への挑戦に現状関心ナシも「もう少し歳をとって考えが変われば……」
motorsport.com 日本版
ベントレーCEOの旧私邸を改装。ベントレー本社近隣の特別な顧客体験スペース「The Mews」を発表
ベントレーCEOの旧私邸を改装。ベントレー本社近隣の特別な顧客体験スペース「The Mews」を発表
LE VOLANT CARSMEET WEB
スズキ「最上級SUV」新発表! トヨタ「ヤリスクロス」サイズの“豪華仕様”! 精悍顔もカッコイイ「グランドビターラ ドミニオンE」印国に登場
スズキ「最上級SUV」新発表! トヨタ「ヤリスクロス」サイズの“豪華仕様”! 精悍顔もカッコイイ「グランドビターラ ドミニオンE」印国に登場
くるまのニュース
アドベンチャースタイルの“軽二輪スクーター”ホンダ「ADV160」に2025年モデル登場! ふたつの新色をプラスした「全3色のカラバリがスポーティ」
アドベンチャースタイルの“軽二輪スクーター”ホンダ「ADV160」に2025年モデル登場! ふたつの新色をプラスした「全3色のカラバリがスポーティ」
VAGUE
「RS」最新モデル日本上陸!! アプリリア「RS457」発売
「RS」最新モデル日本上陸!! アプリリア「RS457」発売
バイクのニュース
「ルノー・セニック E-Techエレクトリック」が「モーター・トレーダー・インダストリー・アワード2024」で「ニューカー・オブ・ザ・イヤー」受賞
「ルノー・セニック E-Techエレクトリック」が「モーター・トレーダー・インダストリー・アワード2024」で「ニューカー・オブ・ザ・イヤー」受賞
LE VOLANT CARSMEET WEB

みんなのコメント

21件
  • ブレーキ効かない車に乗るな、大事に至らなかったからいいだと、まじで自爆で消えてくれと思う、
    ブレーキが動作しないなんてありえない酷すぎる
    人混みに突っ込む可能性もあるんだぞ、
    ありえない、車に乗る資格ない
  • 何ですか?このバカみたいな記事は
    世の中の全ての人がチンクエチェントオーナーのように、『あるよねー』って言うとでも思ってるんですか?

    我々は時に大事な家族を乗せて公道を走っています。
    当然車検に合格し安全に問題の無い車です。

    公道を走る以上には外車の旧車なんて関係ない。
    普通に走って普通に止まってもらわなければ困るんですよ。
    それができないのなら後生大事にガレージに閉じ込めておいてください。
    何を楽しげなエピソードとして載せてるんだか
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

270.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
ティーポの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

270.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村