この記事をまとめると
■レクサスが水素エンジンを搭載した「ROVコンセプト」を発表した
【試乗】未来のレクサスを先取り試乗! 超豪華ミニバンLMからコンパクトカーのLBXまで一気乗りインプレ
■「ROVコンセプト」はヤマハYXZ1000Rというバギーをベースにレクサスのアレンジが随所に施されている
■かなりハイスピードで安定して走れることから「レクサスらしい」という評価を受けている
レクサスが提供する水素オフローダー
9月に開催された報道関係者向けイベント「レクサスショーケース」において、自然との共生を目指し、環境への配慮とエンジン車ならではの走りの楽しさを両立する、水素エンジンを搭載した「ROVコンセプト」のお客さま向け体験プログラムについての発表があった。
同プログラムの目的は大きくふたつある。ひとつはいろいろなユーザーに乗ってもらい、ドライビングのデータを収集してエンジンなどの開発にフィードバックするため。もうひとつは、レクサスでは多様なユーザーのライフスタイルに寄り添う商品を提供したいと考えており、コロナ禍以降はとくにアウトドアを楽しみたいというユーザーが増えたことを受けて、普通の車両では入れないような場所まで自然に深く入り込める、より本格的なモビリティを実現するため。さらには、エンジンの鼓動や音を味わえるようにすることで、クルマを操る楽しさをお客様に届けたいという思いを実現するためだという。
同プログラムでは、富士スピードウェイの一角に設定されたオフロードコースを走行する。もちろん水素を補充するためのインフラも整備され、年内にはスタートの予定で、希望者はそこに行けば誰でもROVコンセプトに乗って楽しめるようになるわけだ。
このプロジェクトには、水素エンジンの技術開発とカーボンニュートラルに対する挑戦という志をともにするいくつかのパートナー企業がかかわっている。市販車の世界ではまだ導入されていないが、将来的な採用を見据えて先行開発したような部品も搭載されており、フィードバックを得ながらともに技術開発を進めていくという。
車体はヤマハが北米で販売している「YXZ1000R」というバギーをベースに、レクサスの一員としてのアレンジが随所に施されている。足まわりはベース車の構造を踏襲しながらも、ダンパーについてはカヤバの協力で開発した専用品が装着されている。タイヤはミシュラン製のエアレスタイヤを履く。
入力時のいなし方や悪路走行時のサスペンションの伸び方などの要素をレクサスらしく統一すべく、LXやGXなど既存のオフロードモデルの開発ドライバーの監修で、同じ調理師により味付けして開発したという。
オフロードでもレクサスらしさを忘れない走り
走りの仕上がりは上々で、かなり厳しいコースでもハイスピードで安定して走れることから、ドライブした多くの人から「レクサスらしい」という評価を得ることができているという。筆者もくだんの富士スピードウェイのコースをLXで走った経験があるが、驚くほど快適で乗りやすいことが印象的だった。そのフィーリングがROVコンセプトにも受け継がれているとみてよさそうだ。
そのほかのいくつかの部分もレクサスとして相応しく専用に仕立てられている。たとえば室内では、操作系に上質さを与えるため、ステアリングホイールやサイドブレーキのグリップには市販車として最高級の皮革が使われており、シフトノブもアルミの削り出しとされている。
シートには、シート自体に減衰を持たせたサスペンションバケットシートを採用して乗り心地の向上を図っているほか、オフロード走行時に左足ブレーキしやすいよう、Fスポーツ用のペダルを装着するとともにオフセットを最適化したという。
ボディパネルについても、通常の塗装では約9kgのCO2が発生するところを、塗料を不要とするとともに、補修が必要となった際でも貼り替えで対応できるよう、ラッピングとした。また、誰が見てもひとめでわかるように、レクサスのシグネーチャーライトが装着されている。
「新たにオフロードという世界に踏み出してみると、やはりそこでしか得られないものがあります。たとえば低速・高負荷・低回転のような、一般のお客様が市場でお使いになる条件のなかでもより厳しい条件がオフロードではごく普通にあります。そうしたところを勉強させていただきながら、よりよいクルマが作れるよう技術開発を進めてまいります」という旨を、製品企画の山本晴之氏は述べていた。
これまであまりアウトドアのイメージのなかったレクサスが、このところおもむろに力を入れはじめたように感じていたのだが、じつはもともとユーザーからの求める声は少なからずあったのに、レクサスとしてあまりそのニーズに応えることができていなかったと前出の山本氏はいう。そこで、いちはやくお客様のニーズを汲み取って、望まれるものをできるだけよい形で提供し、いっしょに幸せを作っていきたいとの思いから、現在では大いに力を注いでいるところだ。
海外勢でもオフロードに専門的に携わっているブランドを除いて、ここまで力を入れているプレミアムブランドというのは心当たりがない。この新しい取り組みがもたらす成果に大いに期待したい。
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