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日本の自動運転を進化させたSIP自動運転の舞台裏

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日本の自動運転を進化させたSIP自動運転の舞台裏

車の最新技術 [2023.03.22 UP]


日本の自動運転を進化させたSIP自動運転の舞台裏
文●石井昌道 写真●NEDO

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 このコラムで何度か紹介させていただき、自分が構成員を務めたSIP自動運転。SIPは戦略的イノベーション創造プログラムのことで、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となり、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントによって科学技術イノベーション実現のために立ち上げた国家プロジェクト。

 第一期は2014年度から、第二期は2018年度から始まり、それぞれ5年間の期間限定で、自動運転に関しては第一期と第二期を通して行われ、少し重なる期間があったため通算では9年間になる。2022年度で終了、つまり2023年3月31日で終了するのだが、当コラムを記している3月19日時点ですべてのプログラムが終了した。


最終成果発表会「SIP自動運転の成果とその先へ」の模様
 最後の大きな催しは3月7日、3月8日に東京・秋葉原の UDXで開催した最終成果発表会「SIP自動運転の成果とその先へ」だった。これまで取り組んできた研究・開発や社会実装の成果をわかりやすく展示するとともにシンポジウムも行った。

 自分は2019年夏から最後までの約3年半に参加したのだが、貴重な経験をさせていただいた。参加当初は、SIP自動運転の特徴である府省連携、産学官連携が見事に機能していて、その優れた組織運営に、日本の自動運転の将来は明るいと感じたもので、実際に11から12の課題があるSIPのなかでもSIP自動運転は比較的に成功した例だと言われている。

 ところが、自分がモデレーターを務めたシンポジウム第二部で、SIP自動運転プログラムディレクターの葛巻清吾氏が語った成功した理由や苦労話を聞くにつれ、最初から上手くいっていたわけでは決してなかったことを知った。

 行政の縦割りによる弊害は、さまざまな分野で言われることで、自動車産業でも許認可等が遅れてしまうなど良くない例が散見されてきた。

 そこでSIPは府省連携で、縦割りに横串を通すという試みをしたのだが、当初はそれも上手くいっているわけではなかったという。また、取り組む施策テーマにかんしても一体感のあるプロジェクトとはいえず、悩みながら進んでいたという。

 SIP自動運転・第一期のプログラムディレクターは、トヨタ・クラウンのチーフエンジニアを歴任し、ITS Japanの会長でもあった渡邉浩之氏で、トヨタで部下であった葛巻氏は第一期から声をかけられて参加していた。渡邉氏は2016年に病に倒れ、2015年から葛巻氏がプログラム・ディレクター代理として指揮を執ることになったのだが、プロジェクトを成功させるために試作テーマの練り直し、自動車メーカーがもっと積極的に取り組んでくれるにはどうすればいいかを思慮していたそうだ。

 1つの転機となったのは2015年に、当時の首相であった安倍晋三氏へSIP自動運転のプレゼンテーションを行ったことだった。安部首相は、SIPの上位組織である総合科学技術・イノベーション会議の議長でもあったのだが、プレゼンテーションを受けたときに「2017年までに、制度やインフラを整備し、無人自動走行や高速道路での自動運転に向けた実証を可能にしたいと考えております」と発言。この発言を受けて、各府省が本気で動き出すことになり、横串を通す効果が出始めた。また、施策テーマは思い切って改廃し重点5課題に設定。これによってプロジェクトの一体感が得られることになった。

 2016年には、すでにSIP自動運転で研究・開発が進んでいたダイナミックマップ(高精度3次元地図データ)を自動車メーカー等に無償で提供して、実証実験をしてもらうことを実施。多くの自動車メーカーがダイナミックマップを試すことで、様々な評価が得られるとともに、自動車メーカー同士でオープンに議論する場も生まれ、民間のほうも連携が強化された。

 これを発展させたのが2017年度から行った大規模実証実験で、国内外の自動車メーカーやサプライヤー、大学など21機関が参加。東京臨海地域周辺でのダイナミックマップや信号情報等の提供、湾岸線での合流支援情報などによって、実証実験が繰り返された。

 ダイナミックマップは研究・開発の段階から社会実装へとフェーズが移動していき、2017年には株式会社を設立して事業化へ。研究・開発だけではなく、こういった出口戦略をきちんと考えて実行していくこともSIP自動運転の特徴であり、ダイナミックマップは1つの成功例と言える。

 この数年の変化で、府省連携と産官学連携が本格化し、プロジェクトとしてもうまく回り始めた。2019年に自分が参加したときは、いい形になっていたというわけだ。さらに、この頃はSIP自動運転がもう一つ重要課題としてあげていた「社会受容性の醸成」に力を入れようと動いていた。


最終成果発表会「SIP自動運転の成果とその先へ」
 広く一般の方にも自動運転のことを正しく知っていただき、普及に備えていこうということで、広報活動でもある。モータージャーナリストの自分が参加したのも、これを強化する一環でもあったわけだ。その後、メディア向けのSIP自動運転試乗会や成果発表会、市民ダイアログ、自動運転LIVEニュースなどさまざまな広報活動をしてきたことは、当コラムでも紹介した通りだ。

 SIP自動運転の9年間の歩みは、「SIP自動運転の成果とその先へ!」というムック本にまとめられた。SIP caféのホームページではPDF版を公開しているので、興味のある方はぜひご覧になっていただきたい。

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みんなのコメント

2件
  • オリンピックで人跳ねちゃったトヨタ製自動運転だよね
  • テスラみたいに公道でデータが取れないのに勝てるわけないよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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