■日本とはなぜ違う? アメリカのヤリスがマツダのOEMな訳
日本の自動車メーカーは、世界を相手にビジネスをおこなっています。
350馬力の「マツダ3」発表! 見るからに早そうなモンスターマシンとは
「いいクルマは国を選ばない」といいますが、実際は国によってクルマに対する要求や使用する道路環境、法規などが異なるため、仕向地に合わせた最適化を実施。なかには同じネーミングながら中身は別物というモデルも存在します。
その代表をいえば、トヨタ「カローラ」でした。9代目までは基本はグローバルでひとつの仕様でしたが、10代目では海外向けと日本向けが別のモデルに。さらに11代目ではより細分化され、大きく分けると北米向け、欧州向け、日本向けのカローラが存在していました。
「ユーザーニーズに合わせて最適な物を提供する」という部分はトヨタらしいものの、開発コストや生産効率の悪さ、さらにはマンパワーの分散化でクルマの完成度の低さなど、ネガティブな要素が多かったと聞きます。そのような反省から、12代目となる現行モデルはグローバルで1スペックに戻ったとされています。
その一方で、フルモデルチェンジに合わせて、従来よりも細分化されたモデルがあります。それは「ヤリス」です。
先代モデルは、日本では「ヴィッツ」、ほかの仕向地ではヤリスとして販売されており、ドア枚数の差はありましたが、基本的には日本向け/北米向け/欧州向けと、アジア専用車「ヴィオス」をベースにするアジア向けのボディサイズがひと回り大きい仕様のふたつに分けられていました。
しかし、現行モデルは北米向けヤリスが、日本向け/欧州向けとは異なる別のモデルになりました。
じつは、北米向けヤリスは、トヨタ独自で開発したモデルではありません。大きく口を開けたようグリルやヘッドライトはトヨタっぽさを少々感じるのですが、そのスタイルを見ると一目瞭然で、マツダのコンパクトカー「マツダ2」がベースとなっているのです。
北米向けヤリスは、日本向け/欧州向けヤリスが発表される半年前に開催されたニューヨークショー2019で世界初公開されましたが、その場にいた筆者(山本シンヤ)も思わず「えっ、何で?」と驚いたのを覚えています。
日本向け/欧州向けのヤリスは、パワートレイン・プラットフォームをともに全面刷新し、余裕の動力性能と圧倒的な燃費性能を高次元でバランス、欧州でも通用する骨太なフットワークを備えたモデルとして、日本でも高い評価を得ていますが、なぜそれを北米に導入せず、わざわざ別モデルを用意したのでしょうか。
その理由のひとつは、トヨタとマツダの業務提携が関係しているといえます。北米向けのマツダ2はメキシコ工場で生産がおこなわれていますが、稼働率を上げたいマツダと、各地域の生産効率の最適化をおこないたいトヨタとの考えが一致したのでしょう。
ちなみにこれまで先代の北米向けは欧州向けを生産するフランス工場でおこなわれてアメリカに輸出されていましたが、その輸送コストを考えるとメキシコ工場のほうが有利なのは明らかでしょう。
■現時点でGRヤリス導入予定はないものの…アメリカ人は欲してる!?
もうひとつは、北米のユーザーニーズです。日本や欧州ではヤリスの属するBセグメントのコンパクトハッチバックは主力カテゴリとなっていますが、現在も大きなボディサイズのモデルが主力の北米では、コンパクトハッチバックは日本の軽自動車以下のサイズのアシ車というイメージです。
つまり、求められるのは“安さ”であり、日本/欧州向けと北米向けを一緒くたに企画すると、新型ヤリスが目指すコンセプトにブレが生じてしまうと考えたのでしょう。つまり、積極的な「選択と集中」をおこなったということです。
日本向けヤリスの発表会でトヨタは、先進国と新興国のニーズの違いに応えるために、先進国向けのコンパクトカーはトヨタ自身が開発、新興国向けのコンパクトカーはダイハツと協力して開発をおこなう方針を明らかにしています。恐らく、今後登場の予定のアジア向け次期ヤリスはダイハツとの共同開発になるかもしれません。
ただ、先進国ではあるものの小さいクルマが主力ではない北米はどちらにも属さないという微妙な立場から、北米向けヤリスはマツダからのOEM供給という手段を選んだ「地域限定商品」なのです。
その一方でトヨタの北米部門は、2020年の頭にSNSで「GRヤリス」の画像と共に「北米市場には別のホットハッチが必要でしょうか? ご意見を聞かせてください!」と呼びかけています。
現時点で、GRヤリスは北米導入の予定はありません。北米のラブコールを受けて、GRヤリスが導入されることになるのか、気になる所です。
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オリジナルサンバーが…っていう人もいるけれど、大多数の人は安ければいい、乗れればいいだからね