SUVやミニバンが大人気の今日この頃。たしかにファミリーユースにはピッタリだし、多人数乗車もできるし、ハイブリッドの設定で燃費はいいし……。でもそんなSUVたちにはない魅力を持ったクルマを忘れていないだろうか? そう、セダンだ。多くのオトナたちは初めて乗ったクルマの教習車だってセダンだったはず。セダンはクルマの基本形!! ということで、今回は300万円台で購入できる、国産セダン3選を選びました。
文:渡辺陽一郎/写真:小宮岩男、池之平昌信、藤井元輔
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■セダンに乗るべき理由とは?
最近はSUVが人気を高めている。ボディの上半分はワゴンや5ドアハッチバックに準じた形状だから、居住性や積載性が優れている。下半分は大径タイヤなどで力強く、実用性とカッコ良さの両立で注目された。しかしクルマ好きにとってはセダンも魅力的だ。
全高が1500mm以下のボディはスマートで重心も低い。居住空間の後部に独立したトランクスペースが備わり、その間に隔壁があるからボディ剛性を高めやすい。低重心で高剛性のボディは、走行安定性と乗り心地を向上させる。そうなれば運転の楽しさも満喫できる。
しかもセダンはミニバンやコンパクトカーと違って価格競争が穏やかだから、買い得感が薄れる代わりに、コストダウンの影響も受けにくい。内外装から運転感覚まで、相応の質が保たれる。オトク感よりも満足度を重視するユーザーは、セダンの価値を改めて見直すと良いだろう。
そこで価格が300万円台の国産セダンを選んだ。かなり高めの金額だが、メルセデスベンツ/BMW/アウディの輸入セダンとなれば、大半のグレードが500万円以上だ。従って300万円台の国産セダンは、プレミアムブランドが中心の輸入セダンに比べると200万円安く、なおかつセダンの価値とされる安全性と快適性が優れ、運転の楽しさも味わえる。
ドイツ勢はひと声500万円が相場。これならば国産300万円台でも安く感じる!?
そこで選ぶ価値の高い300万円台の国産セダンを取り上げたい。いずれの車種も2017年にフルモデルチェンジや改良を受け、歩行者を検知できる緊急自動ブレーキを備える。ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知する安全機能も設定している。これらの安全機能を輸入車ですべて揃えるとなるとかなり大変だ。それでは3選を見ていきたい。
■アメリカ人だけが楽しむのはもったいない!! カムリG(349万9200円)
現行カムリは2017年に発売され、セダンでは設計が新しい。プラットフォームはプリウスと基本的に共通で、TNGAの考え方に基づいて開発された。ハイブリッド専用車で、直列4気筒の2.5Lエンジンも新開発だ。プラットフォームと併せて走りの機能を全面的に刷新した。
従来のカムリに比べると、峠道などを走行中にハンドルを切り込んだ時の反応が、自然になっている。従来型は走行安定性を確保するために反応が少し鈍く、Lサイズセダンにありがちな曲がりにくさを感じた。スポーティに走れば旋回軌跡を拡大させやすかった。しかし現行型は鈍さを感じさせず向きが変わる。しかも従来型と同等かそれ以上に後輪の接地性が高いから、直進時を含めて安心できる。
TNGA採用で乗り味もいいカムリ。アメリカらしいスタイリングも若返りに貢献している
これはボディの各部が入念に造り込まれ、足まわりが柔軟に伸縮するためだ。従って走行安定性と併せて乗り心地も向上した。市街地では硬めに感じる場面もあるが、粗さはなく快適だ。ハイブリッドシステムはモーターの駆動力に余裕があり、エンジンの排気量は2.5Lだが、登坂路でアクセルペダルを踏み増した時の反応は3Lクラスと感じさせた。売れ筋になるGのJC08モード燃費は28.4km/Lだ。
全長が4885mm、全幅が1840mmのボディはクラウンよりも大柄で、最小回転半径も5.7m(18インチタイヤを装着したGレザーパッケージは5.9m)に達する。混雑した市街地では運転がしにくく、北米などの海外向けに開発された商品だが、経済性/居住性/快適性は高い。3~4名で長距離を頻繁に移動する用途に適する。
