スポーティ・フォーマルな低いボディ
今回ご紹介するラゴンダV12は、1939年製。コーチビルダーのフリーストーン&ウェッブ社による、スポーツサルーン・ボディをまとう。フランク・フィーリー氏がデザインしたラゴンダのボディは極めて美しく、外部コーチビルダーによる例は少ない。
【画像】ブランド最高傑作 ラゴンダV12 V12ラピードとLG45 同年代のクラシックも 全128枚
FXB 119のナンバーを取得した初代オーナーは、英国北部のグラスゴーに住むマリオン・マシソン氏という女性。レーシングドライバー、タソ・マシソン氏の兄弟に当たる。
1947年に実業家のエドワード・ベーレンス氏が2代目オーナーになり、1955年に売却された。その後、アダムス氏という人物が購入し長期保管。1990年代に入りレストアを受け、2011年にメルセデス・ベンツ・ワールドというイベントへ姿を見せている。
近年にも、ラゴンダを得意とする専門ショップのビショップグレイ社とアルパイン・イーグル社によって丁寧な仕事が施され、素晴らしい状態を保っている。走行距離は、9万2400kmだという。
現在このクルマを取り扱うクラシックカー・ディーラー、ヴィンテージ&プレステージ社の代表を務めるリチャード・ビッダルフ氏は、「好きな場所へ運転できます。高速道路も問題ありません。ブレーキには注意が必要ですが」。と話す。
フリーストーン&ウェッブ社による低いプロポーションのボディは、「スポーティ・フォーマル」と古くから表現されてきたが、その通り。戦後のデイムラーにも雰囲気が似ている。
スペアタイヤは右側のみ。反対側には内臓の油圧ジャッキと整備道具、点検用ライトが納まっている。
軽くサウンドを放ちシルキーに回るV12
1930年代後半では、リアヒンジのスーイサイド・ドアは一般的だった。センタートンネルから、シフトレバーが伸びている。当時は珍しくなかったドア側ではないから、ズボンをレバーに引っ掛ける心配はない。
ドアは列車の1等客室のように、しっかりと閉まる。艷やかなブラックに染められたレザーシートのクッションが柔らかく、居心地が良い。ヘッドライナーはウエスト・オブ・イングランド社製のクロス張りだ。
サイドウインドウのワインダーも滑らかに回る。ドアロックや三角窓の金物が可愛い。リアガラスは小さく、死角は大きいもののプライバシーは守られる。
フロントシート側の足元には、アールデコ調のヒーターが付いている。外気を沢山入れたい場合は、上ヒンジのフロントガラスを浮かすことができる。左右の座席位置が近い。
ダッシュボード両端には、ロック付きのグローブボックス。クロームメッキで縁取られたスピードメーターとタコメーターが、中央寄りに並んでいる。ステアリングホイール・ボスから、サスペンションとスロットルの調整レバーが伸びる。
高音を響かせるスターターを回し、WO.ベントレー氏が手掛けたV型12気筒を目覚めさせる。とてもシームレスに、ラゴンダV12が発進した。
エンジンは、軽くサウンドを放ちながら、シルキーという表現がピッタリのように回る。完全に温まるまで、スロットル・レバーをオープンにずらす。
戦前のサルーンとは思いにくい走り
自社製のG80型4速MTは、1速より上に回転タイミングを合わせるシンクロメッシュが備わり、変速しやすい。シフトレバーは時々引っかかるものの、ギアノイズは静かだ。
1938年のAUTOCARでは、160km/hでの走行テストも実施されていた。当時の編集者は、ラゴンダV12をとても気に入ったようだ。
発進時以外、1速は必要ない。2速で殆どの加速をまかなえる。スピードが充分に乗ったら、4速のトップギアを選ぶ。適正に変速をすれば、戦後のジャガーMk VIIのような加速力を引き出せる。戦前のサルーンとは思いにくい。
少しクルマに慣れてくると、乗り心地とコーナリングにも感心する。幅の細い18インチタイヤはワダチに沿おうとするものの、操縦性は1950年代のクルマ並み。ステアリングのレシオがスローだが、全体としては扱いやすい。
その気になれば、リアタイヤをスライドさせるだけのパワーもある。巨大な4スポーク・ステアリングホイールの感触はダイレクトで、姿勢を立て直すことも難しくない。
ペダルの距離が近く、クラッチとブレーキを一緒に踏んでしまう。クラッチペダルは重すぎず、つなぎやすい。だが、ツイン・マスターシリンダー付きの大きなドラムブレーキは、効きが弱い。ビッダルフが話したとおりだ。
直線なら予想通りには止まるものの、ペダルのストロークが長く、レスポンスも安心感が乏しい。壮大なV型12気筒エンジンが収まるボンネット越しの視界が素晴らしいだけに、ブレーキが残念でならない。
WO.ベントレーとラゴンダの最高傑作
エンジンは4500rpm以上までスムーズに回り、85才のクルマとは信じられない勢いで一般道を突き進む。1930年代に、多くの人を驚かせたことは想像に難くない。ラゴンダが、現代までクラシックとして価値を高めてきた理由も理解できる。
技術者が理想を追求しすぎると、成功ではない結果に至ることもある。ラゴンダV12の製造台数は189台に留まった。第二次大戦の勃発も影響していたとはいえ、車両価格や構造の複雑さが、ユーザーを遠のけたことは間違いないだろう。
ラゴンダV12は1940年まで製造が続き、主に北米市場へ輸出された。1939年のニューヨーク・モーターショーでお披露目された時は、ラゴンダV12 ラピードは展示車両で最も高価な1台だった。185km/hという最高速度は、最速でもあったはず。
その後、ラゴンダのV型12気筒エンジンは第二次大戦でも用いられた。爆弾発射の動力源として、海軍で100基が稼働したという。
戦前に作られたラゴンダV12は、WO.ベントレー氏の最高傑作の1台と評して過言ではないだろう。ラゴンダ社の量産モデルとしても、最高の1台だった。
長年、運転したい夢のリストに名を連ねていた、ラゴンダV12。その体験は、期待を上回るものだった。クラシックカーの世界では、このクルマに16万5000ポンド(約2755万円)の価格が付いているが、実際はそれ以上価値があると思う。これもまた珍しい。
協力:ヴィンテージ&プレステージ社
ラゴンダV12(1938~1940年/英国仕様)のスペック
英国価格:1200ポンド(1938年時)/16万5000ポンド(約2755万円)以下(現在)
製造台数:189台
全長:4877mm
全幅:1880mm
全高:1600mm
最高速度:165km/h
0-97km/h加速:12.9秒
燃費:3.9-4.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:1981kg
パワートレイン:V型12気筒4480cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:182ps/5500rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル
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