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一見地味だけれど……“こだわりセダン”の魅力とは? BMW 540i xDrive M Sport試乗記

掲載 更新 5
一見地味だけれど……“こだわりセダン”の魅力とは? BMW 540i xDrive M Sport試乗記

BMWのミドルクラスセダン「5シリーズ」の上級モデル「540i」に今尾直樹が試乗した。

ストレート・シックス搭載モデル

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さる5月27日、現行BMW「5シリーズ」のマイナーチェンジ版が本国で発表となった。日本では2017年2月に発売となった現行5シリーズ、社内コードG30は後期型に移行し、早晩、極東にもやってくる。

その新型について語るのは別の機会に譲るとして、ここでは逝きし日の面影としてG30前期型、後世ミュンヘンの傑作の1台に数えられるであろう540i xDrive M Sportについて筆者の個人的な印象を記しておきたい。

BMW Japanの540i xDrive M Sport(以下長いので540iと省略)の広報車は、じつに贅沢な仕立てだった。“BMW Individual”というBMW独自のオーダーメイド・プログラムに設定のある、より高級な素材を手仕事で仕上げた内装を持っていたからだ。

ドアを開けると、濃い茶色のインテリアが目にも鮮やかに飛び込んできて、その華やかさにクラクラした。小型のロールズ、ベントリー、という感じ。シートはもちろん、ドア内側からセンター・コンソール、さらにダッシュボードの下半分まで、いかにも柔らかそうなレザーで覆われていて、オシャレなことに白いスティッチが施してある。

いいなぁ。

グループ内にロールズ・ロイスがあることで、BMWブランド内にも贅沢についての考え方が浸透しているのではあるまいか。ぜんぜん関係ありません、といわれる可能性もある。ま、そういう印象を筆者が勝手に抱いたということです。

で、「3シリーズ」と「7シリーズ」のあいだを担う5シリーズの日本仕様には、523i、523d、530i、530e、そしてこの540iと、ガソリンからディーゼル、ハイブリッドまで、各種パワー・ユニットが揃っている。かつてはV8がラインナップにあったけれど、それもいまはむかし。頂点に君臨する540iがそのフロント・ボンネットにおさめているのはBMWの伝家の宝刀、ストレート・シックスである。

伝家の宝刀は、2015年から3気筒、4気筒とともに、新世代モジュラー・エンジン・ファミリーとされており、ボア、ストローク、シリンダー・ピッチは気筒数にかかわらず、すべて共通になっている。そうすると、全部同じラインで製造でき、生産コストを下げることができる。

伝家の宝刀は、“40i”という数字と記号で表される。下から確認すると、前輪駆動になった1シリーズには当然、存在しない。後輪駆動のM240i、M340i、440i、540i、そして740iといったモデルが並ぶ。

これら40iは、ただし、モデルに合わせて異なるチューンが施されている。540iは、最高出力340ps/5500rpm、最大トルク450Nm/1380~5200rpm。それがM340i は、同じxDriveなのに、387ps/5000rpmと500Nm/1800~5000rpmに引き上げられている。BMW最強のMの文字がつく分、高性能化されているのだ。

440iのように、326ps/5500rpm、450Nm/1380~5000rpmとデチューンされているケースもある。440iは純粋な後輪駆動だから、ということなのだろう。

そんななかでも、540i xDrive M Sportは、中型セダンという、日本ではあまり陽の当たらないカテゴリーながら、3シリーズよりも大きくて、7シリーズよりも小さいという位置づけから当たり前のように生まれた、広々とした室内空間と大きすぎないボディのバランスがまずもってたいへん好ましいと筆者は思う。

シルキー・スムーズな乗り心地

その好ましいバランスに、直6+4WDを組み合わせたこのアッパーミドル・セダンにあって、筆者が心底驚いたのが、乗り心地のスムーズなことであった。

M Sportなので、バンパーの冷却用ダクトが大きかったり、空力的な付加物がついていたりしていて、見かけがスポーティなだけではない。スタンダードより短いコイル・スプリングとハードにセッティングされたダンパー、スタビライザーが組み合わされたMスポーツ・サスペンションを装備しているはずなのだ。