■国産ディーゼルセダンと言えばこれ!! アテンザセダンXDプロアクティブ(328万8600円/6AT)
今のマツダは「スカイアクティブ技術」と「魂動デザイン」により、走りが上質で外観のスポーティなクルマ造りを特徴とする。この代表がアテンザセダンだ。注目されるのは直列4気筒2.2Lのクリーンディーゼルターボだろう。最大トルクは42.8kgm(2000回転)だから、発進直後から4Lのガソリンエンジンに匹敵する高い駆動力を発揮する。
FFセダンながら圧倒的なトルクでグイグイと前に進む。高速道路のクルージングもいい
ディーゼルだから高回転域の吹き上がりは鈍いが、実用域で余裕があるから運転しやすい。高回転指向のガソリンエンジンとは違う楽しさがある。操舵に対する反応は比較的正確で、乗り心地は硬めながら重厚感が伴う。ディーゼルとあってJC08モード燃費は19.6km/Lと優れ、軽油価格の安さも考えると、燃料代は1.3Lエンジンを積んだコンパクトカーと同等だ。
ボディサイズは全長が4865mm、全幅が1840mmだから、カムリと同じく大柄になる。サイドウインドーの下端が高めで、側方と後方の視界は良くない。最小回転半径は5.6mだが、取りまわし性に注意したい。長距離移動を安全かつ低燃費で楽しめるセダンに位置づけられる。
■スポーツを忘れられないオトナにはこちら WRX S4 2.0GT-Sアイサイト(373万6800円)
WRXは日本で最も性能の高いスポーツセダンだ。入念に造り込まれたプラットフォームを含めてボディ剛性が高く、4WDとの相乗効果で安定性が優れている。操舵角に忠実に曲がって旋回軌跡を拡大させにくく、なおかつ危険を回避する時は後輪が確実に踏ん張る。
乗り心地は硬めだが突き上げ感は抑えられ、タイヤが路面をつかむ感覚が伝わってくる。エンジンは水平対向4気筒2Lのターボで、低回転域から4Lエンジンに匹敵する駆動力を発揮する。エンジン回転の上昇感覚は滑らかだ。
WRX STIにはないアイサイトも装備しており安全性もピカイチ
そして全長が4595mm、全幅は1795mmだから、ミドルサイズに収まる。最小回転半径は2.0GTアイサイトが5.5m、2.0GT-Sアイサイトが5.6mだから少し大回りだが、混雑した街中でも持て余さない。その一方で後席にも相応の空間があり、4名の大人が乗車しても窮屈には感じない。高性能なスポーツセダンなのに、後席の快適性や日常的な使い勝手にも配慮されている。
【番外編】お金に糸目をつけないリッチガイにおすすめ
「価格はいくらでも良い」となれば日本車ならレクサスLSを思い浮かべるが、現行型は全長が5235mm、全幅は1900mmと大柄になった。注目されるメカニズムとして新開発されたV型6気筒3.5Lツインターボがあるが、V型8気筒風の演出によるやや粗野な回転感覚がわざとらしい。しかもJC08モード燃費は10.2km/Lにとどまる。
LSはフラッグシップとしての評価はいいものの、たしかに運転してどうこうというタイプではないか?
そこでレクサスGS Fを選んだ。LSよりもひとまわり小さな(といっても全長は4915mmもあるが)レクサスGSに、V型8気筒5Lエンジンを搭載する。V8風に演出されたV6ターボを選ぶなら、正真正銘のV8にしたい。動力性能の数値はLSのV6ターボに負けるが、自然な吹き上がりが気分の良い走りをもたらす。JC08モード燃費もGS・Fは8.2km/Lで負けるが、エンジンとしての魅力は上まわる。
このように感じる理由は、現行レクサスLSのインパクトがいろいろな意味で弱いからだ。安全装備は注目されるが、走りの魅力に欠ける。ボディの拡大も、外観の引き締まり感を薄れさせてしまった。LSがフルモデルチェンジを受けて、目立たなかったレクサスGS Fが、妙に魅力的になってきた。
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