なのに、このしなやかさはどこからきているのか? 山道では深々とロールする。その一方、荒れた路面で、フワンフワンあおられるということもなく収束する。「スポーツ」モードに切り替えても、さほど硬くはならない。おまけに試乗車はBMW Individualの20インチ・ホイールを履いている。

私はキツネにつままれたような気分を抱いた。タイヤの銘柄はピレリPゼロで、もちろんランフラットである。サイズは前245/35、後ろは275/30というペッタンコさかげん。

う~む。G30型5シリーズ、おそるべし。思い当たるのは、M5は別格として、540iのみが備えるダイナミック・ダンピング・コントロールなる電子制御サスペンションである。このデバイスの仕事ぶりがハンパない、としか申しあげようがない。

BMWはスポーツ・セダン。スポーツ・セダンは硬い。硬いはBMW。BMWはスポーツ・セダン……という思い込みは、540iには当てはまらない。シルキー・スムーズな伝家の宝刀ストレート・シックスのごとくの、シルキー・スムーズな乗り心地を備えている。

ドライ路面だったこともあって、xDriveがいかほどの効能をもっているのかは定かではない。わかるのは4WDなのに曲がりやすいということ。DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)と連動して、オーバーステア、アンダーステアの兆候を察知すると、電子制御式多板クラッチを制御し、前後の駆動力を瞬時に再配分するというxDriveのシステムが、2975mmという長大なホイールベースを持つこのクルマをたやすく曲げることにひと肌脱いでいる。

540iに標準のインテグレイテッド・アクティブ・ステアリング、いわゆる4輪操舵システムも大活躍しているはずだけれど、それによる不自然さは微塵もない。と、驚くのは21世紀のこんにち、時代錯誤であるにしても、知らずにこれをドライブして4輪操舵だと見抜くことができるかどうか、筆者なんぞははなはだ疑わしい。

車重1810kgと、このクラスの4WDセダンとしては軽量に仕上がっていることも美点のひとつだ。ちなみに、ライバルのメルセデス・ベンツ「E450 4MATIC」は1880kgだから、それより70kgも軽い。

現行BMWのなかでも最良の1台

というわけで、BMW540i xDrive M Sportは極東の日出る国ではあまり陽が当たらなかったかもしれないけれど、贅沢で快適でエレガントなスポーティヴネスを味わえたエグゼクティヴ・サルーンとして、筆者の記憶に残る。

価格は1104万円。メルセデス・ベンツE450 4MATIC エクスクルーシブは1094万円。Audi A6 55 TFSI quattro S lineは1035万円。試乗車はオプションのBMW Individualのあれやこれやがついているので、これらよりもさらに300万円ほどお高い。

一見地味だけれど、じつは派手だともいえる、こだわりのセダンである。ドライビングから得られる気持ちよさはフロント・エンジン・フェラーリにもヒケをとらない。現行BMWのなかでも最良の1台だと筆者は思う。現行モデルから10台選ぶ、というような企画があれば、名前をあげたい。

その新型が出た、ということはよい買い物をするチャンスである。だからといって、もちろん筆者には買えん。というような呟きは蛇足であって、540i xDrive M Sportの出来のよさとは一片の関係もない。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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みんなのコメント

5件
  • BMWも大衆化が進んでるな。
    ここまでグレードあると、もう何が推しなのかわからん。
    Eクラスは200、5シリーズは523ℹ︎と
    売れてるのは入門グレードばかりだし。
    多様化に対応させるとベースの完成度が下がるから
    高級車メーカーはある程度グレード絞って開発して欲しいんだけど。
  • この試乗車で、下手すりゃ乗り出し1,350万円くらい?
    さすがにバカらしいでしょ。

    4躯のiドライブは北米降雪地帯向けで別に要らんけど、直6自体は「5シリなら最低限当然」なラインで、これがこんな価格で「君臨」って違和感しかねーな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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